新たな敵が登場!『デッド·オブ·ウィンター·ロングナイト』でゲームの幅を広げよう
『デッド·オブ·ウィンター·ロングナイト』は、前作の拡張版ということなのですが、新要素を除けば、カードやコマが差し替えられているだけで、基本セットとほとんど変わりません。拡張版として使えるだけでなく、こちら単体でも遊べます。ただ、基本セットと比べると、キャラクターやシナリオの数が少なくなっているので、やはり基本セットと混ぜて遊ぶのがベストでしょう。
基本的なルールは基本セットと変わらないので、ここでは『ロングナイト』で新しく加わった3つのモジュールを中心に紹介していこうと思います。
○ラクソン製薬モジュール
『ロングナイト』では、新たなロケーション『ラクソン製薬』が追加されました。ここは施設自体が汚染されていて、捜索の際に感染判定が必要になりますが、リスクに見合った強力なアイテムが入手できます。
ラクソン製薬で入手できるアイテムの中でも特徴的なのが『カプセル剤』です。これは使用する職能者を決めて6面ダイスを振り、カードに書かれた効果を適用するのですが、プラス効果が発生することもあれば、マイナス効果が発生することもあるというギャンブル要素の強いアイテムになっています。その他にも『火炎放射器』や『プラスチック爆弾』といったゾンビものではお馴染みのアイテムもあるのですが、『転送砲』や『携帯バリア』といったSFチックなアイテムもあり、そこら辺は個人によって評価が別れそうな感じがします。
また、ラクソン製薬モジュールを導入すると、『実験体』と呼ばれる特殊なゾンビが現れるようになります。『実験体』は通常の攻撃でしか駆除することができません。つまり「職能者の特殊能力」や「アイテムの特殊効果」が適用されないのです。さらに『実験体』と同じ施設に通常のゾンビや職能者がいる場合、優先的に『実験体』を攻撃しなければなりません。ここら辺が結構厄介です。
『実験体』を駆除するには、通常のゾンビと同様、感染判定が必要ですが、『感染判定なし』という特殊効果だけは適用されます。ここで職能者が死亡しなければ、6面ダイスを1個振り、『実験体カード』に書かれた出目に対応する攻撃結果に従うのですが、出目が悪いと駆除できないばかりか、反撃を受けてしまうこともあります。『実験体』は12種類あって、比較的簡単に駆除できるものもいれば、駆除できたとしてもただでは済まないような強力なものまで様々です。
この厄介な『実験体』ですが、封印コードを使って、封じることもできます。具体的にどうすれば良いかというと、ラクソン製薬に行き、指定された目の未使用ダイスを2個消費するというものです。『実験体』は毎ラウンド、新しいものが登場しますし、移動の機会も増えて大変なので、「こいつは封じておかないと厄介だ」とか「こいつぐらいなら出てきても問題ないだろう」なんていう戦略も必要です。また、『実験体』が配置される施設はランダムなので、安全だと思っていた施設が突破され、死亡するなんてことも起こり得るので注意が必要です。
○盗賊モジュール
『ロングナイト』の危機カードには、盗賊配置欄というものがあります。危機カードが捲られると、指定された施設に盗賊が配置されるのです。盗賊は『生存者エリア』に配置され、『ゾンビ追加ステップ』で『生存者』としてカウントされます。また、『ゾンビ追加ステップ』の後、盗賊のいる施設の山札から、盗賊1体ごとに1枚の支援カードを捲り、新たなロケーション『盗賊のアジト』にオープンした状態で配置されます。他にも『交差点カード』で邪魔してきたり、『実験体』ほどではありませんが、なかなか厄介です。
盗賊は、攻撃によって取り除くことが可能です。他の職能者を攻撃する時と同様、『感染判定』の必要はありませんが、6面ダイスを振って、4以下の目を出さなくてはいけません。また、『盗賊のアジト』に行って、物資を奪うこともできます。ただ、ここでもダイスによる判定が必要になり、出目によっては反撃を受けてしまうこともあります。
もうひとつ面白い要素として、『裏切り者』ではないプレイヤーが追放された場合、そのプレイヤーは『盗賊の頭目』になります。通常、盗賊の配置は『危機カード』に従うのですが、『盗賊の頭目』は好きな施設に盗賊を2体配置できるようになります。また、各ラウンド中に1回、『盗賊のアジト』にある好きなカード1枚を手札に加えることもできます。
○増設モジュール
増設モジュールを導入すると、砦を強化することができるようになります。ゲーム開始時、『増設カード』をランダムに4枚をオープンにした状態で並べておきます。ゲーム中、『ジャンク』を使用したりすることで、『増設カード』の上に『増設マーカー』を置くことができ、カード毎に指定された分の『増設マーカー』が配置されると、その施設を利用することができるようになります。『増設カード』は1枚利用可能になる度に山札がなくなるまで1枚ずつ補充していきます。
『増設カード』は全部で10種類あり、どれも結構有用です。例えば、『塹壕』は増設マーカーを2個配置することで利用可能になり、「ゾンビ追加ステップで砦に配置されるゾンビを2体減らす」ことができます。ただ、『ジャンク』は躍起になって探すようなものでもないですし、増設マーカーを配置できる特殊能力を持つ職能者は1人だけなので、スルーされることが多かったりします。
これらのモジュールは、好きなものだけを選んで導入してもいいのですが、やはりすべて導入するのがオススメです。ただ、慣れないうちは覚えることが多くて大変かもしれないので、どれかひとつに絞ってもいいかもしれません。『ラクソン製薬』と『盗賊』に関しては、チュートリアル的なシナリオが用意されているので、そちらを利用するのがいいでしょう。
次は、『ロングナイト』の新ルールを紹介していきます。どれも基本セットを遊んでいれば、すぐに覚えられる簡単なものです。
