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シンガー・和田アキ子

文:田渕竜也

日曜日、昼ごろにテレビをつけてみると和田アキ子が映っていた。そうテレビに流れていたのは『アッコにおまかせ』だった。なんか芸能ワイドショーネタと時々問題ネタ、変なクイズみたいなゲームをして和田アキ子と出演者たちが遊んでいた。何が面白いんだこの番組。この番組を真面目に見ている視聴者はいるのか?いや少なくとも私の周りには毎週『アッコにおまかせ!』毎週欠かさず見ているって言う人は生まれてこのかた人っ子一人もいない。少なくとも大阪ではそうだ。

和田アキ子。通称・アッコ姉さん。最近ではレギュラー番組が減ってきたということもあってか、まともに和田アキ子を観れるのは『アッコにおまかせ!』ぐらいになっている。だから久しぶりにテレビで和田アキ子をみると「あれ、こんな人だったっけ?」って変な錯覚に落ちいてしまった。だけどそれでも芸能界のご意見番としての地位はいまだに揺らぎないものになっている。大した功績がなくても一度、その地位につけば中々崩れない。UKロック界で言えばノエル・ギャラガーみたいなもんだろう。彼も今では元オアシスの人だけど大したヒットソングがなくてもご意見番の地位にいるから中々崩れない。

そんな芸能界のご意見番としての露出が強かったせいか、嫌われている芸能人ランキングには現在でも必ずと言っていいほど、上位に和田アキ子はランクインしていている。世間での和田アキ子の評判はすこぶる悪い。まぁ少なくとも芸能人としての和田アキ子のファンって一人も聞いたことない。よいしょしているのは自分の番組に出演しているファミリーだけだしね。
ところで和田アキ子の本職は何かご存知でしょうか?賢明な人なら知っているかと思いますが「シンガー」です。
ご意見番としては嫌われているけど「シンガー」としての和田アキ子はリスペクトしているミュージシャンは結構いる。シンガーとしての「和田アキ子」という名前で真っ先に思いうかぶのは「和製リズム&ブルースの女王」である。グループサウンズや歌謡曲、演歌が全盛の時代にブラックミュージックであるR&Bと歌謡曲が融合したような音楽でそこそこのヒットをとばしたのは偉大な功績であると思う。
そんな和田アキ子は「かつてはシンガーだった」のイメージも強いけど、今でもかっこいい曲を歌っていたりします。まぁワイドショーや『アッコにおまかせ!』のイメージで嫌われて終わらすには非常に勿体無いある意味すごく過小評価されているシンガーなのである。

あの鐘を鳴らすのはあなた

和田アキ子といえばこの曲と言っても過言ではないぐらいの日本歌謡界においても超名盤と言っていいだろう。この曲のベースラインに注目してもらいたい。「ルート→5th→6th→ルート」って言う典型的な「モータウンサウンド」のコード進行である。モータウンって何かと言うとまぁYoutubeでマーヴィン・ゲイの曲でも聞いておくれ。サビのベースラインは2拍目に休符を意識した演奏ですごくグルーヴィだ。他にもストリングスやブラスト細かく言うともうキリがないけど、とにかくアメリカの70年代R&Bの代表的ジャンルであったモータウンを意識して作られたこの曲はとにかく偉大なのである。

古い日記

この曲も代表曲である。「あの鐘を鳴らすのはあなた」がモータウンなら「古い日記」はJames Brown直系ファンクサウンドの要である「THE One」の理論と歌謡曲が融合した曲である。
「The ONE」とは何か?この一拍目をとにかく強く演奏することである。ジェームズ・ブラウンはこれをバンドメンバーに徹底させることで自身のバンドに独特なファンクサウンドが生まれた。この「古い日記」の出だしのサビは一拍目を強く意識したリフとワンコードであるところをみるとかなりジェームズ・ブラウンのファンクサウンドを意識している。「ハッ」とシャウトしているのもジェームズ・ブラウンの影響が大きいのだろう。

真夏の夜の23時

スピード感のあるブラスサウンドはまるでチェイスの『黒い炎』のようなブラスロックサウンドである。ベースが鬼のようなフレーズを弾きまくっていると思えば、作曲者はピチカート・ファイブの小西康陽である。だけどピチカート・ファイブの野宮真貴とは全く正反対のボーカルスタイルである。

REACH OUT

作曲者はUAの『情熱』、『甘い罠』やYellow Monkeyの『バラ色の日々』などを製作した朝本浩文氏である。とにかくおしゃれだ。インコグニートのようなアシッドジャズとか90年代のジャズファンクやクラブサウンド、ヒップホップを吸収したUKバンドとかその辺っぽい楽曲ですごくかっこいいいんだけど、この辺りの和田アキ子の楽曲はあまり知られていない。ただのご意見番として偉そうにしているっだけではなくちゃんとこうやって当時のカッコイイサウンドを取り入れたり、カッコイイ曲を作れる作曲者を起用したり、採用したりする和田アキ子はもっと評価されてもいいと思います。

SNAKE EATER

メタルギアソリッド3の早期予約特典についてきたサウンドトラックに入っている曲。めっちゃ心に染み渡りそうなジャズファンクなR&Bの歌曲。メタルギアソリッドシリーズの小島監督曰く60年代スパイ映画を意識したと言う。当時はなぜ和田アキ子と思ったけど、いやこのファンキーな曲を日本語バージョンで歌える人なんて和田アキ子ぐらいしか思いつかない。まぁ小柳ゆきが歌っているバージョンもあるけどやっぱりアッコ姉さん版がいいよな。

どうだろうか?シンガーとしての和田アキ子を少しでも知っていただけただろうか?和田アキ子すごいところは完全な黒人の真似をするのではなくしっかりと「歌謡曲」のフォーマットに落とし込んでいた点だ。だけどそれ故、洋楽カヴァーをすると英語の発音が酷いのでダメな弱点もあるけどね。あともう一言言わせてもらうと紅白にこだわっていたけど個人的には紅白で歌う曲のアレンジは非常にダサいと思います。原曲のままで歌ったほうがカッコよくていいと思うんだけどな。

それでは今回はシンガーとしての和田アキ子特集でした。

田渕竜也のTwitter

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