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アツいパンクを求めてる人ってmanchester school≡を探していたんじゃないか?

文:田渕竜也


 嗚呼それにしても。嗚呼なんでこんなにも。私は巷で「音楽が好きって」言う人たちに絶句している。
話は音楽が好きっていう人に「好きなバンドは?」って聞いて「あいみょん」と答えられたことにある。確かに今の邦楽においては重要な人物だ。僕自身、昔の彼女は置いといてマリーゴールドはいい曲だと思うよ。
いやちょっと待てい、あいみょんは女性だろうが。ソロアーティストだよ。せめてshishamoとでも答えてくれ。
こっちはバンドの話をしてんだ。

オタの壁

 ただこの質疑って一般の認識としてはあいみょん、米津、RADWIMPSとでも言えば「あぁロックが好きなんだね」「詳しいね」って認識になるんだと思う。多分このあたりがギリギリの音楽好きのグレーゾーン。オタとの断絶の壁。アニメでいうとドラゴンボール、ナルト、ワンピースみたいなもん。Crystal lakeやWorld end manなんかの名前を出したらただのミネラル水か新しいエナジードリンクとして認識されてしまうんじゃないかと。

 恐らくバンドが好きってクリープハイプ、カナブーン、フレデリックで「めっちゃロック好きなんだね」ってレベル。涼宮ハルヒを「オウフwwwいわゆるストレートな質問キタコレですねwww」って勝手に語り出すオタと同じぐらい。

 この流れで考えるなら街中のキャパ数100〜300人のライブハウスにまで足を運んで見知らぬバンドを見に行く人なんて一般認識に於いてはオタ壁を飛び越えてキチガイ沙汰。

 どのくらいかを例えるなら鬼滅の刃の作画の凄さに沸く令和元年にらいむいろ戦奇譚、りぜるまいんを未だに見ていて「オウフwwwそれはですねwww」って勝手に語るぐらいヤバイ。今の時代にらいむいろ戦奇譚、りぜるまいんを語れる奴なんて南極、グリーンランドの人口より少ないと思うぞ。こんなやつらオタの中のオタ。キングオブオタだよ。

 そのぐらい正直言って、インディーズを追っかけるって正気の話じゃないんですよ。

 だけどやっぱり僕個人的なフェチズムになるんだけど、小さなホールで爆音のギターをかき鳴らす様と全身全霊のパフォーマンスにワナワナと震え喜び、脳内ではアドレナリンが滝のごとく分泌されまるわけなんです。
 全てを打ちのめしてくれるバンド。やっぱりそういうバンドをロックは死んだとドラクエの呪文のように毎度、唱えられる現代においても皆さん待っていると思うんですよ。
 そんな僕のハードコアフェチズムに直撃のバンド。関西にいます。その名前はmanchester school≡。日本語で書くとマンチェスタースクールです。それではどうぞ。

アルツ&ハイマー

PVのロケ地がメッチャ狭い。この曲の歌詞に出てくるフガジってバンドは美術館でライブやってたけど、この人らカラオケでPV撮ってる。すごくパンクだ。いやこれでこそパンク。

パンクの形

 パンクって簡単そうに見えて実は難しいと思うんですよ。
 別にスリーコードでギターをかき鳴らしてベースはルート弾いてドラムは早く8ビート叩けばめっちゃ極端に言ってしまえばラモーンズ風が出来上がる。完成はするけど大体のバンドが似たり寄ったりな音楽性になって大抵のパンクバンドってバンド沼に埋もれて人知れず沈んで消えてしまう。そうやって10年前に流行った青春パンクバンドも大量に消えていった。

