シネマフィリアvol.5 マッド・ドライブ

文:田渕竜也

90年代のイギリスとは

今回の「マッド・ドライブ」の原題は『Kill your friend』である。丁度、『マッド・マックス』が公開された年にDVDが発売されたので、それにあやかったのだろう。嗚呼、アルバトロス。内容は全く狂気の世界でもなく車で暴走するような映画ではなく音楽の業界クライム映画である。
舞台は90年代のイギリス。当時のイギリスでは、ブリットポップ・ムーブメントとしてOasis、Blur Primal sreamなどをクールブリタニカとして国家ブランド戦略としてロックミュージックやクラブなどのレイブミュージック、ファッションや現代アートなどのポップカルチャーを世界に輸出し、ソフト産業で古臭くて暗いイギリスを若く才能あふれる新しいイギリスを世界に発信しようとしていた。

映画の主なストーリーとは

そのクールブリタニカの狂騒によりイギリス音楽界では様々な音楽レーベルが凌ぎを削ることになっていった。そんなブリティッシュロック業界の内幕であるレーベル内での主人公が成り上がろうとする話。オープニングからドラッグをやりながら主人公のスティーブンは「我々が作っているものはアートでもなく社会を変えるためでもなくやっていることは金儲けだ」と語る。主人公のスティーブンはレコード会社のアーティストの発掘や契約、育成などを手がけてるA&R、アーティスト&レパートリーという仕事である。彼はビジネスとして音楽を成功することを求めていた。出向いた先のフランスのカンヌで大金をかけて現地で人気のミュージシャンと契約するのだが、歌詞が過激でラジオでは不評ろなり、楽曲も売れず、資金が回収できなくなってしまう。さらに見下していた同僚が出世してしまうことになるが、切羽の詰まったスティーブンはその同僚を殺してしまう。そしてさらにそれを捜査している刑事もやってくる。といったストーリーである。

映画ないに登場する第四の壁とクライム映画

ストーリーでは実在のバンドやアーティスト、レーベルなどの名前が次々と登場し、音楽業界内の内幕の話としてストーリーは進んで行く。この映画内で主人公のスティーブンは自分の考えていること映画のストーリーを観客に向かって話すように進んで行く。『デッドプール』でも使われたこのメタ的演出手法である第四の壁というものが頻繁に登場する。
それからこの映画はドラッグ映画でもある。映画の初っぱなからドラッグ描写から始まり、ドラッグのせいで人殺しをしてしまう主人公が精神的に追いつめられる。どん底まで落ちるが、策略、裏切り、偶然、人脈を駆使して、逆転をしていく。成功のためにはなんでもする人を無実の犯罪を背負させて自殺に追い込んだり、人殺しもするその姿はスリリングで結末は素晴らしくブラックであった。

上り詰めること

やはり上り詰めるということをするには才能より野心が必要である。手をつないでみんなで頑張るという素敵な光景もいいが、やはりトップを狙うにはまずは手短なライバルを消して行くということが第一となり次に必要なのは手を貸してもらえるものの存在と利用できる人物の存在が必要となってくる。これらは行動力と原動力はいくら音楽の才能や音楽の愛があってもできない。音楽をビジネスとしか捉えていないものでしか出来ない行為なのである。しかしこの狂気に満ちた人は二十年後にはどうなっているのだろうか?そこが少し気になった。

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