/ Column

バンドメンバーを集めるという奇跡

文:田渕竜也

Spotifyを開いてまた好きなバンド音楽のを聞いてしまう。
そしてアイフォンの白いイヤホンをジャックに取り付けて爆音で聞いていた。
バスドラはツーバスで一心不乱に叩き、ギターは凶悪なリフを刻み続け。ベースは洪水の濁流のように唸って、ボーカルは叫び続ける。歌詞は何て言っているのだろうか?全く聞き取れない。だけど気がつけば自然と頭を振って、聞こえて来た歌詞を空耳で口ずさんでいる。多分、はたから見たらただの狂人にしか見えないだろうが僕にとっては「これ以上ないだろう」と思う至福のときだ。
やっぱり僕はバンド音楽が好きだ。
まず何とも形容しがたいあの重低音が好きだ。ベースとギターのリフがドラマーが叩くフレーズに絡まっていって音楽全体にうねりが生まれる様は、良きだな。堤防が決壊を連想してみる。溢れ出た川の水は堤防をぶっ壊すように、イヤホンから溢れ出た洪水のような音のうねりはどんどんと脳みそが侵食されていく。
絶叫するボーカルが好きだ。バンドというものが何のためにあるかと問われれば、これは自慰行為のようなテクニックを乱舞するためでも、「みんなでウェーイ」の仲良し同士のためでも、ましてや女と男のラブワゴン、恋愛観察のためでもなく
、バンドはやはり感情の爆発を表現するためのものであって、その感情のボルテージが高ければ高いほどバンドはやっぱりカッコイイ。
どうやったらこんな人たちを集めることができるのだろうか?好きなバンドの音楽を聞いているといつもそんなことを考えてしまう。
バンドをやるには最低でも三人、しかもそれぞれ違う楽器パートをやってくれる人間が必要だ。まぁそんなことは誰でも言えるけど、バンド内の人間関係ってちょっと複雑だ。友達でも恋人でもない、簡単に言えば「仲間」という言葉が妥当だろうか。普通に生きていたら、こんな仲間というものとは出会うことはない。この地球に生命体が偶然の重なりでチッ素、酸素、二酸化炭素がちょうどイイ配合で空気があるぐらいバンドの仲間というのは全ては偶然である。

バンドメンバーを集める。バンドライフを始めるにあたって初歩の初歩何だけどこれが本当に難しい。それに面倒くさいし、裏切られることもある。
以前、(と言ってももう10年ぐらい前の話だけど)組んでいたインスト系のバンドでボーカルを入れようって話になり、ネットでメンバー募集を募ったことがある。すると少し経ってから「ボーカルがしたい」という女性から連絡があって、その人はどうやらUAやCharaみたいな歌手が好きらしい。その頃、なんちゃってThe Rootsみたいなジャジーヒップホップよりの音楽を遊びでやっていた僕らからしたらドンピシャであった。
「それではスタジオに入りましょう」とメールを打ち、スタジオに入る日程を決め、その日にやるセッション曲を決めた。やる曲は女性からのリクエストでUAの『雲がちぎれる時』だった。時間は二週間ほどあった。
その日に向けてバンドはボーカルを迎え入れる準備していた。インストだった曲にうたメロをつけたり、アレンジを変えたりしてあとはスタジオの日程を迎えるだけとなった。しかし不安があった「果たして、会ったこともない人が本当に来るのだろうか?」僕の中ではこの一抹の不安感がずっと繰り返されていた。
そう、ネット上のメンバー募集のやり取りはメールだけだったので、今どきのマッチングアプリ見たいな顔を晒すということがなかったのである。そしてスタジオの日程の当日、その不安は的中した。
待てど待てど一向に来ない。メールをしても一切音沙汰なし。「やられた」その時僕ら一同は同時に思っていたのだろうか。この日までに準備をしてきたこと、その日の三時間のスタジオは水の泡となり。この一件以降、この当時の僕が所属していたバンドは一気にやる気がなくなり自然消滅してしまったとさ。

