世界に広がるデスメタルの輪/イラン編
「なんの音楽聞いてるの?」こんな何気ない問いかけに我々はいつも困惑する。相手がどんな音楽が好きであれ、ハードロック好きな奴であれ、デスメタルバンドを紹介するときは事情が違う。別に「デスメタルを聴いてる」と答えるのも良いんだけど、なにしろ先ずバンド名が読めない。なんかロゴとかトゲトゲだし、ヨーロッパ圏とか北米圏なら英語だからまだいいんだけど、そもそもこのバンド名が英語なのか何語なのかなんなのかよくわからないバンドだったりなんかやたらとバンド名が長いバンドだったりとにかくデスメタルバンド
を紹介するのって本当に面倒くさい。ましてや英語圏じゃないアジアとかアフリカとか南米なんかの途上国系のバンドを紹介するなんてなおさら面倒なのである。仮に「なんの音楽聞いているの?」という問いに「デスメタル」とちゃんと答えたとして、彼らは何とも言えない眼差しを我々に送ることになるのはわかっている。まれに「そういう音楽知ってる!ほら、め、め、メタリカ」ならまだ許そう。「何を歌ってるのか理解してるの?」って言ってくる輩にはExileとか槇原敬之のCDでも投げつけてやれ。もちろん歌ってることなんて全く分かる訳がない。Cannibal Coroseならまだ和訳歌詞がついてくることもあるけど、途上国系のデスメタルバンドの場合、先ず歌詞が読めればラッキーっていうレベル。それにデス系のボーカルは基本、何言ってるのかは分かりません。はい。
アジアに広がるデスメタルの輪/イラン編
ということで今回はイランのデスメタルバンドをいくつかピックアップしていきたい。イランと言えばイスラムの国である。結構古い記事だけど、2010年11月18日の読売新聞の記事によれば音楽を厳しく規制していたイランが、ロックコンサート開催の一部容認などの規制に動き出したという記事があった。この動きは国際社会のイランに対する経済制裁が続く中、国民の不満を少しでも和らげるためでもあるらしい。しかしまだイランではメタル系ミュージシャンにとっては厳しい実情がある。イランのスラッシュメタルバンド・Confessのメンバー2人が悪魔の音楽をプロモートしたとして、イスラム革命防衛隊によって逮捕拘留されたりとまだイランのメタル界には自由がないのが実情である。
Confess – I’m Your God Now (HD) Free Confess
上述で紹介した通り、イランで神を冒涜する歌詞があるとしてボーカルとDJが逮捕拘留された人たち。年齢もまだ二十代とかなり若い。サウンドはデスメタルというよりスラッシュメタルである。事件ばかりクローズアップされるけど、ざくざくしたギターリフを中心とした楽曲のクオリティもスゴくいい。しかもDJをメンバーに入れてることでかなり現代的なサウンドでかっこいいバンドです。個人的にはTriviumとか好きな人にはウケそう。
Arsames – Persepolis
初っぱなからペルシャ的なメロディで始まるところが地元愛というかご当地デスメタルとして完成されている。ボーカルはcannibal corpe直径の下水道型ボーカリストだけど、バンドとしてのサウンドはかなりスラッシュ寄り。Youtubeでは他にもCannibal CorpseのカバーをあげたりしているのでかなりCannibal Corpseの影響を受けているんだろうな。イランのバンドに影響を与えるCannibal Corpseってやっぱスゲーな。
AZOOMA-Encapsulated Delusion @ Persian Rock & Metal Fest 2013
今度もド直球のデスメタルバンドだけど若干プログレッシブな感じもする。ライブの映像だけど結構、演奏力の高いバンド。ドラムの人よくこんなシンプルなセットでこんなドラム叩けるよな。間奏のユニゾンフレーズの完成度が高すぎるのがヤバい。
KABUS – Nightmare
どことなく中期Carcassからの影響がありそうなバンド。途中でクリーンボイスが入ったり今回紹介するバンドのなかではかなりメロディアスよりのバンド。ギターソロのセンスもかなりいい。ただミュージックビデオで使っているアンプが自宅練習用アンプみたいな小さいやつでなんか面白い。
ArthimotH – Baptize
今度はブラストビート爆裂のブルータル系デスメタル。しかしただ爆裂するだけの楽曲じゃなくしっかりとブレイクダウンのパートや聞かせるパートなどを楽曲の中に構成しているあたりこのバンドはただものじゃない。
おわりに
イランのデスメタルバンドをいくつか紹介したがどうだろうか?何?みんな同じように聞こえる?うるせぇ、ファンキーモンキーベイビーズのCD投げつけんぞ。現在、ペルシャ圏ではPersianRock&MetalFestivalっていうメタルフェスティバルが開催されている。このフェスはイランのMaster of persiaっていう人たちが主催しているんだけど、イランでは弾圧されてしまうのでアルメニアだったり、トルコなどで毎年開催されている。このフェスのおかげでペルシャ圏でのデスメタルだけではなくべヴィメタルバンド全体が活気付いている。今、ペルシャ圏はメタル界、注目の土地でもある。メタル界のアゼルバイジャンみたいな感じである。しかしこのフェスをイランで開催できないイランの映画、音楽などの芸術活動にに厳しい圧力がある政治的背景も無視できない実情もある。そんなイランのデスメタラーたちは命を懸けて音楽をやっているのである。
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