なかむら ひろし

恵比寿マスカッツの罪は重い

 前回、女性の社会進出が進んでいない日本において、学力や専門的な技術のない女性は普通に就職するのもアイドルになるのもほとんど変わらないんじゃないかという話をした。アイドルっていうのは特殊な才能のある人がなるものだったはずなのだが、アイドルのインフレ化が進んだ現在ではむしろ何もない女性は「アイドルになるしか道がない」という不思議な現象が起こっているようにも思える。
 しかし、さらに怖ろしいのがAV女優へ進んでしまう人たちだ。芸能プロダクションを名乗るスカウトについて行くと、実はAV会社でそのままデビューさせられてしまったというのは過去の話で、現在では女性の方から自主的にAV女優になる時代だという。もちろんスカウトも存在するのだが、騙されてAVデビューさせられたという話はほとんどないそうだ。エロのカジュアル化が進み、それまで享受するのは専ら男性だったAVも今や女性向けAVが制作されるほど、女性も当たり前とまでは言わないが、AVを見て、AV女優に憧れるという時代のようだ。
 その一役を買っているのが『恵比寿マスカッツ』ではないだろうか。恵比寿マスカッツはAV女優を中心とした女性ユニットで、バラエティ番組に出演したり、CDをリリースし、全国ツアーなども行なっていて、ユニットとしての活動はアイドルと大差はない。それまで日陰の存在だったAV女優が日の目を見ることとなり、後ろめたさをより希薄にさせたと言える。実際、恵比寿マスカッツに憧れて、AV女優になった人も多いようだ。
 そんなAV女優の金銭事情だが、AVに限らず、性を売りものにする仕事は「短時間で簡単に稼げる」というイメージはないだろうか?それも過去の話で、現在はネットで無料動画が閲覧できることで、AV自体の売り上げが低下していることや先ほど述べたように自ら進んでAV女優になりたがる女性が増えたことによって、需要と供給のバランスが逆転し、供給過多となってしまったことで、よほどの売れっ子でもない限り、AV女優の給料は驚くほど低いそうだ。確かに時給換算すれば、他の仕事よりも高いかもしれないが、仕事の数自体が少ないこともあり、それだけではとても食べていけるわけもなく、ほとんどが風俗嬢などを掛け持ちしていると聞く。また、風俗の方も享受する側の男性の給料が長引く不況で低下したことや価値観の多様化もあり、風俗嬢の給料も下がっているという状況で、性を売ることすらできない女性も存在するのだ。
 AV女優は、毎年数多く生まれては消える。よほどの逸材でもない限り、何年も続けられる仕事ではない。しかし、引退したAV女優のほとんどは所謂「普通の仕事」ができなくなることが多いそうだ。安いとはいえ、コンビニのバイトなんかと比較すると、遥かに良い時給で働いていたわけですから、馬鹿馬鹿しくてできなくなるというのだ。結局、風俗に流れるというパターンが圧倒的に多いらしい。一度踏み入ったら、這い上がれないようにできているんですな。
 それでも堅気の世界に戻ってくる女性ももちろんいるわけだが、この社会の怖ろしいところは、いつまでも映像と元AV女優という肩書きは消えないことだ。AVが絶版になったところで、ネット上にはいつまでも映像は残る。いくら削除依頼をしても、既に魚拓は取られていて、再アップロードされてしまう。残るのは映像だけでない。引退後に何かしらの事業で成功しても、必ず元AV女優という肩書きが残る。いくらエロのカジュアル化が進んだといっても、性に対する後ろめたさが完全に消え去ったわけではない。声優の新田恵海さんのAV出演疑惑で炎上したことは記憶に新しい。その点では風俗嬢の方が引退後の十字架は軽いのかもしれない。
 私自身、AV女優や風俗嬢は立派とまでは言うつもりはないが、後ろ指をさされるような職業ではないと思う。しかし、よくよく考えてみると、交際や結婚を考えた場合、引退してたら大丈夫だけど、現役だと引くだろうなぁとも思う。まぁ、そんな機会がないから、そう思うだけかもしれないが。とりあえず、AV女優という職業は割には合わない。どうしてもと言うのなら、風俗にしておけ。これだけは言っとく。

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