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進撃のフィーメール系ラッパー

文:田渕竜也

惹きつけられことについて
人は見た目が9割なんて言われるように「女性の何に惹きつけられるか?」と聞くと「顔」、「体」「性格」などがよくあげられ、やっぱり外見が重要視される傾向にあるみたいだ。
なにに惹きつけられるかは別に謎の人形を持ち歩いている人に惹きつけられるでも泣きホクロに惹きつけられるにしても何に惹きつけられドキっとするかは人それぞれだ。見た目が重視されるというその惹かれる感情の中に「声フェチ」って言葉が巷で言われるように「声」というものも近年では大きなポイントになっているらしい。
たしかに見た目アン・ハサウェイでも声がスピードワゴンの小沢みたいな下水道みたいな声だと分が悪い。名画に泥を塗りたくってるような感じだ。

「声」の重要性
ある女性に対する「声フェチ」に関するアンケートでは約44%の人が自分から「声フェチ」と答える結果で、惹かれる理由の多くは「安心するから」という安泰を求める結果になったらしい。
なるほど。通りでドスの効いた声の中尾彬が人気なわけだ。モテない嘆く男性諸君は是非、明日から中尾彬のモノマネを練習してみよう。逆に男性が女性の声に求めるのも同じ「安泰感」が求められる結果になった。確かに常連の多いスナックには多くのおっさんたちがしゃがれたハスキーな声の低いスナックのママと喋りに来るのも納得だ。安心感がある。もしこのスナックのママがめっちゃ甲高いアニメ声で想像してみよう。なんかあまり安心感がなくて二、三歩後ろに引いてしまいますよね。
そんなわけで「声」というものはとても大事だ。人の感情を煽ったりや対人の距離感を引き離したり大体、声の質で傷つけることも癒すこともできる。さらには人を惹きつけることもできる。かのヒットラーもあの声質じゃなかったらただの美大落ちこぼれの意識高い系政治マウンティング野郎で終わっていたらしい。だからそれぐらい「声」というものは重要なのである。

進撃するフィーメールラッパー
声と言えば特に昨今の音楽では「ラップ」の分野で声の質がとても重要なポイントとなっている。中でも「フィーメール系ラッパー」と呼ばれる女性のラッパー分野においては特にそうだ。か細い声でなんかメンヘラチックなラップ、ドスの効いた低い声でハードコアなラップ、ほのぼの脱力系のラップなど今、様々なフィーメール系ラッパーたちが様々な声質で登場している。
しかもこの分野での進撃はここ数年の日本ヒップホップの定着とともに、猛烈な勢いで進撃している。今回はそんな「声」で人を惹きつけ、聞かせるフィーメール系ラッパーたちをご紹介していきたいと思います。

Pinoko

pinoko – after pills

何系のラッパーって言ったらいいんだろうか?まぁ、都会型メンヘラ系ラッパーというべきか。音楽性はいわゆるJust two of us進行と言われるオシャレなシティポップ系の楽曲ではど定番のコード進行を基調としている。

どのシティポップ系のバンドもこのコード進行をやっていてとっくに出尽くし感のあるコード進行だと思っていたけど、それは間違いだった。チルでダウナーで都会の若者の生々しさのある歌詞。楽曲のアレンジも生のギターとベースの音がめちゃくちゃかっこいい。特にベースがいい仕事していて個人的にはツボです。

上の曲はafter pillsっていう曲名なんだけど「なかったことにする」ということをアフターピルを比喩にしているところがすごく生々しい。それから曲の出だしが「ナンバー出して」はおそらく「生で出して」をかけているのだろうと思うし多分、カップルでみると気まずくなるPV大賞があれば間違いなく金賞を取れる。

泉まくら

泉まくら-いのち feat. ラブリーサマーちゃん

「なんだよまたメンヘラ系ラッパーかよ。Deep Loveみたいな可哀想な自分とこの薄汚れた世界系はもうお腹いっぱい」なんて思うだろうが、こちらは随分とサブカル+ラップ。韻を踏んだり言葉あそびをするテクニカル系ラップというよりポエトリーなラップが印象的。そこがエモさを感じる要因の一つなのだろうと思う。
岡崎京子なんか好きな人には割とヒットしそうなタイプのラッパー。

lyrical school

lyrical school-シャープペンシル feat. SUSHIBOYS

ここ最近、女性アイドルの世界ってもう暗黒の時代がそこまで来ているような気がする。まぁネットのニュースをみればわかることだろう。Babymetalのヒット以降、ヘヴィロック系アイドルがモンスターハウスの如くワラワラと何処からともなく湧いて出て来た。
もうアイドルにデスボイスで歌わせるのやめさせろ。喉潰して場末のスナックのママみたいな声になったら後に戻れないぞ。
とまぁここまでは昨今のアイドル事情に対することを綴った続きはまたどこ別の機会にアイドルについて書こうと思います。

それではlyrical schoolの話をしよう。ヒップホップを真面目にやってるアイドルっていそうでいなかった。いてもHALKALIぐらいでなんかカートゥーンな香りがするゆるい女子高生みたいな感じのラップが多かったけどlyrical schoolは違う。マジのラップである。しかも「アイドルにしては…」というよりちゃんとラッパーとしてそれぞれがキャラを生かしていてうまい。普通にただのフリースタイルラッパーよりもうまい。

ここ数年乱発していたヘヴィロック系アイドルは完全に飽和状態である。そんなアイドル界でストロングのビターレモンみたいに緩くないまじなラップをするアイドルというのはこれから注目すべき分野なのかもしれない。というよりもはやアイドルという枠に入れる意味ってあるのか?普通にヒップホップグループでよくね?

YURIKA

YURIKA-GOOD NIGHT (Official Video)

上の二人のラッパーよりはライトな世界観で気分によらず割といつでも気楽に聞ける楽曲が多いのが印象的。あまりメンヘラ臭さが少ないところが個人的には好感度が高い。
気楽そうな楽曲とは裏腹にぶっといビートに乗せてラップをするスタイル。こういうの結構好きです。

DOUBLE

DOUBLE-Shake

女性ラッパーを語るならやっぱりこの人たちは外せない。この歌唱力と英語の発音とリズム感、グルーブ感はどれをとってもこの時代、リアルタイムで聞いたときめっちゃビビった覚えがある。とにかくブラックミュージックという分野でどれをとってみても日本人離れしすぎていて個人的にはなんで倖田來未はこんなに評価をされてDOUBLEはもっと出ないのかと憤ったほどだ。

何よりもこれからって時にDOUBLEのSachikoが死んだのがイタかった。今だにSachikoが生きていれば日本のヒップホップの勢力図は随分と変わっていたんじゃないかと思ったりもする。

「女性の社会進出」とか「Me too」なんていううわべだけの言葉がツイッターのトレンドに上がったりするこんな時代にこそDOUBLEを是非、聞いてほしい。マジにかっこよかった二人組です。

終わりに

いかがだっただろうか?目の覚めるような声質もあれば、脳みそが溶けそうなな声質のラップもある。この声の多様性が昨今のフィーメール系ラッパーたちの進撃していける強みといえると思う。でもやっぱり僕はまずはDOUBLEのメジャー1thアルバム『Crystal 』を聞いてほしいと思います。

それではこのあたりで。

田渕竜也のTwitter

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