周りから良い人と思われたい君へ

文:なかむら ひろし

 クリスマスも終わり、あっという間に年の瀬ですな。エンジョイしまくる人もいれば、ゆっくり過ごすなんて人も。「仕事だよ!バカヤロー!」なんて人もいることだろう。

 この時期に仕事が忙しいのは主にサービス業だと思うんだけど、特に学生アルバイトが主力だったりする飲食店なんかは大変なんだよね。学生ってクリスマスや年末年始とか何かイベントがあると遊びたがるから、なかなかシフトに入ってくれないという問題が発生しがち。人手が足りなくて単純にワーカーひとりひとりの負担は増大するし、客にも迷惑がかかる。クレームにまで発展したら最悪だ。心中お察しします。

 まあ、そんなこと言いながら、私も学生時代に飲食店でアルバイトをしたことがあるけど、クリスマスや年末年始にシフトに入ったことなんてほとんどない。だって、クソ忙しいだけで時給もほとんど変わらないし、友達や恋人と過ごした方が楽しいからね。繁忙期にシフトに入れるなんて言って採用されたわけだけど、そんなの無視だよね。

 とんだクソ野郎だなって言われそうだが、私が働いていた店の店長も意識の高いバイトリーダーもクソ過ぎたというのが原因。人を駒としか見てないような感じ。真面目で優しいシュウ様みたいな店長だったら、自然と助けてあげようという感情が芽生えたかもしれないけど、まったく無かったね。

 え?シュウ様を知らない?そんなあなたは今すぐ『北斗の拳』を読んでくれ。

シュウ様

南斗白鷺拳の伝承者、仁星の男。レイとは親友関係。「反帝部隊(レジスタンス)」のリーダーとして聖帝軍と戦っている。少年時代のケンシロウの命を救うため、自ら両目の光を捨てるなど、作中切っての聖人君子。シバという息子がいて、彼にもまた仁星の血が流れており、めちゃくちゃ良い人。

 聖帝軍は拳王軍に匹敵するほどの巨大軍閥。聖帝サウザーのテーブルには食べき切れないほどのご馳走が並ぶのに対して、反帝部隊は戦闘に関してはど素人の烏合の衆、タートルズみたいに下水道っぽいところを拠点に身を隠していて、一日一日の食糧にも困っているほど戦力差は歴然としている。これは聖帝サウザーとシュウ様の実力差以上だろう。

 世紀末の世界は暴力が支配する世の中、ヒャッハーな荒くれ者がうじゃうじゃいる。聖帝軍はそんな荒くれ者を子供を誘拐してきたら仲間に入れるという破格の条件で積極採用しているのだから、どんどん拡大していく。かつてシュウ様と南斗聖拳を学んだというリゾっていう良い人そうな感じの人まで聖帝軍に入ってるぐらいだから、聖帝軍が圧倒的なのも頷ける。まあ反帝部隊が真っ向勝負したところで勝ち目はない。

 シュウ様にはリーダーとして必要な能力のひとつ、人望は備わっているけど、競争社会を勝ち抜いていくためにはそれだけじゃいけない。非情さや狡猾さっていうのも求められる。報酬はそれなりだけど、しっかり休めて、無理せず働ける環境を求めている人って相当数いると思う。だけど、競争に負けて、いつ会社が潰れちゃうかもわからないとなると、アルバイトならまだいいとしても、正社員となると話は変わってくるよね。そういう意味では、リーダーには非情さも必要なのかもしれない。

 だけど、仁星のシュウ様に非情なことはできない。仁星とは未来への希望に生きる宿命。シュウ様にとって、未来=子供たちだから、子供たちの前でどんな手を使ってでも勝てば良いなんて采配を振るうわけにはいかない。シュウ様が子供たちに教えたいのは、勝つことよりも、仁徳の尊さなんだよね。そして、その子供たちが戦いのない、明るい未来を築いてくれることを期待してるわけ。その子供のひとりがケンシロウ。そして、ケンシロウが聖帝サウザーを倒すわけだから、シュウ様も報われたよね。ただ、現実はそんなに甘くはない。

 私が学生時代に働いていた店の店長が真面目で優しい良い人だったとしても、それに甘えて「クリスマスや年末年始にシフトに入らなくても何も言ってこないんじゃね?」と同じ結果になっていたかもしれないことは否定できない。やっぱり良い人って、それにつけこまれることが多いんだよね。

 他者から良い人と思われたいとか慕われたいとか思うことって、とても自然なことだと思うんだけど、それを利用しようとする輩が相当数いることは無視できないわけ。そういう連中の要求はきっぱり拒絶できるメンタルは必要になるよね。どんな要求もなかなか断れない人は本当に損をすると思うよ。

 かと言って、ただただ己の利益を追求し、非情になった方が得なのかと言われたら、それはもちろん違う。最終的に人を評価するポイントって、良くも悪くもやっぱり人格だったりするんだよね。上手くいっている時は良いかもしれないけど、ピンチになった時ほど、他人はそういう人を見捨てる。

 ベストなのは当たり前だけど、良い人と思われながら、そこにつけこまれて損をしないこと。どうすれば良いかって話をすると、基本的に真面目にやってれば良い。そして、余裕があれば、簡単なことで良いから他者のために動く。頼みごとをされたら出来る範囲で引き受ける。これでオッケーだ。重要なのは「余裕があれば」「出来る範囲で」という部分。無理をしないことが絶対条件だ。

 余裕がないのに他者のために動くと、肉体的にも精神的にも磨り減らし、相応の対価を求めたくもなる。最終的には他者に負の感情を抱く危険性が高い。そして、出来ないことを安請け合いしてしまうと、失敗したときに自分の評価を下げてしまうので注意したい。無理はしない。これが本当に大事。

 漫画やドラマなんかでありそうなシーンで例えると、大人なら手を伸ばせば届くところに引っ掛かった風船を子供のために取ってあげただけで、その人物が良い人に見えない?そんな簡単なことを積み重ねるだけでもかなり印象って変わってくると思うよ。

 シュウ様のように皆から慕われたいけど、聖帝十字陵の人柱にはなりたくないという方は参考にしてみてくれ。それでは健闘を祈る!

なかむら ひろしのTwitter

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