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ドンキホーテのBGMにみるヒット曲の法則

文:田渕竜也

売れ線って何だ?

「売れるバンドは売れ線だから売れてる」、「あぁ、こういう売れ線の曲ね」って感じでこんなことを言ってるバンドマンや自称音楽通は結構いるのではないだろうか?そういうやつには「じゃあ、売れる曲作ってみろよ」って言ってあげたらいい。売れないバンドマンたちは大抵、この一言で一撃で仕留められる。しかしだ、ずっとスタジオ練習ばかりで 酔っ払いだらけのライブハウスでライブをしてたいした反応もなくノルマばかり払っていたらそういうやっかみを言いたくなるのも確かにわかる。対バン相手が明らかに売れもしてないのにポップな曲でそこそこ顔面偏差値のあるボーカルを立てていてそういう枠を狙っているバンドをみると自然と中指を突き立てたくなる。
「俺だって、デスコアじゃなくて顔面偏差値が欅坂以上のアイドルみたいな女性フロントマンでポップなバンドだった今頃俺は…」なんて思っている人だって少なからずいるのではないだろうか?だが少し待ってほしい。売れないのはデスコアのせいか?どうせデスコアという看板を下げてポップな曲を作ってもヒットなんてするわけないなんてやってる本人が一番わかっているはず。じゃあ「売れ線」って何だ?ヒットする曲はポップでキャッチーなら何でもヒットするのか?そもそもキャッチーって何だろか?まぁこの三つのうちの一つ、「キャッチー」というものについて考えてみたい。

ドンキホーテの店内BGMが耳から離れない

ここで売れ線の曲を考えるに当たって重要なキーワードである「キャッチー」という言葉で思い出すのがドンキホーテの店内BGMの音楽だ。そうあのジャージ姿のDQN、風俗の人、売れないキャバの人、エグザイルみたいなアウトローファッションの人たちにおなじみの「ドンドンドン、ドーンキー…♪」のあの曲だ。

ドンキホーテに行くとなぜかこの曲のサビがずっと頭から離れなくなってしまう人も少なからずいるのではないだろうか。そして店内で楽しくなってついわけのわからない商品を買ってしまったりしたり…。深夜にドンキホーテに行くと客の生活レベルがさらに二段下がってるよね。ちなみにドンキホーテの焼き芋はコスパ最強ですよ。金のない、売れないバンドマンにオススメです。それにしてもなぜドンキホーテのあの曲を聞くと楽しくなるのだろうか?なぜあんなに「キャッチー」とあの曲を思うのだろうか?そこにヒット曲の法則がある。

答えは「問いかけ、問いかけ、答え」という「緊張と緩和」の数式

ドンキホーテの店内BGMのメインのサビの歌詞フレーズはこうだ「ドンドンドン、ドーンキー、ドンキーホーテー」。これを三三七拍子のリズムで手を叩いてみるこの曲のキャッチーな理由がわかるはずだ。そうピッタリ三三七拍子のリズムに当てはまるのである。この三三七拍子は三三七拍子とはいうものの厳密には四拍子である。リズムを表すとこうだ

この休符の間を設けることで歌詞に対して聞き耳をたてることができる。「ドンドンドン」で「何だ?」と思わせてさらに「ドーンキー」でさらに「何だ?」って思わせて「ドンキーホーテー」で答えを出して聞き耳に安心感を与える。
さらにヒット曲で「問いかけ、問いかけ、答え」を分析してみると槇原敬之の大ヒット曲「どんなときも」の場合。サビを手拍子で叩いてみるといい。

するとこれも三三七拍子のリズムであることに気づくはずだ。歌詞の方では「どんなときも」で「何や?」、さらに「どんなときも」で「だから何や?」ってという問いかけをした後に「僕が僕であるために」で「なるほど」と納得させる。これがこの曲のサビの部分のキャッチーさの正体だ。
さらに、サザンオールスターズの「TSUNAMI」」のサビも全く同じである。三三七拍子のリズムで「見つめ合うと」という歌詞で「何や?」と問い、「素直に」という歌詞で「それで?」と問わせ「おしゃべりできない」という歌詞で「なるほど」と納得させる。これも「問いかけ、問いかけ、答え」の緊張と緩和の法則である。
松平健のカオスソング、「マツケンサンバⅡ」でもサビの部分は「踊れボンゴ、響けサンバ、踊れ南のカルナバル」と「問いかけ、問いかけ、答え」と全く構造は同じなのである。

それにしてもマツケンサンバの狂い方はとんでもない。キングクリムゾンぐらいの長い長すぎるイントロの後にいきなり黄金姿の松平健がダッシュで登場するのだからもう構成が狂ってる。狂気にしか見えない。しかししっかりとヒット曲の法則は掴んでいるのである。
しかしここで留意点がある。曲の全てで歌詞にこの法則を使うのではなくサビの第一フレーズに持ってくることが重要である。でないとこの「緊張と緩和」に聞いている人は疲れて聞き耳を立てることやめるからである。なのでサビに入る第一フレーズに聞き耳を作る効果としてこの法則を使うのが重要なのである。

おわりに

三三七拍子だとなおよしだけど、三三七拍子じゃなくてもこの「問いかけ、問いかけ、答え」という「緊張と緩和」だけでもこのドンキホーテのような効果を作ることはできる。例えばSMAPの「世界に一つだけの花」なんかは三三七拍子のリズムではないけど、「問いかけ、問いかけ、答え」という形にはなっている。この「ほんで?ほんでほんで?ほほー」と納得させる「緊張と緩和」こそが日本ポップス音楽におけるキャッチさーというものの正体だ。海外の「キャッチーさ」というものの正体はまた異なってくるので、ここでは日本ポップス音楽に限定しておく。

売れようとしているバンドは腐るほどいてる。売れようとするのは猿でもできる。まぁチンパンジーのパンくんなんていたし。恐らく、普段、ミュージックステーションなんかに出てくるバンドに対して「売れ線バンドめ!」ってやっかみを言ったところでミュージックステーションに出ている売れ線バンドの彼らは売れ線バンドをやろうとしている末端のバンドマンよりも数百万倍売れ線バンドとして努力はしている。だからこそ売れ線は厳しい。なのでまぁ自分たちにできる好きな音楽をやりなさいってこった。まぁどこにチャンスが落ちているかわからない訳だし。

それではあばよ。

田渕竜也のTwitter

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