とまぁ、ここまでポエトリーな文章でバンドに対する熱い思いとよくあるバンド失敗談なんだけど、ネットのメンバー募集って本当に難しい。さっきも言ったけど顔がわからないから本当にどんな奴がくるかわからないという恐怖がある。言ってしまえば、相手の写真なしでお見合いの場へ行こうとするようなものである。その時、相手の顔を見て「困ったなぁ」って顔をするのもいい気分にはならないし、マッチングとしては失敗だ。まぁ応募する方もこちらの顔がわからないから怖いとは思うけどね。だから僕個人的にはバンドを始めるにあたってネットでメンバー募集するのはあまりオススメはできない。
もう一点、ネット上でメンバー募集することを勧めない理由として“楽器中級者クラス”が多いことだ。初心者でも上級者でもなく“中級者”とはどういうことか?ギターでいえばある程度ソロが弾けてリフの組み立てがある程度できる。ベースでいえばスラップができて亀田誠治に憧れをもつ段階の人たちだ。一見、結構できそうな雰囲気はある。
だけどこの人たちの何が厄介かというと自分の弾きたいフレーズを弾きまくることと自分の主張が強いということだ。
自分のパートをより目立たせたいと思うのはステージに立つ者の性だである。だから各パート各々がバンドの楽曲の一小節内にこれでもかとあらゆるフレーズを詰め込もうとする。するとどうなるかというと個々はすごくテクニカルなのにバンド演奏としてはメチャクチャで聞くに耐えないという結果が生まれてしまう。
バンド演奏というものは個々のキャラクター性ではなく一つの集合体なってできたものがキャラクターだ。真珠のネックレスで考えてみよう。丸い美しいベージュと白の間ぐらいの真珠の連なりにいくつかパンクスのようなトゲトゲの真珠のネックレスがあるとしたらそれは美しくないしあまり価値がないと思う。やはり丸い真珠が連なってからこそそのネックレスは美しい。バンドも同じである。一人ひとりが個性を出すというよりバンドとして一つになった方が美しいしかっこいいと思うんです。
このバンドをどうやって一つにしてキャラクターにするかはすごく重要なことというよりも基本中の基本なのである。
それから中級者によくあるのがスタジオで「そこまで弾くフレーズはいらない」と指摘すると不貞腐れた態度になってしまいがちの人がいることだ。そしてどんどんと嫌な雰囲気になってきてまたバンドが解散してしまうという事態に発展したりしまったりする

こうなるぐらいならまだ初心者同士で組む方が道は開ける。僕としては無理に楽器経験豊富な人を入れるより、楽器経験ゼロ同士でともに成長していけるバンドの方が道は開けると思う。

だからこの春、おそらく高校や大学へ進学して好きなバンド音楽を自分もやりたくなってバンドを組もうとする人は多くいるだろう。そんな人たちにオススメするのが是非、近くにいる人をバンドに誘ってみるといい。パートなんてジャンケンで決めればいいわけだし、負けて嫌々ドラムになったとしても今、バンド界は深刻なドラマー不足なのでドラマーは引き手数多だ。音楽でやっていくならドラムが有利である。
それにボーカルが恥ずかしいと言っても大丈夫だ。ステージに上がっていけば時期に慣れてくる。歌は下手でもいい。とにかく感情を爆発させることができればそれでいい。
そんでバンドを通して共に成長していっていろんな人たちと出会えれば最高でかけがえのない学生生活が送れると思います。苦しい方が7割以上なんだけどね。でも人間、何か作り出そうとしているときはハッピーに感じているときより絶望を感じている方が感情のボルテージが上がりやすくて作りやすいんだよね。

取り留めのない話になったけどまぁ、これからバンドをやる人は頑張ってください。そしてなんだかんだバンドはオワコンと言われてもカッコイイ音楽は世間が待っていると思います。

それでは

田渕竜也のTwitter

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