皆様にハードコアパンクのライブへ行ってほしいからいくつか紹介させてくれい
アメ村へライブを見に行った。Krimewatchのライブを見にお盆前の真夏の夜にキングコブラへ向かったのだ。
ライブハウスの入り口でケツポケットを探り財布を出す。そしてお金を払い手の甲に入場のスタンプを押してもらいスッと差し出されたドリンク券と共に中へ。中の人たちは体中にタトゥーを入れた人や全身ピアスだらけの人など一体どんな日常を送っているのか不明な人たちや酒を飲んでいる人、何やら真剣に音楽について話している人たちなどでいっぱいだ。
そしてライブが始まるのを今か今かと皆それぞれの時間を自由に過ごしている。この光景がたまらなく好きだ。
とにかくこの日のライブは最高だった。Krimewatchの他にも日本からのハードコアバンドたちも登場してギターのノイズと爆音でぶっ飛ばしてくれた。
僕は、何かこの世界の日常がつまらなく感じると、無性にライブが見たくなると言う変な感覚がある。どうにも気分が沈んでいる時にフラッとライブハウスに入り轟音鳴り響く暗くて酒くさい空間が不思議と落ち着く。この空間がどうしようもない日常から遠くへやってくれる作用をもたらしてくれるようだ。
昔、『笑っていいとも』でタモさんが言っていたんだけどストレスと言うものは解消できるものではないらしい。運動してスッキリするのはストレスの根源を忘れているだけ。確かに諸悪の根源を思い出すとまた腸が煮えくり返る。なるほど、結局、ストレスに打ち勝つのには現実から逃避するしかない。遠く遠く、いつか見た地平よりもどこまでも遠くストレスというチェイサーから逃げるのである。
だから憂鬱なときに見るライブってのは精神的に深いところまで入ってくる。多感な思春期の頃なら尚更のこと。勉強、自分のルックス、恋愛、友人関係、童貞、底辺、政治不信、老後、年金…などというストレスはどこまでも追ってくるけど、ライブハウスでドリンクを片手に見ている時の2、3時間だけその追っ手のことを忘れることができる。
そんなストレス値がとんでもない憂鬱な時に見たライブは別格でそのシーンは鮮明な記憶として永遠に残ることができる。そしてライブハウスに逃げ込んで見たそれらを時間が経ってからまた聞いてみる。そうするとなんかこの時期の葛藤や心の痛みが思い出されて古傷がズキズキと痛むのである。だけどこれもよし。懐かしむことは弱いことですか?そんなことはない。時には泳ぎ方を忘れた魚のように思い出に沈んでいくことも現行のストレスから逃避する手段としては有効なのである。べつに科学的な根拠はないですよ。
ところで今、ハードコアがブームなのを知っていますか?知らない?はい、今僕がブームにしました。だってかっこいいじゃないですか?本当にかっこいいものが流行らないってなんでなんですか?
