シネマフィリアvol.7 ポンコツクソ映画特集 『弟切草』

文:田渕竜也

本当に怖かったのか?Jホラー映画

 やっぱりだけど日本のホラー映画が世界一というのは幻想だったと思う。邦画のホラー映画は決まって得体の知れない白塗りで乱れた髪の女だし、決まって呪われるし、しかも全く恨みもないやつを殺すし、結局、解決方法はないし、挙げ句の果ては打撃攻撃なんてするし、なんか魔術とか使えよ、反撃しろよって思ったりする。それだったらもうジェイソンとかフレディとかのほうが不道徳を極めているからその残虐行為に爽快感があって面白い。
そんな90年代後期に映画『リング』と『呪怨』が偶々国外でも評価されヒットした事から無理矢理、日本の四谷怪談などを引き合いに出して日本文化と結びつけて、Jホラーというブランドを確立しようとした。そのJホラーブランドが出てくる前後の2001年に制作されたのが、今作の映像の出るフリスビーこと『弟切草』である。
 原作は『かまいたちの夜』でおなじみのチュンソフトのサウンドノベルゲームである。当時、漫画や小説と様々なメディア化されその次いでにというぐらいの勢いで制作されたのが今作である。

むしろこの映画良いところってあるの?

 ヒロインは最近全くメディアで観ないネットで調べると「顔が長くなった」なんて書かれている奥菜恵。ヒロインのゲーム会社で芸大に通いながらバイトをしていて、そこの社長が元カレである。そしてその元カレと一緒に正体不明のヒロインの実父の遺産である古い洋館へ行く。そしてそこで実父は残酷絵画で世界的に有名な画家だったことを知り、次いでに自分が双子だったということも知るというのが大筋のストーリーであり、お化け屋敷型ホラー映画なのである。
 まぁ大体、洋館という設定は原作ゲームにそれなりにそってはいるのだが、初っぱなのシーンからデジルビデオ撮影で独特な雰囲気を出すため、デジタル加工された映像で始まるが彩度とコントラストが強すぎて本当に暗いシーンが見えにくいし、ホラー映画の演出で重要な画面の奥行きがない。そのためこの先になにかあるといった恐怖が全くないのである。しかも舞台の洋館はチープなセットで全く怖くい上にふつうにベッドは使用できるし、終盤辺りではシャワーの水が普通に出て来たりする。一言で言ってしまえば、全てにおいて雑なのである。
 手持ちカメラのシーンや監視カメラの固定された映像、それに早回しや巻き戻しをする少し凝った演出をしようとしているところもあるんだけど、これが本当に何度も何度もしつこいぐらいに入ってくるので映像の流れが酷く悪く、ホラー映画としての臨場感も無くなってしまった。しかも手持ちカメラでなにか出てくるかと思って観ていても結局なんにも無かったりしてただただ観にくい映像になってしまっていた。
 それに映画の後半で洋館のマップが登場するのだが、それでも登場人物がどこにいてなにをしているのか分かりづらい。そして外部と連絡を取り、謎解きをして行くのだが、すべて都合良く鍵がそこにあったりするし簡単に外部に連絡が取ることができるこのヌルゲーさが緊張感がない。ていうかさっさと警察とかに連絡すればいいのにと思うし、折角の洋館設定なのにこれでは怖さが全くなくなる。ただのボロいところにカップルが泊まりにきているだけの映画になってしまっている。そんなことはプレステージ作品でやってくれ。
 そしてどんでん返しのオチっていうのはそこをかっちり決まれば最高にかっこいいのだが、これを外すとワールドカップのパラグアイ戦での駒野さんのPKぐらい目も当てられなくなる。今作で言えば、もうネタばれになるが「実は奥菜恵の双子は弟だった」という展開は確かに意外性はあるのだが、この弟がただの奥菜恵なのである。しかも普通に胸もあるし、華奢でふつうに奥菜恵なのである。せめてサラシぐらい巻いとこうぜ。こういうどんでん返しの外し方をすると本当に目も当てられない。こういう展開をするなら一度『女子高生チェーンソー』でも観て勉強してくるといい。もう少しマシなどんでん返しにはなったはずだ。

 それからこの映画、洋館で起こった事件はは弟切草ゲーム内で起こったことで、最後のオチはゲーム会社でこのクソゲーを開発して社内テストをしている楽屋落ちで締めくくられている。そしてそこで奥菜恵がこのクソゲーの最後のシーンを「私、こんなのつくってない」というのだが、もうこのオチに関しては「だからどうした」としか思えず、二度も「どんでん返し」というPKをはずした今作は一言で片付けるならば「雑」という一文字で感想が終わってしまう。

やっぱりイエモンっていいよね

 あっ、ただエンディングのYellow Monkeyの曲はかっこ良かった。それとゲームの雰囲気を再現しようとする最大限の努力。ただそれだけで奥菜恵のシャワーシーンも暗くて観づらいし、努力がかえって映画としての画面レイアウト観づらいということになってしまった。なんか雑な謎解き脱出フリーゲームをやったような感じであった。

田渕竜也のTwitter

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