なかむら ひろし

なぜ芸能人の不倫にそこまで反応するのか

 昔から芸能人や政治家の不倫報道が定期的にワイドショーを賑わしているわけだけども、タレントのベッキーと『ゲスの極み乙女』の川谷絵音の一件から『ゲス不倫』なる言葉も誕生し、現在のメディアの中では不倫報道は優良コンテンツとして扱われているようにも思える。まったくしょうもない話でよくここまで盛り上がることができるなと思うが、あながちしょうもないと言い切れないところもあるのがいやらしい。まぁしょうもないんだけど。
 不倫騒動の際、ネットなどでボロクソに叩かれた川谷が「謝れって言うけどいったい誰に?」みたいな開き直ったかのようなことを言って、さらに炎上させたのだが、これって別に間違ったことを言ってるわけじゃないんだよね。当然、不倫は決して褒められたことではないし、やるべきではない。民法でも不法行為として明記されている。でも、それは当事者同士の問題であって、所属事務所やCMに起用している企業なんかならまだしも、何の関係もない人間がネットで犯罪者の如く叩くのには違和感を覚えてしまう。
 そもそも芸能界は「女遊びは芸の肥やし」なんて言葉があったぐらいで、一般とは異なった感覚を持った人間の集まりなんだから、不倫報道なんて「やっぱり芸能人は違うね」と鼻で笑うくらいがちょうどいい。最近ではyoutuberのはじめしゃちょーが二股交際で活動休止に追い込まれるということがあった。youtuberは芸能人ではないけれど、一般人がやらないようなことをやって、一定の支持を受けているわけだから、一般人だと思ってもらっては困る。極端な言い方をすれば、芸能人もyoutuberも狂人で、テレビやyoutubeは見世物小屋だという認識で間違いないと思う。狂人が不倫という身体を張ったショーを見せてくれているのだから、そんなものにいちいち腹を立てるのは間違いである。そんなこともわからず、まったく関係のない人間の不倫や浮気に過剰な反応を示し、ボロクソに叩く人間の心理って何なんやってことを考えてみた。まぁ、単なるゴシップ好きかもしれんが。
 まず、思い浮かんだのが「ルサンチマン」だ。美醜の判断なんて主観的なものだが、芸能人は一般的にルックスが良く(別にベッキーや川谷がどうだという話ではないが)、収入面でもそこそこ成功している芸能人であれば、それが刹那的なものであったとしても一般人より高収入である可能性が高い。ルックスが良く、高収入、さらに有名人という箔が付くわけだから、モテないはずがない。そんな恋愛強者が結婚してもなお恋愛市場に参入してくることは、非モテ側にとっては面白いはずがない。つまり不倫を叩いているのは、非モテの「お前らばっかりずるいぞ」というルサンチマンであることが考えられる。
 次に既婚者や交際相手がいる人間の場合、「その奔放な性に対する羨望の裏返し」が不倫叩きにつながっているかもしれない。理性によって欲望を抑圧している人間は、己の欲望に忠実な人間を羨ましいと思う一方で嫌悪するという心理も働いたりする。不倫(浮気)願望はあるが、とても実行に移す勇気はないという人間ほど、それを平気でやってのける人間が許せないのだ。もちろん、不倫叩きをするときは、自らに不倫(浮気)願望があることなんて、おくびにも出さないだろうが。
 また、モテと非モテや不倫願望の有無は別として、「自分は不倫などするような不道徳な人間ではない」という表明とも考えられる。不倫をこんなに叩いている人間が不倫なんてするわけないよねっていう。他人から良く見られたいのだろうが、こんなしょうもないことに顔を真っ赤にしてる人間なんてどっちもどっちである。むしろ過剰に反応してる奴の方が怪しいとも受け取れるわけで。
 いくつか有名人の不倫を過剰に叩く心理を挙げてみたが、これらは人間なら誰しもが持ちうる欲望を理性で抑制している「比較的」まともなものだろう。しかし、それが「自分も不倫(浮気)されるのではないかという不安」だとしたら厄介である。有名人の不倫なんて、自分とはまったく関係のない話である。普通、人間は自分とは無関係なことには腹を立てない。核心を突かれたときに怒りの感情が湧くものだ。巷では異性と遊びまくっている自分が格好いいと思っているのかなんなのか知らないが、あちこちで下世話な会話が繰り広げられている。周りにそういう人間はいなくても、テレビやネット、SNSを覗いてみると、いくらでもそういう話が出てくる。そんな奴は世の中では少数派であるとか、そもそも本当の話かどうかなんて確かめる術はないのだが、そんなことは関係ない。身近にそんな奴がいるかもしれないというだけで、人間を不安にさせるには十分なのだ。それが本来関係のないはずの有名人の不倫でさえも、不倫と聞くだけで過剰に反応してしまう。つまり男女間の信頼関係が崩壊してしまったと言えるわけだ。
 所謂「草食系男子」という言葉が流行ったり、異性との交際や結婚を望まない若者が増えたという調査結果が出たのは、単に不況による経済状況の悪化や価値観の多様化だけではなく、男女間の信頼関係が崩壊してしまっているという側面も大いにあるはずである。一旦崩壊してしまった信頼関係を取り戻すのは容易なことではない。一見、幸せそうなカップルでも内では猜疑心が蠢いているかもしれない。リア充もリア充で大変なのである。

 ※この記事は過去にフリーペーパー用に書いたものです。お蔵入りにするのもあれなので、古いものですが、こちらに掲載することにしました。不倫コンテンツはいつの時代も大人気ですな。松居なんとかなんて正に狂人ですわ。

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