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世界に広がるデスメタルの輪/コロンビア編

文:田渕竜也

青春とは一体

「青春」と聞くと、なにか思い起こせば枕に顔を埋めたくなるような所謂「黒歴史」を思い浮かべるが、かの有名なフランスの喜劇作家であるジョルジュ・クルトリーヌは「青春期を何もしないで過ごすよりは、青春期を浪費する方がましである」となにか衝動的に行動することこそ青臭くて、何もしないただぼーっとシコって過ごすよりマシだといっている。学祭のライブでDream theaterのMetropolice part1をやろうとしてぐだぐだに失敗したり、バンドを組んでも気づけばボーカルの女とギターの男が付き合って別れて面倒なラブワゴン状態になったり、ベースでスラップしすぎて怒られたり、急にラップをやりだしたりと青春という時代には黒歴史を作ってなんぼなのである。その黒歴史の末にデスメタルバンドなんかをやりだした人なんかもいるのではないだろうか?さらに黒歴史で言うと着うたをSLIPKNOTのEYELESSにして大音量で学校の教室で垂れ流していたなんてのもヤバイですね。厨二病の典型例で、邪王炎殺黒龍波、邪眼と同じ部類です。
好きなものは大体、青春の時期に決まってくる。青春期にメタルコアが好きだった人は三十台になっても聞いてるし、そういうバンドを追っかけている。十代の頃にSUM41、Linkin’ ParkにLimp bizkitそしてMy chemical romanceなどを聞いていた人は未だにそれらを聞いている。結局何が言いたいかといえば無駄に過ごした青春時代であっても、その後の嗜好にかなり影響するということだ。そして青春期に当サイトを見て世界のデスメタルと普段知らない国に少しでも興味を持っていただければ幸いである。

今回、取り上げるのは南米:コロンビアのデスメタルバンド

コロンビアといえばつい10年ほど前まで激しい内戦状態にあって、電波少年の南米ヒッチハイクの旅でもコロンビアは迂回するぐらい世界でもっとも危険な国とも言われていた。コロンビアの内戦の引き金は1964年当時の旧ソ連の影響を受けて結成されたFARC(コロンビア革命軍)と呼ばれる反政府組織が社会主義政府樹立を目指して活動したことから始まった。主な収入は麻薬取引でコカインの原料となるコカ栽培地やコカイン精製工場さらに密輸ルートを保護することで多額の軍資金を獲得していった。その結果、コロンビアは今日に至るまでコロンビアといえば麻薬カルテルとか麻薬王国なんて印象のある国になったのであった。しかし2016年、コロンビア政府とFARCとの和平交渉は最終合意し、52年に及ぶ内戦は一応は決着はついた。現在では殺人件数は半減し、テロも誘拐も減少している。しかし現在でも麻薬に関わる犯罪は多発している。山間部ではコカやケシなどの麻薬が栽培されており,麻薬取引を巡る抗争や,政府による麻薬を根絶する政策に反対するデモも発生していて、政府とFARCの和平合意後、FARCの離反兵が拡散、またELNがFARCの勢力が弱まった地域を支配下に置くなど、情勢は複雑化している。

それではそんなコロンビアのデスメタルバンドをいくつかピックアップしていく。

Amputated Genitals – Garavito Attacks Again


初っ端のグロウルボイスがもうなんか吐き出しそうなぐらいエグい。下水道というよりゲロボイスだ。ゴア系ブルデスなんだけどテクニックで魅せるバンドというより音楽の残虐性がとにかく強い。
メロディもヘッタクレもねぇとにかくドラムはスネアとバスドラが穴が空きそうなぐらい叩きまくって、ギターもリフを引き倒して、ボーカルは叫んで暴れる。
めっちゃコロンビアらしいバンドといえばらしいな。青春モテ成分は皆無に等しい。

MINDLY ROTTEN -Outside Forces


テクニック系ブルータルデスメタルなバンド。よくこんなに引き倒して歌えるな。しかもスリーピースバンド。
ブルータルでテクニカルなフレーズが続く中、ソロになるとメチャクチャメロディックになるところがもう上手すぎる。しかもそのあと超絶的なフレーズがこれでもかって言うぐらいに次々と登場していく。
何気にベースもスラップを織り交ぜたりと超絶。PVのチェーンソー振り回す女の子がなんか面白い。こちらも青春モテ成分は皆無である。

Grotesque Atrocity – Grotesque


一体、このPVの出だしの女性は何もの何だ?何かに追われてるみたいだけど。最後埋められてるし。めっちゃカオスなPVである。エメラルドソードを持ちながら歌うバンドは知っているけど、このバンドのボーカルの人、なんかナタを持って歌ってる。初めて見たよナタを持ちながらヘドバンしながら歌うボーカリストなんて。いろんな意味でナタというチョイスはコロンビアらしいな。
あっ、音楽の方はブルータルデスメタルです。

Kilcrops – Falsos Positivos


今までのバンドに比べて、スラッシュメタルよりのバンドです。
ボーカルもメタルコア的でブルータルで下水道ボイスなバンドよりも聞きやすいし、演奏力もかなり高い。やっぱりラテン系って打楽器の存在感が強いな。
あとメンバーの何人かは女性らいしいです。このバンドはめっちゃおすすめです。

NO RAZA – Lloverá Sangre en el Barro


ボーカルはブルータルなスタイルだけど音楽面は割とメロディックなリフとメロディックなソロなのでメロデスちっくなブルータルデスって感じです。
それにしっかりとしたミックスをしているのですごく聴きやすくいいバンドです。しかしみんな服がロッカーすぎるのがなんか面白い。

まとめ

いかがだったでしょうか?麻薬に誘拐、殺人、そんなイメージが今でも残るコロンビア。そんな社会情勢のせいか、コロンビアではブルータル系のデスメタルバンドが多いと言うのが印象的だ。しかもグロウルボイスがもはやグロテスクなくらいにきついバンド多いのも特徴的。現在、和平への道を歩み始めたコロンビア。今では麻薬、誘拐、殺人と言うよりコロンビアといえばハメス・ロドリゲスとファルカオと言うサッカーの国と言うイメージを持つ人も増えてきたのではないだろうか?しかし、このまま平和が訪れるかどうか予断はできない。和平が定着するのか、それとも、再び内戦の混乱に戻るのか、コロンビアは今、重大な岐路に立っている。

コロンビアの麻薬社会についてしたい方にはMaria Full of Grace(そして、ひと粒のひかり)がオススメ


田渕竜也のTwitter

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