平然と「愚直」という言葉を使う奴はややこしい奴に決まっている

文:なかむら ひろし

 先日、安倍首相も使っていたが、最近「愚直」という言葉を使う人間が増えたように思う。「忖度」ほどではないにしても、一昔前はそれほど耳にすることはなかった。何か流行るようなきっかけがあったのだろうか。
 「愚直」の意味ぐらい知っていて当たり前というか、知らない奴なんて未開人としか言いようがないが、一応書いておく。「正直いちずなこと。ばか正直。」と辞書にある。「愚か」という字が使われていることからも分かるように自分のことをへりくだって使う言葉であることは明白で、決して他人に対して使うような言葉ではない。
 ただ、最近の風潮としては割りとポジティブな意味として使われているようなのだが、そんなことは本題ではない。よく言葉の本来の意味に固執する奴がいるが、言葉なんて生き物なんだから大多数が「愚直」という言葉を褒め言葉として捉えているなら、それでええやないか。もちろん本来の意味を知ることも大事ではあるのだが、あんまりうるさい連中には大和言葉でも使っとけと言ってやりましょう。
 話が少し脱線したが、「愚直」という言葉を使う意図としては「ブレない」とか「ひとつの物事に集中して取り組む」という決意表明やその結果としての実績のアピールだと思う。それはそれで結構なのだが、こういうことを平然と口にしちゃう奴って、得てして頭が固いというか融通が利かないというか我が強いんだよね。一見へりくだっているようだが、「俺のやり方にいちいち口出しするんじゃねぇ」とか「俺の言う通り動いときゃ良いんだよ」というのが本音。当然、他人の助言などまったく聞き入れようとしない。
 他に特徴を挙げるとするならば、いくら間違っていようが、とにかくブレないことが素晴らしいと思い込んでいたり、より効率の良い方法を模索しようともしないなど、思考停止に陥っていることが非常に多い。正に愚直の「愚」の字がピッタリ。きっと、こういう奴らが「レリゴーレリゴー」と騒ぎ狂っていたんじゃなかろうか。あとは所謂「意識高い系学生」みたいな最近知った「ちょっと賢そうな言葉」を使ってみたいだけという、タラオみたいな取るに足りない連中でしょうな。というわけで、「愚直」って言葉を平然と口にしちゃう奴には要警戒だ。
 当コラム特有の決め付け満載でお送りしてきたわけだが、これからも愚直にこのスタイルを続けていく所存であります。まぁ私自身もややこしい人間であることは否定できないので、こんな締めくくりでも良いんじゃないだろうか。

なかむら ひろしのTwitter

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