お坊さん+怪談+体験談=最強怪談。三木住職
事実談最強説
どんな話でも事実や実体験談にはかなわない。
男女の交際の話、ブラック企業の体験談、地元の話…。その実体験した話が現実離れした話であればあるほどその実体験の話は面白い。人から聞いた話、作った話、妄想なんかよりもはるかに話のパワーは強い。だから壮絶な人生を歩んだスナックのママの話は面白い。うっかり話を聞いていると人生の話で何時間も潰してしまう沼になってしまう。まぁちょっとした人生哲学だ。
怪談師も似たようなものである。実体験が現実離れしていればいるほど、その話は面白くなる。しかもその怪談師がちゃんと宗派のわかる”住職”であればなお説得力があって面白い。話に説得力があるかないかでは話のクオリティーは随分と変わってくる。例えばその辺のホストが話す心霊スポットへ行った話と仏教の教えを基にした住職の怪談話を比べれば、地デジのテレビと8Kテレビぐらいのクオリティーが違う。
様々な業種が行き交う怪談師業界。そんな中で職業が住職という仏教界から怪談に殴り込みに来たのが三木大雲さんである。
恐らく、いま活動している怪談師の中ではトップクラスの実力者である。ワンピースでいうと四皇クラスの実力者と言っても過言ではないほど、怪談の賞レースでは総ナメしている人物である。
怪談師:三木大雲
通称「三木住職」と呼ばれる怪談師の怪談ジャンルはすごい伏線を張った話でも「グワっ」って脅かすような話ではない。怪談から何か学んでもらいたいというその怪談はむしろ現場で実況中継をする「現場の東海林です」みたいな臨場感のある怪談の話し手である。
心霊スポットへ行って検証してもすごく正直に肩の重さを聞かれても『いや、重たくない』。その場の空気感を聞かれも『いや、軽いです』と正直にその場を実況してくれるので説得力がある。ほら、何食べても「うまーい」っていう芸人とかっているじゃないですか?心霊スポットへ行っても「なんか寒いような気がする」っていつも同じことをいう人。あれって本当に説得力がなくなる。
かつて島田紳助も行っていたけど「うまいもんはうまい。まずいものはまずいと正直に言わないと俺ら嘘つきになってしまう。そして説得力がなくなる」と言っていたけど全くその通りだ。
「心霊スポットへ行くと霊を怒らすので行ってはいけない」というのが住職系の一般的な考え方であるが、三木住職は「むしろ行くべき」と全く正反対のスタンスを取っている。他人の家にあがるように、ちゃんとそこにいる霊に対して合掌なり、その場に入らせていただくという礼儀、リスペクトの気持ちが必要であると今までいた住職系の怪談師たちとは一線を画している。
ちなみに仏教の創始者である釈迦によると幽霊が「いる」「いない」に関しては「無記」と答えている。「無記」とは「幽霊がいるとかいないとかってそれ本当に修行するにあたって大事なことか?」ということである。まぁ、釈迦曰く幽霊の存在は「ワシにはわからん」ということだ。「わからない」ということで「幽霊はいない」とも言っていない。
二元論で片付けられない「曖昧な存在」だからこそ霊は怖い。だってよくわからないし、姿が見えないし、怖いものは怖い。そして心霊スポットや幽霊の話だけが霊の怖さを助長させてさらに幽霊への距離ができてしまう。だから姿が見えなくても合掌したり、手を合わせたりして幽霊をリスペクトをすることで「霊との共存」そしてその怪談を通して今を生きる事を考える三木住職は仏教的思想の強い人なのだと思う。まぁ、僕が言わなくても見た目からしてお坊さんなんだからみれば分かるよね。
それでは三木住職の怪談をご紹介していこう。
宿泊
酔っ払いって本当に面倒なことがある。僕が昔、住んでたマンションでもときたま別の階の酔っ払いが間違えてインターホンを押してくることがあった。ビジネスホテルに酔っ払いが間違えて部屋にノックしてくるというのは結構あったりする。そんなビジネスホテルという身近な場所で三木住職自身に起きた出来事を淡々と話す。めっちゃ脅かしてくるようなお化けは登場したり、ドッキリなポイントはないけど後からボディに入ったパンチのように効いてくる話。
死臭
人の独特な匂いってありますよね。別にワキガとか体臭が臭うというわけではないんだけど、なんだかよくわからないけどその人独特な匂い。その人が近づいてきたら漂う匂い。大体、その匂いが近づいてきたら誰だか分かる。あれって謎ですよね。
この怪談も「なんとなく分かる」という曖昧な感覚がすごく生々しく話すのでこの話を聞いたあとしばらくは匂いに敏感になった。話の展開も分かりきっているのに最後の展開にアッとなって終わる。
地下アイドル
顔のいいアイドルは人生イージーか?と聞かれてもそれはどうかと思う。
だってアイドルにとってSNSは必須であってTwitterをやれば出会い、やり目的の人ばかりのDMなどが届くだろうし、異性からのストーカーや同性からの嫉妬。とにかく「性」に取り囲まれた生活である。
だからホラー映画にはアイドルがつきものなのだろうかと勝手に思っている。
土産
すごくピー音が長くて逆に笑ってしまう。呪いの人形の話。だけど最後にやっぱり現代に生きる人間の嫉妬や妬みの怖さがあって面白い話。
マキャベリの君主論では「恨みは買うな」って言ってたけどほんとその通りだよな。
終わりに
いやー、一つ一つの怪談話の完成度が高い上、捨て話がない。どれも粒ぞろいでどの話も何時間でも聞いていられる。そこが現代怪談師最強の一角所以でもあるのだろう。
しかし本当はもう一つご紹介したい三木住職の怪談話があった。しかしその話を探しても動画が見つからなかったので少し説明すると、三木住職が修行時代、厳しい僧侶への修行に疲れていた三木住職は寮の近くにあるアフリカケンネルというペット屋みたいなところで犬を撫でたりして息抜きをしていた。何度かそこへ通っているとそのペット屋の経営者に気に入られた。その経営者はいつも缶コーヒーを4本並べて「この中から好きなものを飲め」と言ってきた。その4本のコーヒーの銘柄がいつも同じで不思議に思っていたが、その中の1本を選んでいただいていた。あるとき「犬の散歩を15分喋るだけで月に15万やる」と言われたが、修行中の身ということもあって断った。そして4年間の修行を終えて、その経営者に挨拶して別れた。それから数年後、その経営者はニュース番組に出ていた。ニュースの内容はあの「ボディーを透明にする」で有名な愛犬家連続殺人事件の犯人だった。この犯人が殺しのターゲットにする理由にはいくつかあった。強欲なやつ、いらなくなったやつなど。そのうちの一つに「運がないやつ」というのがあった。そしてその犯人は「昔、うちの店に来ていたひとりの修行僧が来て、毒入りのコーヒーを出した。一本だけ、毒のないものを置いた。そしたらその修行僧は3回とも毒なしのコーヒーを引いて、飲んだ」。
いやもうサイコホラーだよ。怖いというよりも怖すぎるよ。お化けなんかよりも怖いよ。
まぁこの犯人のことをもっと知りたければこちらの映画をみればいいかと思います。ラストのオチは納得いかないけどでんでんさんの好演は見て損はない。
それではまた。