/ 現代社会の闇

鈍感すぎても敏感すぎてもダメ

文:なかむら ひろし

 千葉県松戸市のベトナム国籍の少女が殺害され、その容疑者として逮捕された男が元保護者会長だったというニュースは記憶に新しいところだ。「保護者会長がそんなことをするなんて信じられない!」なんて声をよく耳にしたものだが、いまだにそんなことを言ってる人がいる方が私は信じられない。犯罪者を取り締まるはずの警察官だって犯罪者になるわけだし。
 また、子供が犯罪被害に遭わないように防犯意識が上がっていて、悪意なく子供に話しかけただけで通報されたなんて話もあるくらいなんだから、どう考えても子供に接触しても周囲から怪しまれない身分の人間の方が犯行までのハードルが低いんだよね。今回逮捕された渋谷恭正って奴の場合、精力的に地域の防犯パトロールを行なってたみたいで、防犯パトロールの巡回ルートや監視カメラの位置などの情報は当然把握していただろうし。
 別にこういった身分の人間をすべて疑ってかかれって言いたいわけじゃないんだけど、子供に興味を持った人間が隠れ蓑にするためにあえてその役を買って出るパターンも多いんじゃないかってね。その典型例が教師かな。学校内で教師と生徒が接触してて不自然な点などひとつもない。そりゃそうだ。だけど、実際には教師による体罰やいじめという犯罪は行なわれているわけで。教師と生徒という上下関係がはじめから出来上がっているというのも、犯罪教師には好都合なんじゃないかな。
 そんなことを言うと、他人は誰も信用できないじゃないかって話になっちゃうんだけど、身内だからって信用できないから困る。子供を一番殺してるのって、実の親なんだよね。当然、離婚した親の再婚相手もしくは交際相手も要注意。他人を疑うよりもまず、自分が子供を虐待しない親になることが大事なのはいうまでもない。それができないから虐待も終わらないわけだけども。
 散々脅すようなことを言っといてなんだけど、今回の趣旨は世の中、自分を含めて誰も信用することなんてできないサイコ・スリラーなんや!ってことではない。『人は見た目が100パーセント』っていうドラマがやってるけど(見てはいない)、犯罪者に関しては見た目が100パーセントってことはないんだよね。犯罪者がみんな、ショッカーみたいな格好をしていたらわかりやすんだけど、当然そんなことはない。白竜や小沢仁志だって、強面だけど犯罪者じゃない。中には合致するケースもあるがそれは偶然だったり、逮捕されてから姿を見ているため、バイアスがかかっているだけかもしれない。身分だってそうだ。無職や低所得者だけが犯罪を起こすのではない。当たり前だよね。
 「あの人はこうだから大丈夫に違いない」という決め付けは殺人じゃなくても詐欺に引っかかったりする王道パターンで危険なわけだけども、「あの人はこうだから犯罪を起こすに違いない」という決め付けはもっと危険だったりする。外国人は危ないとか低所得者は危ないとか言い出したら差別につながるわけだし、最悪魔女狩りみたいなことだって起こりかねないわけで。凶悪事件が起こると極端な思考に陥りがちだけど、普通に考えるってことが一番重要だったりするんだよね。
 だからこそ、根拠のある対策じゃないと犯罪の抑止としては意味がない。そうじゃないと、犯罪の抑止にならないばかりか、自分たちの生活を不快なものにするだけ。例えば、最近じゃ街中に監視カメラが設置されたりしていて、気持ちが悪いと言う人もいるんだけど、監視カメラに本当に防犯効果があるかどうかは議論されてるところなんだよね。事件が起こった後の捜査に役立ってるのは事実なんだけど、防犯という意味では。カッとなってやった系の事件って監視カメラが抑止になるとは思えないもんね。あと監視カメラでいうと、スーパー銭湯の脱衣所にも監視カメラが設置されているところがあって、ロッカー荒しなんかには効果があるって話なんだけど、特に女性は誰が見ているかわからなくて気持ちが悪いって思うのは当然だし、映像が流出しちゃって、また違う犯罪が発生することだってある。
 幸い日本という国は他国と比較して犯罪率がかなり低いわけだけど、あまりに犯罪に鈍感すぎるのも、被害に遭っちゃえば、そんなデータなんて関係ないんだって敏感になりすぎるのも考え物。最低限のリスク管理は怠らず、あとは普通に穏やかに暮らしたいものだよね。

なかむら ひろしのTwitter

ついったウィジェットエリア