田渕竜也

シネマフィリアvol.4 ロスト・バケーション

サメ映画ということ

サメ映画というとB級パニック映画を思い浮かべる。代表作といえばスティーブン・スピルバーグ監督の『JAWS』、なんか序盤にサミュエル・L・ジャクソンがサメに食われ、LLcoolJがコミカルなコック役として活躍する『ディープ・ブルー』などがあるがその他はB級映画もしくは映像の出るフリスビーぐらいのクソ映画だったりする。しかし『シャークネード』や『シャークトパス』以降、近年ではこのサメ映画が注目されている。
『ロスト・バケーション』はサメ映画ではあるが、通常のサメ映画と違うところはいくつかある。主人公のナンシーの亡き母が教えてくれたビーチでサーフィンをしていたヒロインがサメに噛み付かれる。血だらけになった脚でなんとか岩の上へ上がり助かりはしたが、浜辺まで200m。そこから誰も気づいてもらえない孤独感、さらに、満潮で岩が水没するというタイムリミットもある。さらに目の前で次々と人が食べられて行く。この精神的に余裕のない段々と時間のタイムリミットと共に恐怖が近づいてくるのは、これまでのサメ映画にはなかった。

これは脱出型スリラーゲーム映画だ

それから主人公のナンシーが医大生という設定を生かし、大けがをした脚を半月状のピアスを針にして、ネックレスのチェーンを糸代わりに傷口を縫ったり、ウェットスーツの袖を切り裂いていて、壊死し始めている脚を圧迫したり、その場にあるアイテムをサバイバル道具として活用していくアイディアもこれまでになかった。この手元にある道具を用いて巨大サメのいる危険な海から脱出する術を探るところはスリリングなフリーゲームの『青鬼』みたいな映画になっている。実にホラー系のゲーム的である。
サメの造形も巨大とはいってもクソ映画みたいなバカな大きさではなく、リアルに恐怖を覚えるサイズ感で、サメをドーンと撮るのではなく水面の影とサメの特徴である背びれを含めてチラ見せでそこにある怖さを見せている。サメというよりかはサイコスリラー映画のシリアルキラーみたいな感であった。それからSNSの描写もよかった。どこへいってもスマホを片手にインスタグラムとかをやるのがすごく現代的で面白い。

全体的なまとめ

ただ、ストーリーのツッコミどころは多々ある。サメに食いちぎられたおっさんの死体があるのに大丈夫とサーフィンをやり出しサメのえさになる若者やクジラの死体があるのにそっちに行かず、人に襲いかかったり、最後のシーンで元気よくサーフィンをやってる主人公ナンシーだったりと色々とあるが、傷ついて体温が奪われ血色が悪くなってもナンシーの諦めない『生』への執着と美しいビーチと海に巨大なサメの影という恐怖が堪能できる。

サメと金髪

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