ロッキングオンフェスのような北朝鮮のマスゲームみたいに同じ方向を向いてで同じ盛り上がり方をするサブカル風フェスじゃなく、もっと自由で本当の意味でのアングラ。青空で暑いフェスなんかよりも暗くてヤニ、酒くさいライブハウス。僕としてはこれが最高。リリー・フランキーを祭り上げるサブカル界隈なんて沈んでしまえ。
ということでここから僕が是非とも皆様にハードコアというアングラを一人でも多く体験していただきたく、ご紹介に預かった次第です。
Negro Terror – Voice of Memphis – Recorded Live @ Al Town Skate Park
WANIMAってこんなに黒くてゴツくてイカつかったけ?と思わせるアメリカ・メンフィス出身の黒人三人組のハードコアパンクバンド。サムネのインパクトとメンバーのヴィジュアルがエゲついな。この人たちが「NHKをぶっ壊す」って言ったらまじで物理的に戸愚呂弟より早くNHK本社をぶっ壊して平らにできそう。
黒人のパンクバンドといえばBad Brains。フュージョン上がりのパンクバンドなので演奏技術もすごい。だけどNegro terrorは全然違う。USポップス総トラップビートとラップの時代にバンドサウンドは至極真っ当な正統派すぎるぐらいに正統派なハードコアパンク。時代を逆行するスタイル、カッコ良すぎる。
是非とも来日してもっとこの日本国でシン・ゴジラの如く暴れまわってもらいたいと思っていたけど、この一番ゴツくて怖そうなベース・ボーカルのOmar Higgins、2019年の4月に亡くなっていたんですね。R.I.P
END RESULT
真っ当なハードコアなんだけど特筆すべきはこのギターのノイズ。
フィードバックのノイズ自体はハードコアでは良くあるんだけど、このバンドの場合、しっかりとコントロールされた上で出したい音も計算されている。こんなバンド、ハードコア抜きにしてもあまり見られない。トム・モレロぐらいじゃないか。
「あぁ、こういうハードコアギターの解答方法もあるのか」とギターのノイズが脳みそにヘッドショットを喰らわせてくれる。
CYCOSIS
どのライブ映像を見てもギターのタケコプターにしか目に入らない。多分、フライングタイガーで買ったやつだな。いや、ハゲとったんかい。
そしてなんだこのアンバランスなヴィジュアル構成は。ハードコアの中に一人ゆるキャラ。ライオンの群れの中にウサギがいるような感じ。肉食獣の中にウサギが混じっていたら「うわ、このウサギまじでやべぞ」って思いませんか?そんなヴィジュアル構成だよ。最高だ。
僕の趣味なのかこういうザックザクのスラッシュなギターリフとハードコアなボーカルワークがドンピシャすぎる。そんでギリギリメタルな部分とギリギリハードコアな部分を攻めててかなり器用なバンドだと思う。
NIGHTMARE – Thirsty And Wander
日本のハードコアってこうだよなっていう問いに正解を持ってくるとしたらこのNIGHTMARE。巷の年寄りロック親父たちは「ライブこそがバンドの命」っていう。そういう眠たいことを言う前にシジミ100%でも飲んでろ。そして「だったらこのNIGHTMAREが一番すごいだろう」と思う。
このNIGHTMAREというバンドはとにかくライブが凄まじい。多分、ほとんどの人がライブを見たあと、聞き惚れするし、後ろの方で見ていたはずが知らぬ間にピットサークルの中に入ってしまっていると思う。演奏が終わればマジで感動する。
言葉にするならシンプルに「破壊力」ただそれのみ。小難しいテクニックとか速弾きもいらないんですよ。もちろんバンドとしてのサウンドもギターがロックンロールしていてかっこいいんだけど回答がシンプルだからこそカッコいい。ハードコアってそういうものじゃないですか?そういった疑問に思っていたことの答えを教えられたようなバンドです。
THE NO EAR
山梨県甲府出身のバンド、THE NO EAR。結成して15年でようやく2017年にフルアルバムを出すことができた。勢いはもちろんすごいが、長年培ってきたバンドとしての抜群のアレンジ力とメンバー同士の息の合わせ方は流石です。
多分、これからもっと売れていくだろうハードコアバンドだと思うので、この株を買うなら今のうちですよ。
終わりに
他にもまだまだオススメしたいハードコアバンドはたくさんいる。いすぎてどれを紹介しようか正直かなり迷う。
今回はYoutubeのリンクを載せて紹介しているけど、是非とも家を出てライブハウスでハードコアのアングラを体験してほしい。正直、音源だけではハードコアのよさを二割ぐらいしか紹介できない。
轟音、絶叫、客席が三位一体となって完成する言ってしまえば完全芸術のようなもの。「アートは自由だ」っていう人がいるなら多分、このハードコアというアングラ空間こそが最高のアートだと思う。これを体験するには実際に聞いて見て感じることしかできない。だからネット媒体だけでは紹介ができないのだ。
「書を捨てよ町へ出よう」と寺山修司が本を書いてたけど、現代なら「目の前にあるパソコンを拳でぶっ壊してスマホをバッキバキ」になるだろうな。
それでは