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姫セン兄さん・伊藤えん魔

文:田渕竜也

関西のテーマパークと宣伝
テーマパークと聞いて何を思い浮かべるだろうか?関西では間違いなく「ひらパー兄さん」の愛称でV6の岡田准一がイメージキャラクターをつとめる枚方パークという大阪のテーマパーク伝がUSJよりも先に思い浮かぶ。黒く塗りつぶして景色を見えなくした観覧車や清涼剤を塗ってジェットコースターに乗るスースーライドなどとにかくこの枚方パークのやる宣伝のやり方はぶっ飛んでいる。しかもこれら施設投資金額をほとんどかけず、CMの「ひらパー兄さん」というキャッチコピーと宣伝だけで現在も集客を伸ばしている。こんな荒技をやってのける地方のテーマパークなんて僕は枚方パーク以外を知らない。とにかく宣伝がすごい。別に他の関西のテーマパークの宣伝が下手な訳ではない。むしろ関西のテーマパークの宣伝は本当にうまい。だけどどのテーマパークも地域の過疎化や少子化によってどんどん入場者数は減っていっている。そんな関西のテーマパークの中で姫路セントラルパークこと姫センというテーマパークをご存知だろうか?

姫路セントラルパークとは兵庫県姫路市にあるサファリパーク形式の動物園と遊園地が融合したテーマパークで夏はプール、冬はスケートが行われている。関西では夏になると姫路セントラルパークのプールのCMが流れ始める。ちなみに姫路は大阪よりも岡山の方が近いので若干、関西弁が違っていて、大阪に比べてきつめの言い方になる。これマメな。

先日、何気なくテレビを見ていると姫路セントラルパークのCMが流れていた。そのCMに登場する大柄な男性がもうテーマパークのCMに全く合ってない巨漢の男性が出ていた。目はギョロりとして、体格のデカイ、低い声、全然爽やかじゃない。言うなればスタジオジブリ作品の『猫の恩返し』にいきなり超人ハルクが飛び込んで登場してくるぐらいに合ってない。そのCMはまさに衝撃的だった。そのテーマパークに合ってない巨漢の男性こそ今回ご紹介する「姫セン兄さん」こと伊藤えん魔さんである。なぜ「姫セン」に伊藤えん魔なんだ。

姫路セントラルパーク(姫セン)2018年春 Web動画

伊藤えん魔という「姫セン兄さん」
伊藤えん魔といえば知っている人ならすぐに出てくると思われるけど怪談師だ。目の下に黒いコープスペイントをした姿で低い声で語る怪談が有名である。見た目も巨漢で強面で、まるでアジア系になったアメリカ人ラッパーのノトーリアスB.I.Gみたいな雰囲気があると思うのは多分僕だけだろうと思う。だけどこの人の本業は演劇だ。大阪でハードボイルドとギャグの融合を打ち出しているファントマという劇団を率いていて、朝ドラの『マッサン』にも出演したことのある歴とした俳優である。

伊藤えん魔:爆笑芸「ハードボイルド寄席 時うどん」

低い声が特徴的ということもあってCMでナレーションをこなすことも多くやっていたりする。恐らく一番有名なのはノーベル製菓ののど黒飴のとどくろちゃんの声だろうか。なんとなくわかる人もいるかもしれないけど、誰も気がつかないよな。

あまり世間では知られていないけど、何気にテレビに舞台、CMそしてナレーションと活躍している伊藤えん魔だけどやっぱり伊藤えん魔は怪談である。怪談師としての特徴はナレーターとしても活躍しているのもあって声のボリュームと音程が絶妙に耳に馴染みやすいのでとにかく話が聞き取りやすい。風邪の時のポカリスウェットぐらいにすっと話が耳に入ってくる。少し稲川淳二と比べて見てください。圧倒的に伊藤えん魔の方が聞き取りやすいです。稲川淳二は500mmのストロングゼロのビターレモン二缶目見たいもんだね。全然、話がすっと入ってこない。まぁそこが面白いんだけどね。

それから話の流れと話の視点が今、どの人の視点で何を見ているのかがわかりやすいので話を理解しやすい。

だけど話の流れがクリアでスッと耳に馴染みやすいことで、話のインパクトが少し弱いというのも欠点もある。びっくりポイントもとにかく聞きやすくて耳に優しい。驚きというよりそのびっくりポイントをスーッとムーディ勝山のように通り過ぎて行くような感じ。なので話の印象が薄いという弱点があると僕個人として思うところなんだけどね。それではいくつか伊藤えん魔の怪談をご紹介する。

サイパンロケ

結構、サイパン島での怪談話を持っている芸能人っていますよね。やっぱりリゾート観光地としても有名なサイパンだけど太平洋戦争中はアメリカ軍と日本軍の両者で激しい戦闘があった場所だったわけだし。まぁその辺りの詳しいことは映画『ウインドトーカーズ』でも見てくおくれ。ニコラス・ケイジが主演ということでめっちゃ絵面が地味で変な日本語が聞ける映画なんだけどやっぱりそこは監督ジョン・ウーである。戦闘シーンはすごいから。
で、この怪談は多くの日本人が追い詰められて飛び降りたバンザイクリフの近くのホテルでの話だ。ちなみにバンザイクリフでは夏になるとダイビングができるらしいですよ。

びたびたびた

琵琶湖といえばワンワン王国である。かつて存在していた滋賀県にあった犬のテーマパークだ。そこには「びわ公」という大きな木製の犬のオブジェがランドマークになっていたんだけど、そこに一度行ったことがある。もう潰れかけの頃だったので、ワンワン王国にいた犬たちはなんか妙に汚くて臭いのキツい気力のない犬しかいなくてガッカリした記憶がある。
まぁ潰れた後の犬たちはつくばのワンワン王国へ行ったそうなのでそこはよかった。そして琵琶湖ワンワン王国があった土地は今はピエリ守山というショッピング施設として運営されている。ほぼこの怪談話とは関係なかったね。まぁいいか。

スライド

心霊写真って急激に減りましたよね。スマホで撮った画像って画質が綺麗すぎるじゃないですか。画像が綺麗すぎるがゆえに、画像というデータそのものに怖さを演出できないという致命的な欠点があるんじゃないかと僕個人的には思っている。基本的に昔のポラロイド写真とか白黒写真に風俗雑誌みたいに黒いバーで目線を隠したら、幽霊云々抜いても大体の写真が怖い雰囲気になる。やっぱり雰囲気って大事。そして今の主流は心霊動画である。画像のように登場人物が止まっているのではなく、登場人物が動くのでいくらでも怖さを演出ができる。これから先、TikTokでも心霊TikTokとかも流行ってきそう。

終わりに
以上、これが「姫セン兄さん」こと伊藤えん魔である。まぁ「怪談話を聞きたいけどYoutubeで探してもいっぱいいすぎて誰を聞いたら良いのか?」って悩んでいる人はいるかどうかはわかりませんが、話の聞き取りやすさ、話の流れと視点がわかりやすいということもあって怪談話初心者にはすごくおすすめな怪談師です。ギターでいう所のフェンダーJAPANのストラトみたいな感じですね。

田渕竜也のTwitter

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