ぼくらの『ネオ・ヴィジュアル系』世代 音楽とネオ・ヴィジュアル系のルーツ編
ハードコア化していくヴィジュアル系そしてネオ・ヴィジュアル系のルーツとはなにか?
ネオ・ヴィジュアル系以降、SlipknotやMarilyn Manson、Kornのような当時でいう『モダンヘヴィネス』と呼ばれたハードなサウンドが2000年代に大量に出現した。恐らく、Dir en greyの『VULGAR』登場以降だったと思う。これ以降、ガゼットをはじめD’espairsRay、蜉蝣などが登場し、ハードな曲、デスボイス、シャウトを多様したり、退廃的、自傷的な歌詞のバンドが登場していった。そしてそのネガティブな部分に癒しを求めるファン層たちが拡大していった。ネオ・ヴィジュアル系のハードコアな音楽の演出目的は自傷的、ネガティヴを演出する手段となっていったところから、ネオ・ヴィジュアル系以降のヴィジュアル系は表現はネガティブな部分にファンたちが癒しを求めて行くアイドルビジネスとなっていった。
ネオ・ヴィジュアル系のルーツはどこかと考えると例え金髪にロン毛の出で立ちであっても、あくまで音楽そのものを追求するXjapanやBoowy、筋肉少女帯を今日のネオヴィジュアル系に繋がるヴィジュアル系とは個人的に呼びにくい。ヴィジュアル系の開祖と呼ばれるBoowyやXjapanのヴィジュアル系は現代のネオ・ヴィジュアル系のインナーなスクールカーストで言うナード層というより服飾のセンスからみて間違いなくヤンキー層の体質を持っていると考えるのが自然である。なので僕がこの時代のヴィジュアル系がネオ・ヴィジュアル系の文脈とは違うと思うのはこのヤンキー層とナード層の体質の点にある。XjapanのYOSHIKIはバラエティー番組で破天荒な人物として店を破壊したり、特攻服のようなステージ衣装で暴れ回ったりしたり、Boowyは氷室京介のヤンキーテイストが80年代のヤンキー達に支持されたりしたが、ガゼットやナイトメアをはじめとするネオ・ヴィジュアル系はどうだろうか?明らかに当時のネオ・ヴィジュアル系の支持層はもっとインナーなゴスロリやメンヘラと呼ばれるナード層の方の人たちが主流となっていた。
そういった具体的なインナーなネオヴィジュアル系を明らかにした元祖はおそらくMALICE MIZERであろう。彼らの楽曲を並べると音楽と世界観は徹底的にゴシックという形で構築していき、メンバーのミステリアス性を恐ろしいまでに貫いている。バンドというよりは歌劇に重点を置いていた。その音楽との距離こそ、後のネオ・ヴィジュアル系の今日に至るまでに受け継がれヤンキー的なイメージではないゴシックなイメージとなっていったのではないだろうか。
少し余談になるが、MALICE MIZERがネオ・ヴィジュアル系の音楽との距離という流れを汲んでいるその延長線上には誰がいるだろうか。そういった音楽との距離を置いたことを確信的に見せたとするならペニシリンとかもいたがネオ・ヴィジュアル系の最終形態となるとやはりゴールデンボンバーであろう。彼らは完全に楽器というものを排除し、かなり極端化したオタク的、お笑い的なステージであるが、徹底したバラエティ的なステージへの追求は音楽との距離を確信的に追求したMALICE MIZERの根底に繋がっていると思う。