なかむら ひろし

サービス残業をして初めてスタートラインに立てる

 アルバイトを含めて、色々な仕事をしていると、本当にまともな企業って少ないんだなと思う今日この頃。今回は、散々議論がなされている話ではあるが、サービス残業について書いてみようと思う。
 このご時世、サービス残業って何ぞや?っていう人はいないと思うが、一応簡単に説明しておくと、「対価が支払われない残業」つまり「ただ働き」ということになる。誰もが奴隷じゃないんだから、そんなバカバカしいことをしたくないと思っているはずなのだが、不思議とこれがなくならない。それは一体何故なんだろうか?
 慢性的なデフレによって、企業は生き残るために様々な対策を行ってきた。原価や労働者の賃金を下げたり、時には大規模なリストラを断行するなんてことも。しかし、これらには限界があり、やり過ぎると逆に自分の首を絞める結果になることもある。そこで考え出されたのがサービス残業ではなかろうか。正式な手続きを踏んで労働者の賃金を引き下げるのはなかなか骨が折れる。労働者から反発されるだろうし、新たな労働者が入ってこなくなる可能性もあるわけで。その点、サービス残業は便利である。例えば、時給1000円で3時間働かせて、1時間サービス残業させれば、時給750円で4時間働かせたことになり、実質的には賃金の引き下げになるわけだが、もちろん外部には「時給1000円ですよ」と言うわけだ。「こんなん内部の労働者は納得しねぇだろ!」って話なのだが、企業は上手く丸め込む。競争心を利用して。
 かつては残業をしていると「バリバリ働いて偉いわねぇ」などと評価の対象だったわけだが、残業っていうのは企業からすると基本給の他に掛かる無駄な経費である上、基本給よりも割高だ。また、残業をすることで手取りも増えるし、評価もされるとなれば、労働者が定時まではダラダラ仕事をして、残業に突入してからが本番だという心理が働くのは極めて自然なことである。当然、こんな非効率を使用者側が黙って見ているわけはない。そこで定時に仕事が終わらない奴は無能だという評価基準を取り入れる。このこと自体に問題はなく、至極真っ当なことであるのだが···
 問題なのは、使用者側が「テキパキ働けば、これぐらいならできるはずだ!」と残業なしでは”とても”終わらない仕事を与えることにある。(日本では成果主義を取り入れている企業は少ないので、定時で終わるか終わらないかぐらいの仕事を与えるのは普通で、”とても”終わらないというのが重要)さらに使用者が盛んに人件費削減を訴えるので、投入される人員も削減され、時間当たりの仕事量ばかりが増える。当然、残業が必要になるわけだが、残業を申請してしまうと自分の評価が下がってしまう。そこでサービス残業を行うのである。そして、これを皆がやる。これは本当にずば抜けて仕事が早い労働者以外はサービス残業をやって初めて評価ゼロからスタートできるということを表す。つまり、結局は残業代も評価も貰えていないというわけだ。
 さらにこのシステムは悪循環を生む。データ上では残業は行われていないので、現状の仕事量は適正ということになる。データしか見ていない使用者が適正だと判断しているのか、サービス残業に関しては見て見ぬふりをしているのかは知らないが、恐らく後者であろう。(何か問題があったときに知らぬ存ぜぬで押し通すつもりだろうね)その結果、必要な業務改革が進むことなく、使用者が本来忌み嫌うはずの非効率な労働を進めているという皮肉なスパイラルに陥る。
 以上は私が実際に身を置いたことのある企業の話なのだが、共感してくれる方は少なからずいると思う。ちなみに私はきっちり残業代を申請して、上司よりも多額の賃金を得たり、サービス残業を断って、上司に仕事を押し付けて帰宅したりしたことが原因で袋叩き(物理的な意味ではない)に遭って辞めた。
 サービス残業をしてしまう理由はこれだけではなく、他にも様々だと思うのだが、今回はこの辺で。

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