 だけどそんなパンクシーンでもラモーンズは生き残ったし、グリーンデイは相変わらずスリーコードで名曲を作っている。埋もれない消えないパンクもいる。

 そういうやつらって他のパンクバンドと何が違うかっていうと自分たちの印鑑みたいなのが出来上がっている。
 印鑑の文化って正直メッチャめんどくさいじゃないですか?なんでサインでいいのにいちいち印鑑を探さないといけないのか?というのは私事だけど印鑑って同じように見えてちゃんとカッコいいロゴみたいなやつとかってあるじゃないですか?一家に一つはあるちゃんと作ってもらったやつ。そういうやつって何回押しても型がカッコいいから何度使ってもカッコいいハンコができる。それと同じ。
 ラモーンズならラモーンズの印鑑がある。スリーコードだろうが8ビートだろうがなんだろうがどシンプルなことをやっていても必然と出てくる魅力というもの。そういうバンドって見ても聞いてもカッコいい。

 まぁようはオリジナルか否の話なんですよ。

 よくいるじゃないですか?ちょっとムーブメントになっているバンドがいるからってすぐ食いついて自分たちのものにしようとする人たちって。
 これってやってることは中国のドラえもんランドやニセディズニーランドと同じ。似たようなもんだからいけるっしょの精神。中国のこと笑えないよ本当に。
 だけどやっぱり偽物って結局は消えていく運命なんですよ。青春パンクのその後を見れば一目瞭然だと思います。

「欲」というストレートな煩悩

 manchester school≡ってそういう側面が一切見えない。ちゃんとバンドとして自分たちのオリジナルなパンクを作ってる。自分たちの印鑑がある。こういうのってありそうでなかったなって表現がすごくピッタリなのかも知れない。本当にいい意味で型にはめられないんですよ。枠からはみ出てるというか。額縁の外まで絵を描いちゃってるというか。

ラストシーン

 どのパンクバンドに似ているかって聞かれても何も出てこない。速さ、メロディーあとメッチャ派手なベースライン。やっぱりオリジナル。manchester school≡というパンクのジャンルが完成されている。

 WANIMAをはじめパンクってなぜか大衆化していくとどんどんとファンキーモンキーベイビーズ化していくじゃないですか。やれ「ありがとう」とか「感謝」とか言い出してネテロ会長かよ。

 そんなパンクの時代の中、ここまで自分たちの「欲」というものを押し出しているパンクって久しくいなかったなって思う。恋愛の葛藤や感謝とかじゃなく一番人間らしい「欲」という名の煩悩。なんかよくわからないけどとにかくもどかしい感じ。中身が少年的というかなんというか、本当に大人にならないストレートな感じ。
 この「欲」をどこか懐かしさを感じるセンチメンタルなメロディーにハイテンポという音楽性。KIDSっていう曲は結構奇抜なんだけどしっかりとポップに落とし込んでるからちゃんと老若男女問わず誰でも聞ける。

“KIDS”

 そういったストレート性とそれを爆発させる演奏とステージが相まってすごくアツくタイトでバンドとしての型がバシッとキマっている。特筆すべきはボーカルのハルロヲのステージ上でのハイテンションなパフォーマンスとベースのジュンペイくんの謎の雄叫び。何叫んでるかわからん。面白い。なんでロージアを弾いているんだ?面白いけどキャラ立ちが謎だ。サンシャイン池崎的ななにかだろうか?だけどとにかく見ていて楽しいしカッコいい。

  僕としてはすごくこういうアツいバンドを探していたし、このアツさを求めている人がいると思う。実際、manchester school≡のライブを見て「バンドというものが好きでよかった」と思ったし。

  今のメインストリームの音楽ってみんなすました大人びた音楽が多いじゃないですか。都会のアーバンな感じなやつ。確かにそれもかっこいいと思う。かっこよさ、クールさを計算し尽くされた人って頭もいいしそういう人には敬意を持っている。
 だけどそうじゃない、もっとなんか湧き出てくるものアツさやっぱりバンド音楽を求めてる人ってこれを求めてるんじゃないかな?そんな音楽を探している人にmanchester school≡を是非ともオススメしたいです。

 あと、彼らの音楽はライブでみると音源のさらに数千倍はカッコいいです。

 それでは。

田渕竜也のTwitter

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