田渕竜也

シネマフィリアvol.6 ポンコツクソ映画特集 『不安の種』

漫画原作の映画ってなんだかなぁ

漫画原作の映画と聞いて何を思いましたか?アイドル、つまらない、クソ映画、学芸会と散々たるものしか浮かんでこない。
漫画、アニメ、ライトノベル原作が洋邦問わず映画化されていく昨今の映画界。いまではそうやってすっかりと漫画、アニメ、ライトノベル原作の映画はクソという刻印を押され、漫画、アニメ、ライトノベル原作ファンから嫌われ、映画ファンからも嫌われただのジャニーズなど芸能人のファンムービー化してきている。
今回の「不安の種」は週間少年チャンピオンで掲載されいている一話完結のホラー漫画である。テーマは一貫して日常生活の中の不気味な恐怖。例えば夜の暗い階段に何かいるように見えたり、誰かに覗かれているといった日常に於ける恐怖がテーマである。
不安の種のこの一貫した日常の不気味な恐怖はグロテスクなスプラッター描写はないが、日常に於ける恐怖の予感を用いた一話完結のホラー漫画の恐怖演出は漫画としてとても素晴らしい漫画作品である。

やっぱ本編微妙じゃね?

がしかし問題は映画版である。この不安の種の映画はほぼオリジナルといっていい。もともとストーリー漫画ではない一話P.3〜P.5のショート漫画であるから、映画に落とし込むのは難しいし、無理やりでも申し訳程度に原作に出てきたキャラクターを使うことぐらいしかできない。
映画は謎の目玉が道路を行進し、車に踏み潰されていくところから始まる。富沼市に引っ越してきた鹿野一家の長男は引っ越し先の家で眼球を目撃する。そしてその晩、一家は原作にも登場するオチョナンさんという怪異にいきなり長女以外惨殺される。そしてバイク便の青年は植木に挟まった『Always三丁目の夕陽』の須賀健太を助けたが体の右半身がなくなっていたり、その後、バイト先のレストランで変な奴につきまとわれ、暮らしているアパートからでられなくって、いきなり岩井志麻子が登場したり、なんかしらんけど映画の世界線が変わって須賀健太が助かってバイク便の人が死んだり、ヒロインがクソほど性格が悪かったりとここであらすじを語ってもポルナレフ状態な映画である。

どこがこの映画だめだったのか?

さて、さきほどのあらすじ通り映画の時系列はバラバラで、しかも終盤は時系列が変わるし、最後は謎のループエンドといまいち腑に落ちない物語。そして原作と違ってスプラッターやグロが多めである。切り取られた腕。包丁でメッタ刺しされる鹿野一家の父親。植物の植え込みの中にめり込んでいるAlways須賀健太。しかしこれらがすごくものすごくチープなのだ。もう須賀健太の半分人間のシーンはしつこいし、岩井志麻子は変な幽霊みたいなやつでハンマーで殴ってくるし、そのシーンなんてまるで撫でるように優しいし殴り方でギャグ要因にしか見えない。
それから「でっ?」って言ってしまうようなシーンも多い。特にアパートで一人暮らししている女性がシャワーを浴びていると浴槽からゴポゴポと謎の物体が出てくるシーン。この映画は全体的にCGのクオリティは低いけど、このシーンのCGは特にひどかったし必要もなかった。しかもゴポゴポしてどうなると思っていたらシーンは変わって、もう女性は死んでるし、しかも死因は心臓麻痺だし。これじゃあ死因デスノートだよ。しかもあのアパートの張られたら死ぬシールは一体なんだったんだよ。
映画の場面作りも終始動きのない場面が何秒も続くし、何度も同じ場面が繰り返されるしで観ていてものすごくだれてくる。まるでザ・ワールドである。
登場人物も明確に主人公は設定されておらず、登場人物の三人の視点が行き来して物語が進んで行くが、あまりにも視点が行ったり来たりするためどの人物に焦点をあてていいのか、分からなくなり、最後はもうどうでもいいやってなりました。これにより登場人物に思入れもなくなり、別に須賀健太がどうなろうと、バイク便がどうなろうと、変な女がどうなろうとキャラクターが死んでしまおうと別に何とも思わなくなり、恐怖がなくなっていった。

こんな酷い作品だけどよかった点って?

しかし設定は良かった。この映画は富沼市という架空の町が舞台である。その町で怪異が起こり、登場人物たちが様々な事件に巻き込まれていく。みな口々に「この町は狂ってる」とか「この町はおかしい」と言う。この設定と町の閉塞感、不穏感はさすが『放送禁止』の監督だけあって工場地帯に閑静な住宅街、薄汚いマンションなどなんの変哲も無い郊外の住宅街の映像の取り方はすごくいいし、ハンディカメラのモキュメント的な場面はやっぱり『放送禁止』の監督だけあってすごく臨場感があって良かった。
結局、この映画は閉塞的で不穏な雰囲気の舞台作りは成功したけど、キャラクター、どうでもいいところのCGと必要なところで手を抜く説明不足な所の雑さがすごく目立つ映画だった。
長江監督の映像を観るならやっぱり『放送禁止』のストーカー編がいいよな。

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