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サークルピット安全マニュアル

文:田渕竜也


 月の光を浴びすぎると人間って狂気に陥るっていう。そんなものはおとぎ話の中の迷信、もしくは狼男ぐらいだろうと笑い飛ばす人もいるかと思う。だけどあらゆる生物の生活リズムで考えてみればバイオリズムの根底には太陽と月の関係性はあながち迷信ではないのではと思ってしまう。
 例えば自殺率の統計上でいえば地球上の北へ行けば行くほど上がって行くそうだ。逆に赤道へ近づけば近づくとその数は減って行く。確かにサモアの人たちがメンタルを患う姿ってあまり想像がつかない。曙太郎とかマイティ・モーとかめっちゃメンタルというかそういった概念がなさそうだもんな。そりゃ格闘技とかラグビーが強いわけだ。気が病んでる皆さん、タピオカよりもタロイモですよ。
 逆に北欧の方なんてブラックメタルにデスメタルですよ。ムーミンの原作って読んだことあります?ムーミンパパがなぜか絶海の孤島に移り住むことを提案して家族みんなで移住するんだけどなぜかムーミンパパが狂って蒸発して、ムーミンママは自分の絵の中に閉じこもってしまうんですよ。狂気ですよ。ムーミンの家族やばいですよ。北欧はオシャレ、社会福祉の国なんかじゃないんですよ。あそこはオーロラと白夜と極夜によって狂気に満ち溢れているんですよ。
 このように生物というものは明るさ暗さ寒さ暑さによって狂気の度合いが随分と差異があるように思える。実際、Children of bottomsが10周連続フィンランドチャート1位なんて結構、狂っている。blood stain childがオリコン10週連続1位なんて想像がつきますか?無理でしょ?

 狂気。生き物は案外簡単に狂気に陥ることができる。例えばあなたが気になるハードコアやデスコアバンドのライブへ行きたいとする。そのライブで起きることは何が想像できますか?てんぷら読者なら大体は想像がつくかと思うけどモッシュ、ダイブ、ウォールオブデスそしてサークルピット。盛り上がれば盛り上がるほどそのライブという場は熱気そして狂気は満ちて熱狂的な空間になる。そこには男も女も関係ない楽しめる人だけが楽しめる場所である。
 しかしだ。いくらそのようなサークルピットという現象が楽しいからってもみくちゃにされては困る。しかもそのときに着ている服が四千円もするものだったとするなら絶対に入りたくないですよね?僕も元気があればいいけど、シラフ状態ならできるだけサークルピットには入りたくない。見てるのは好きなんだけどね。だけどそのサークルピットに入ってしまったら痛いし危ない。だからこういうジャンルのライブハウスって割と行くのに躊躇いがちな人が多い。
 「だけど好きなバンドなんだ」「ひょっとしたらもう見れないかもしれない」など思う人って結構いると思うので今回はサークルピットの安全な位置どりを解説してみようかと思います。

最前中央

まず理解していただきたのは中央最前列は世界地図でいうシリアとかイラクみたいなもんだ。行けば拉致られて殺されるようなもの。そこへ行けば暴れる人たちにぶつかって弾き飛ばされて自分もサークルピットの渦の一員になってしまうことになる。だから絶対に渦になりたくないという人はここには近づかないようにしよう。
 だけど僕としては孤独な人ほどここに行って欲しいと思ってたりする、好きな音楽を聞きに来ている同士で渦の一員になれば嫌でも知り合いができる。最前列中央は音楽で誰かと繋がりたい人にはおすすめです。割とそういったコミュニティとしての機能はライブハウスが優秀だと思うんですがいかがでしょうか?だけどたまにいるカップルで来て最前中央で彼女守って、勝手にキレてるお前。ヤシマ作戦の綾波かっての。死ぬほどダサいぞ。

最前左右

ここはスピーカーからものすごく近い。だから爆音で音楽を聞きくことになる。渦に巻き込まれずいけるか?と思うけど、ここは世界地図でいうとトルコみたいなもん。それなりに覚悟しないと場合によっては巻き込まれる。しかもスピーカーの爆音で二、三日はずっと両耳がバグったままになるから耳を大事にしたい人や渦に巻き込まれたくない人には個人的にはあまり勧められない。というよりサークルピットで狂気の状態になってる人が渦から外れたらその人を押し戻すという役割が最前左右の人たちにある。耳はイかれて、渦には巻き込まれ、狂乱の人を渦に押し戻したりしてある意味一番面倒な場所かもしれない。

一番真ん中らへん

ここは比較的安全な位置に属している。だけど中央で暴れていた奴らがバーカウンターへ行ったり来たりして通り道になったりするので、人を避けるのが面倒な場所でもある。それに突然、隣にいた人のテンションが狂ってアンデッド状態でサークルピットへ行く人も出てくる。これが結構びっくりしたりする。本当に突然、ゾンビに噛まれた人のごとく急にカポエイラのような動きをやりながら最前へと繰り出して行くのだ。あと注意していただきたいのがこの位置はライブが盛り上がるにつれて前へ前へ行ってしまうことがある。その結果、サークルピットに巻き込まれてしまっている場合があるので盛り上がり方には要注意である。

真ん中左右

 ここは安全圏ですね。物販があったりしてほぼほぼ巻き込まれる心配がないと言ってにいい。
 ここは物販が近いからもしハードコア系のイベントで少しでも「いいね」と思ったらステッカーでもバッジでも何かしら物販で買ってあげるといいと思います。物販は仲介料のない貴重な100%還元の収入源ですからね。多分、何かしらバンドマンから感謝はされるかと思います。
 僕的にはTシャツを買うのが一番思い出にもなるし、普段でも着られるし、人と人を繋げるツールにもなるのでオススメです。インディーズの人だと2,500円だったりして結構安い。
 話は戻してこの場所は少しステージが見にくい位置ではあるけど、ライブを見るのに安全に越したことはない。物販で買って、安全にライブを楽しみたい人にはここがいいでしょう。

後方PA・照明付近

 ここも安全ですね。こんなとこで狂乱状態で暴れられては退場ですね。踊ってるだけで退場です。注意することとしたら飲みすぎて泥酔状態でゲロを吐かないぐらいかな。場所としては正面にステージがあって結構見やすかったりするけどやっぱり遠いな。

どうだろうか?ライブハウスにおける客席をいくつか分析をして見た。僕個人としては一番真ん中らへんがライブハウスは過ごしやすいです。安全圏としてはこれを見る限りではどうやら後方/バーカウンター付近が安全と見るたらいいかもしれない。ハードコア系が好きな人でもライブはちょっとという人は結構多いかと思う。だけどサークルピット内ではコケた人は必ず誰かが助けてくれるし、音楽が好きな人同士は好きな音楽のことをずっと語り合っている。ハードコア系のライブは行けば結構楽しい空間なので、是非一度この狂人たちの空間を体感して好きなバンドに会いに行ってはいかがでしょうか?

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