○1番隊の投票
1番隊つまりスタートプレイヤーは、毎ラウンド右隣のプレイヤーに移っていくという基本ルールは変わりませんが、各ラウンド終了時にもう一度、スタートプレイヤーをやりたい場合、投票にかけることができます。これが可決されると同じプレイヤーが続けてスタートプレイヤーになります。
裏切り者のプレイヤーは、終盤の最終手番の時、一気に士気をゼロにして勝つパターンが多いです。士気を削り切れなくても、次のラウンドはスタートプレイヤーになるので、追放されずにもうワンチャンスあり、裏切り者が有利だったゲームバランスが修正されています。
○絶望トークン
イベントによって、職能者に絶望トークンが配置されるようになりました。扱いとしては、負傷トークンと同じなのですが、「絶望トークンを取り除く」と明記された特殊効果以外で取り除くことができません。
肉体的ではない精神的なダメージを表していて面白いと思うのですが、「自分の職能者に負傷トークンがない」なんていう『密命』を引いているとかなり厄介なことになります。
○反抗的な無力者
イベントや食糧が不足した場合、無力者が反抗的になります。反抗的になると、必要な食糧も追加されるゾンビも2倍になってしまいます。つまり、1人なのに2人の無力者と同じ扱いになるのです。(死亡した時に下がる士気は1のままですが)何故か治療薬で元に戻すことができたりします。
「無力者を抱えているが、砦の防衛も食糧も余裕があるし大丈夫だろう」なんて油断している時にイベントで無力者が反抗的になると、一気にピンチに陥ります。これまで以上に無闇に無力者を増やさないよう注意しなければいけません。
○爆発罠
イベントや特殊効果でしか配置することができない特殊なバリケードです。通常のバリケードは、配置されるはずだったゾンビと共に消えるだけですが、爆発罠の場合は、同じ施設にいるすべてのゾンビも消し去ります。非常に強力ですが、それほど配置できる機会が多くありません。また、『実験体』には効果がないので悪しからず。
○騒音トークンの処理
前作では騒音トークン1つにつき、ダイスを1個振り、3以下だとゾンビを1体追加するというルールでしたが、『ロングナイト』では騒音トークンをコイントスの要領で放り投げ、『!!!』の面が出たらゾンビを1体追加すると変更になりました。
確率的には同じですし、どうでもいい変更なのですが、新要素の追加でダイスを振る機会が増えるので、たまには違うアクションというのもいいでしょう。
○墓場
ゲーム中に死亡した職能者を配置するためだけのボードも追加されました。『密命』で特定の人数の職能者に死んでもらわなければいけないなんて時にカウントしやすくなる程度で、あまり意味はありません。それっぽいイベントも用意はされているのですが、スペースの問題もあるので、無理に置く必要はないという雰囲気アイテムです。
以上、『ロングナイト』の新要素を中心に紹介してきました。今回も総評を書いて終わりにします。
オススメ度★★★☆☆☆
基本セットを持っていて、気に入った方には強くオススメしたいのですが、持っていないのなら、基本的な評価は変わりません。基本セットが合わなかった方には、こちらもオススメできません。
ここでは拡張として、基本セットと混ぜて遊ぶ時の注意点を中心に書いていくことにします。
○どっちから買うべきか?
単体で基本ルールはもちろん、『ラクソン製薬』『盗賊』などの新要素でも遊ぶことができるので、基本セットを買うよりもお得感はありそうな気がします。ただ、職能者の種類やシナリオが減っているので、基本セットほどのボリューム感はありません。
また、新要素が加わったことで、難易度が上がったかといえば、そうでもなさそうです。ダイス運とかもあるので、一概には言えないとは思いますが、自分がプレイした感じだと、新しい装備の性能が向上していたり、シナリオが基本セットほどきつくなかったり、特に難易度が上がったという印象はないです。
『基本セット』と『ロングナイト』どちらを先に買うにも一長一短あって、難しいところではあります。『ウォーキングデッド』好きなら『基本セット』、『バイオハザード』が好きなら『ロングナイト』を購入することをオススメしておきます。
○拡張版として考えるとコスパが悪い
独立型拡張セットなので、単体で遊ぶことを考えると妥当な価格だとは思うのですが、拡張版として考えると、価格の割りにグレードアップした感じは薄いです。基本セットを持っている方は、このシリーズが相当気に入ったという場合を除いて、他のゲームを買った方が良いと思います。
○混ぜると交差点イベントが起こりにくい
『ロングナイト』の交差点イベントは、直接ゲームとは関係ないことが発動条件になっているものがあったり、なかなか面白い工夫がされています。枚数自体は減っているのですが、その分イベントが起こりやすいので、それほど問題ではありません。むしろ基本セットと混ぜて遊ぶ場合、枚数が多すぎて特定のキャラクターがいることで発動するイベントが起こりにくいことの方が問題です。絶対に発動し得ないカードを引いた場合、それを公開して、1回だけ引き直すなどのオリジナルルールを取り入れても良いかもしれません。
○ランダムに支援カードを混ぜると種類が偏るかも
各施設の支援カードの山は、基本セットと混ぜても20枚にするため、ランダムに選ぶとカードが偏ることがあり、難易度に大きく影響します。ルールブックにも書いてありますが、あらかじめ何を何枚入れるか決めて、種類毎のパーセンテージを変えるなら、それを公開しておいた方が良いと思います。
今年、新たな拡張セットの日本語版が発売されます。三部作を揃えると、大規模な砦同士の抗争が楽しめるらしいので、かなり楽しみにしています。未プレイの方は購入するか、ボードゲームカフェなんかで是非一度遊んでみてください。