ヒーローを殺してしまうと繁栄しない
誰しも何かを目指したり、極めようと競争する人たちがいて盛り上がっている場所には必ず「ヒーロー」という存在がある。
ヒーローとはただ単に正義を振りかざすだけではない。別に「世界の平和のために戦うアンパンマンがヒーローだ」という人もいれば科学者としてバイキンマンの開発力に魅了されて科学者として彼を尊敬しヒーローだということもできる。
また、アンパンマン世界におけるたるんだ食料配給制度に唾を吐きつける革命家として見ることもできるから「ヒーロー」といっても正義とか悪ではくくることはできない。ここでいう「ヒーロー」とは「憧れ」「魅力」「目標」とするものであることを説明しておく。
だから誰だってヒーローには憧れやいつか超えてみたいと思うものである。僕も「てんぷら」を立ち上げてこんな文章を書いたり、フリーペーパーを作ったりしているのは中島らもや寺山修司といった「ヒーロー」がいたからである。こういったいわゆる「アングラ」という分野が世間でも認められるようになったのも彼ら「ヒーロー」のおかげだ。
もし彼らがいなかったらこんなアングラと言われる分野なんて川の端っこの石ころみたいなものだろうと思し、ヴィレッジヴァンガードやや中野ブロードウェイはなかっただろうし、アングラな人たちは相当生きにくい世の中になっていただろう。
「ヒーロー」がいないとその分野は繁栄しない。
だってロックミュージックで言えば60年代にポールマッカートニーやジョンレノンがもしいなかったとしたら。また、エルヴィスプレスリーがKKKに入っているようなただの白豪主義のカントリー男でロックなんてやっていなかったとしたらこの世界の音楽は全く違っていたと思う。ひょっとしたら今だにフランク・シナトラみたいな歌い方をする人がビルボードに入ってたかもしれない。
このロック音楽というものもこういったヒーローが登場し多くのフォロワーを生み出し、様々な「ヒーロー」という魅力ある人たちがしのぎを削りあっていった結果があるからこそ今日のジェント、デスコアに至るまでに栄えていったと思うんだ。
おそらく先代の彼らがいなかったらジェントもデスコアも誕生していなかっただろうと思う。例えばSuicide Silenceの人たちが直接的にポールマッカートニーの影響を受けていないにしても彼らが影響を受けたであろうヒーローバンドを辿ればおそらく彼らに行き当たるはずである。
直接的にしろ、間接的にしろそういった「系譜」という繋がりがあるからこそいろんなヒーローたちが生まれて派生していく。だからヒーローがいないところには繁栄はないんだよね。
だから勢いに乗っている若手というものは大事にしないといけないと思うんだよね。
例えば2018年、格闘技団体ライジングがマッチメイクしたメイウェザーと那須川選手の試合なんてただの「ヒーロー殺し」だ。ライジングが必死こいて格闘技を盛り上げようとしているのはわかる。
落ち目と言われている格闘技事情を踏まえると一大イベントである大晦日の目玉試合のマッチメイクが難しいのはある種の同情の感情を拭うに至るほどである。格闘技が今盛り上がっていないところでどうするかって普通に考えたらもう日本の若手エース対ボクシングの絶対的王者だろう。だって日本の若手エースが勝てば一躍日本のヒーロー誕生で盛り上がるし、もし絶対的王者が勝てば「絶対王者来日」だけでそれなりに数字を出すことができる。
だけど今、オワコンと言われている格闘技団体の中で若手でしかも自国のヒーローを作り上げない状況である限りこのマッチメイクは限りなく自殺行為だ。
絶対的王者といってもメイウェザーである。絶対に負けるはずがない。言ってしまえばドラクエ3のオルテガがキングヒドラに立ち向かうようなものである。相手が完全に負けイベントだ。そんな負けイベントに若手で勢いに乗っている選手を使えなんてその負けイベントで激レアアイテムをめっちゃ使って消耗するだけ消耗して負けてしまって、次に進もうとしたら何もアイテムを持ってない状態になるようなものである。
だから那須川選手という勢いがあってヒーローになりうる、しかも年齢的にもめっちゃ若手を芽が出る前に踏み潰して殺してしまうようなことをしてしまったライジングにはあまりいい未来はないと思う。
こういった形で大人の事情で殺されていったヒーローはたくさんいる。大人というものは勢いのある年下に嫉妬するものである。必ず大人は足を引っ張ってくるし、なんならその足を鎌で切り落としにかかってくる。だから若手のヒーローというものは基本的に周りがサポートしていかないとどんどんと虐殺されていくのである。そして潰されていくとその盛り上がりは消え失せて消滅してしまう。
もし本当に格闘技というものをしっかりと盛り上げたいならもっと若手選手を守っていくべきだ。それにでっち上げでもいいからヒーローを作るべきである。その辺りはうまいこと世代を対立をさせて、上手いこと世代を交代させたり、少し古いけどザ・ロックみたいな絶対的人気ものと絶対的嫌われ者のカート・トライアングルを登場させたりするWWEを参考にしたらいいと思う。
まぁこういった話は件の格闘技団体の話だけではない。会社とかでもアホみたいに新人を殺しにかかってくるところもある。僕の知っているグラフィックデザイナーの人の場合、業務中に「才能ないな」とか「学校で何やってたんだ?」と永遠と詰められて潰された人を知っている。なぜ、後継になる新人を潰すという自分たちの首を絞めるような行為をするかというともう二文字で「嫉妬」しかない。
音楽の世界でいえば偉そうに「もっと練習したほうがいいんじゃないか」とか「コンセプトがなってないね」って女性シンガーソングライターに説教をするおっさんたちがいたりします。
もう若者の足を引っ張る彼らはまじで『レッド・ブロンクス』のコンプレッサーにかけられた黒人みたいにミンチになればいいと思います。
正直いって、勢いのある若者が自分を守る術っていうものはないと思うんですよ。だってその分野のベテランが一斉に敵になるわけだし、「企業しろ」って言われて企業してもみんな「すぐ潰れる」とかいって嫌味を言ったりしてまともに応援してくれる人なんていない。そんなもの「自分で守れ」って言われても無理に決まっている。じゃあどうすりゃあいいのよって言われれば、まぁ本当に理解のある大人を一人でも多く探して守ってもらうしかないと思うんだよね。だから自衛の手段はないと思ったほうがいいと思います。
というわけで結局、何が言いたいかというと原石である勢いある若手はもっと大事に扱えよ。虐殺してんじゃねぇよ。じゃないと大人の世界はベクシンスキーの絵画のようにどんどんと崩壊していくぞっていう話でした。
言い忘れてたことがあと一点。今後継者不足とかいってる会社とかあるけど後継者をぶっ潰して殺しにかかったのはお前ら大人だろと。
それではまた