シネマフィリアvol.17いろいろツッコミどころはあるけど笑って許して『海底47m』

文:田渕竜也


いまやクソ映画の代名詞として君臨するサメ映画たち。

サメ映画には三つのパターンに分けられる。一つ目が名作『JAWS』を始めとする観光資源に対する「自然災害もの」。これ系のサメ映画が一番クソ映画率が高い。『Jaws』の場合、スティーブン・スピルバーグというハリウッド映画の大天才の匠なカメラワークで名作にすることができたんだけど、それ以外の「自然災害もの」のサメ映画の場合は大体どの作品でもカメラワークがへたくそなのでそもそもサメの姿がほとんど見えなかったり、いきなりサメがどーんで人をパクーっていうただただ退屈なクソ映画をつかまされることになったりする。

二つ目に上がるのがこれも名作、サミュエル・J・ジャクソンが一口で食われてしまう、「怪物もの」の『ディープ・ブルー』。もうこれ系の映画はもはやB級映画っていう開き直りがあってまだ見れる作品が多少ある。例えば『シャークネードシリーズ』だったり『メガシャークシリーズ』だったり。

「自然災害もの」でも「怪物もの」でも基本、サメ映画はクソなのでたこ焼きキャラメルとジンギスカンキャラメルと同じぐらいのレベルだけど。『フライング・ジョーズ』なんてどうだろう?まぁ本題から随分ずれたので、『フライングジョーズ』についてはまたいつか書いてみよう。

最後に三つ目のパターンが最近、人気がじわじわと熱を帯びている「密室脱出もの」である。有名なフリーゲームに『青鬼』ってあるじゃないですか?まさにあれ。代表的なサメ映画をあげると『ロスト・バケーション』なんてその部類に入る。セリフの一つ一つがフラグでその場のアイテムを駆使してその場から脱出する。まぁどの系統の作品にせよ、くそみたいな作品に出会って仕舞えば一時間半ある映画がまるで三時間に感じる精神と時の部屋みたいな感じになる。それがクソ映画だ。今回取り上げる『海底47m』はその中でも「密室脱出もの」に当てはまる。サメがもはや青鬼状態。言ってしまえば、このサメが別にサメじゃなくてただの変質者のおっさんでもいいし、別に海じゃなくても洋館でもなんでも密室が完成される舞台だったら別になんでもいい。それが「密室脱出もの」である。ただ個人的な評価としては結構面白い部類に入る。

大雑把なあらすじ

『海底47m』のあらすじを手短に説明するとリサとケイトという姉妹が海の綺麗なメキシコで休暇を過ごしていたら、現地のパーティピーポーな男たちを知り合い、海に沈めた檻でサメをウォッチングするいかにも死亡フラグなアクティビティに誘われる。そこで死亡フラグビンビンに立ちまくりの志々雄さんの煉獄ぐらいオンボロ船でサメウォッチングしに鉄格子のケージに入ってウォッチングしていたらフラグ通り事故って鉄格子は海底へ沈んで行ってそこからどうやって生還するか?っていうのが大体のあらすじ。

あらすじを見るとサメがメインに見えるけど、この映画の本当のメインは海底47mという極限の状態で上へ行けばサメの餌、ケージから出てもサメの餌になる中、どんどんと減っていく「酸素残量」がメインである。海底であれこれしているうちにどんどんと酸素が減っていき死が近づいてくる。ジッとしていても死が近づいてくる。

海底では無線が通じないが、なんとかケージから出て海底から何mか上へ行くと海上の船と無線で連絡をとることもできるのだが、そこで一気に海面に出ようとしても「減圧症」という脳にある窒素が気泡となって血管を塞ぐことによって障害が起きること最悪の場合、死に至ることも言われるのでもう助かるのは無理ゲー状態である。

結局、檻でジッとしておくのが全員生還ルートだった説

この話で一番だめだったのって、無線の連絡通りにケージの中で待機しなかったことだよね。あんなに移動するから酸素の残量が減る訳で、ネタバレにはなるけどケージで大人しく待っていたら妹のケイトとハヴィエルっていう海上の船から救助に向かった男の人は死なずに済んだのに。まぁ妹のケイトに至っては話始まって数秒で「あっ、こいつ死ぬわ」っていうぐらい死兆星が出てたけど。それよりもハヴィエルが生身であのサメがうようよいる海の中をどうやって海底まで来たのかは気になる。まぁ案の定、彼の役割はサメの餌になっただけだけど。

映画の中盤で、海底のケージに海上の船から降ろされたワイヤーを繋げて上へ上げようとするのだけど、そのワイヤーがあまりにも細すぎる。あんなの蜘蛛の糸じゃねぇか。助ける気あんのか。

最後の方は酸素残量がゼロにはなるけど、海上の船から酸素ボンベを海底に送ってなんとか酸素の残量は大丈夫になるけど、それができるなら始めっからそうしといてよ。んで最後のどんでん返しは窒素酔いっていう形で幻覚を見ながら救助隊の人たちに救助されて、幕を閉じるんだけど。やっぱりケージの中で大人しくしておくべきだったじゃねぇか。

サメの描写もヒット・アンド・アウェーな一回噛んだあとに失血しを待って餌になるものの周りをぐるぐる回る描写はそこそこリアルなサメ感があったけど、そのシーン以外は一口でパクーなサメだったよ。まぁバケモンみたいなサメよりかは海にいるそこそこリアルな大きさのサメというのが割と怖さがあってよかったけどね。

まぁいろいろツッコミどころはあるけど面白い映画だよ

総評としては登場人物の一言一言、海に入るときのアイテムの説明がイベントフラグと生還フラグが露骨すぎるぐらい親切脚本なので、物語の先の展開が脳みそ蟹味噌状態でも予測しやすい。「なんで主人公同士は海底であんなに喋れるんだ」とか「ていうか主人公たちの耳、何も保護されてなくね」とか「あんなに急激に海底47mまで落ちたら耳やばくね?水圧で体やばくね?」とかはあまり細かいところはツッコまずに見ることをオススメする。あと序盤でチャラチャラしているやつらは主人公だろうがサメ映画では死ぬ。

田渕竜也のTwitter

ついったウィジェットエリア