飲食店の店長って実は有能じゃね?
これまで飲食店で働いたら腐るだの、真面目な人間が働くべきではない場所など、飲食店を散々ディスってきた訳だが、今回は珍しく褒めようと思う。実際、従業員がクソというより経営陣がクソなんだよね。クソな経営陣によって、従業員が腐っていってるだけ。まぁ本質的にクソな人がいるかもしれないけど、それはどの業界だって一緒。
まず、飲食店の店長がどんな仕事をしているのか、皆さんはご存知だろうか?特にチェーン展開しているような店だと、忙しさだけで言えば、厚労相の役人並みかもしれない。しかも、やらかした時の責任の重さは厚労相の役人以上。そして、厚労相の役人とは比べ物にならないほどの薄給。それでは実際に具体的な仕事を挙げていこうと思う。
・売上や利益といった係数管理
・発注や棚卸しといった在庫管理
・アルバイト、パートの採用と教育
・売上向上のための販促活動
・接客、調理や開閉店作業
・クレーム対応
これだけ書いてもあまりピンとこないかもしれないけど、なかなかの激務なんだよね。ワーカーとしての仕事だけじゃなく、事務や経理、人事や広報といった様々な業務を兼任していることになる。飲食店の店長というのは、個人差はあるにしても、謂わば『完璧(パーフェクト)超人』と呼んでも過言ではない。ぶっちゃけ、そこら辺の事務なんかよりもよっぽど仕事が出来る人の方が多いんじゃないかとも思う。
しかし、そんな完璧超人である飲食店の店長は、その激務に対しての報酬が驚くほど少ないことは周知の事実。実は額面だけで見れば、そう少ない訳でもなかったりするのだが、問題なのは労働時間だ。
飲食業界のほとんどが『みなし残業』を採用している。『みなし残業』というのは、残業することを前提にしていて、予め1月あたり40時間5万円などの残業手当が基本給に上乗せされるシステムだ。これは実際に残業していても、残業していなくても支払われるわけだが、当然残業しないことなんて現実問題あり得ない。そうでなければ、企業が『みなし残業』を採用するはずがないからね。他にも今回の趣旨とは少しずれるが、低い基本給を隠して、手取りを多く見せるという効果もあったりする。
勿論、『みなし残業時間』を超える残業を行った場合、その分の残業手当が支給される。はずなのだが、超過分を申告すると、上から無能店長の烙印を押され、パワハラ紛いの叱責を受けたり、一般社員へ降格なんてこともあり得る。これを嫌って超過分を申告しない人も多いという。労働組合が機能していない、またはそもそも労働組合が存在しないとこんなことは日常茶飯事だ。
また、繁忙期にアルバイトやパートが集まらなかったり、急な欠勤が出て替わりが見付からないと、時間外や休日にも出勤することになる。こういう場合でさえも手当を申告できない環境にあったりもする。
額面上の所得は、そこまで低い訳でもないのに、時給換算すると、アルバイトやパート以下の時給になっているなんて話はよくあるんだよね。そりゃあ、飲食業に進もうとする人が少ない訳だ。
飲食店の店長というのは、店舗運営に関するほとんどの業務を任され、その全ての責任を問われる。そして、その業務や責任に見合わない報酬しか得ることが出来ないという三重苦を味わうことになる。飲食業界は意外と有能だったりする人材を使い捨てている本当のクソ。ろくな学歴や経歴がなくて、他ではやっていけないなんて悩んでいる飲食店の店長は、もう少し自信を持っても良い。さっさと見切りを付けて、資格でも取ったりすれば、必ず他業界でも活躍できるはずだ。
飲食店の店長という経歴は軽視されがちだが、様々な業務をこなすことが出来るゼネラリストであり、責任感も強く、真面目な方々なので、他業界はもっと評価して欲しいと切に願う。絶対、思わぬ掘り出し物が見付かるはず。有能な人材が使い捨てられるのが、誰にとっても不幸なことだ。