様々なバイアスを知ろう

文:なかむら ひろし

 皆さんは『バイアス』という言葉をご存知だろうか?賢明な皆さんなら勿論ご存知のことだとは思うが、知らないという未開人にも優しく教えてあげるのが親切で有名な『てんぷら』である。まぁ、そんな意見も感想も聞いたことはない。

 『バイアス』というのは「偏り」という意味なのだが、この言葉は主に心理学なんかで使われることが多い。その場合、「先入観」や「偏見」というニュアンスを含む。日本語では「バイアスがかかっている」なんていう感じで使われる。

 人間なら誰しもこの『バイアス』っていうものと常に隣り合わせだと思ってもらっていい。頭の良し悪しっていうのも基本的に関係ない。自分は頭が良いからバイアスにかからず、正常な判断を下せていると思っている人ほど危ない。大抵はバイアスにかかっていることに気が付いていない可哀想な人だ。

 ここでひとつ簡単なテストをしてみよう。

 「ある男性がいます。年齢は42歳。既婚者で子供もいます。彼は子供の頃から頭が良く、高校を卒業すると京都大学に入学し、法律の勉強をしました。給料も同世代の一般的なサラリーマンの平均より多く貰っています。彼と一緒に仕事をしたことがある人のほとんどが口を揃えて「彼は本当に頭の良い人だ」と評しています。そこで問題です。彼の職業は何でしょうか?」

 ピンと来ている方もいるかもしれないが、直感的に頭に浮かんだ職業を答えて欲しい。頭が良くて、法律を勉強をしていた。妻子がいて、年収も高く、尊敬されている。きっと弁護士や検察官、裁判官といった法律に携わる仕事、そうじゃなくてもお堅い仕事を想像したと思う。

 正解を言っちゃうと『お笑い芸人』なんだよね。この男性っていうのはロザンの宇治原さん。クイズ番組によく出てる人。あんまりテレビなんか見ないっていう方は「誰やねん!」という反応をしてそうだが、別にそこは重要じゃない。お堅い仕事を想像したという方は「しっかりバイアスに陥っていますよ」という話。

 「普通はそう思うだろ!」って思った貴方。それが落とし穴っつうわけ。穴があるのはドーナツや女だけじゃない。穴のないドーナツもあるし、男にだって穴はあるんだよ。
 ただ、安心して欲しい。バイアスに陥ってしまうのは人間なら仕方がないことだ。さっきも言ったが、重要なのは「それを知っておく」ということだ。世の中には様々なバイアスが存在し、それを知っていくことで同じ失敗をしなければ良いというだけ。

 バイアスには今やったような「先入観」に起因するもの以外にも「自分の正当性を担保するために都合の良い情報だけを集めたり、都合の良い解釈をしてしまう」という類いのバイアスもある。これに気を付けていないといつも自分が正しい、マジョリティだと勘違いしてしまうんだよね。所謂『ネット右翼』とか呼ばれる人たちがこれ。

 他にもバイアスの一種で『ハロー効果』っていうものがある。何かひとつでも突出したものがあると総合的に優れていると感じてしまうというもの。外国語がペラペラの帰国子女が賢く見えたり、球が速いだけで良いピッチャーに見えたりするのがこれ。
 義務教育では何事も平均点を求められるが、短所を補って器用貧乏になるくらいなら長所を徹底的に伸ばした方が他者からの印象も良くなって、本当はハッピーなんだよね。『ゆとり教育』っていうと、あんまり良い印象はないと思うけど、発想自体はあながち間違いではなかったわけ。
 また、この『ハロー効果』っていうのは、パッと見で分かりやすければ分かりやすいほど効果が強い。逆にその場ですぐに確認できないような分かりにくいものだとほとんど効果がない。その点、美男美女なんかは分かりやすいよね。「全く知らないけど、何かできそう」って感じたことない?同性から妬まれやすいというデメリットを差し引いてもやっぱりメリットの方が大きい。大企業の採用面接を受けたことがある方なら少なからず共感してもらえると思うけど、見た目なんて関係ないような職種でも面接を重ねていく内に見た目がパッとしない人ほど早い段階で消えていくんだよね。

 話が少し逸れてしまいそうなので、まとめに入る。この世の中に溢れるバイアスを知り、自分が陥らないように注意したり、逆にそれを利用することが自己実現に向けて役に立つと思う。大多数が当たり前だと思い込んでいることを見つめ直し、その逆をやることってビジネスなんかでは特に重要だったりする。具体的な方法は各自で考えてくれ。

 最後に注意して欲しいのが、バイアスっていうのは他者にだけじゃなく、自分自身にかかることもある。過大評価してみたり過小評価してみたり。まずは自分自身としっかり向き合うことから始めてみよう。

なかむら ひろしのTwitter

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