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いつの時代だよ!カオスティックローカル歌番組『生×カラ!TV』

文:田渕竜也


 音楽番組という単語も久しく、ほぼほぼ死語になりつつある昨今。かつては月曜のHEYHEYHEY、水曜のうたばんそして金曜のMステが90年代の学生たちの中ではライフスタイルの一つになっていた。だからこれらをみてないと次の日話についていけないし見てないと浦島太郎状態みたいなこともあった。
 しかしそんな音楽番組も今では焼け野原である。世の人気だった音楽番組たちはバッタンバッタンと打ち切りにあいかろうじてジャニヲタに延命治療されているMステがなんとかもちこたえていてそれ以外はど深夜という状態。
人気低迷の理由を「若者の音楽離れ」という言葉で簡単に表したりするけど、もちろんそんなのは嘘っぱちだ。若者はフェスには行くし、King gnuやあいみょんなどスターだって登場している。
考えられるのはYoutubeで観たりテレビで見る必要がなくなった。それでネット砂漠に転がっている光る原石が見つけやすくなった結果、音楽番組という情報発信が必要なくなった。だから音楽番組という役割は今役割を終えようとしているんじゃないかと。

 だけど「音楽番組はオワコン!!」と言ってもやっぱりメディアとしてはチカラはまだ巨大なわけでMan with a missionがフジテレビの音楽特番に出るだけでネットでは盛り上がるし、ツイッターのトレンドでは上の方にマンウィズって出てくる。そのぐらい影響は強い。
 それならネットにも影響力があるんだったらもっとバンドを出せばいいじゃないか。と思ってしまうけど現実問題としてその知名度や印象の観点からやっぱりスポンサー的には難しんだと思う。無難にジャニーズとか秋元軍団、Exileでいつもお茶を濁すいつもの音楽番組の流れになってしまう。そもそもバンドっていうも市場よりもアイドル市場の方がでかいしね。
 
しかしであるこれだけメディアとして影響力のあるテレビ番組だけど治外法権というかなんというかテレビ界のトワイライトゾーンというものが確実に存在していて、そこにはなんの影響力もないカオスがそこに存在していたりする。

ご存知でしょうか?『生×カラ!TV』という番組を。

 夜な夜なクソ映画を探したりホラー小説なんかを読んだりしてるんだけど、日曜の深夜に重すぎるバッドエンドのイーストウッドの映画もしんどいのでたまに何気無くサンテレビを付けっ放しにボーッと檸檬堂飲みながら見ていることがある。そんな中で何気無く目に留まってしまうのが

 これ。どういう集まりなん?ゆで卵にアパ、ヒゲのおっさんに舞踊ババア。メンツが濃すぎてツッコミきれねぇ。
 番組の始まりはいつも発声練習から始まる。ていうかアパが審査するのかよ。この発声練習、5点は合格で3点は不合格という基準らしい。それにしてもいつの時代にタイムスリップしてきたんだと錯覚すらしてしまう。


 広告も古くせぇ以前に田舎のお祭りのチラシか何かか?ワードで作りました感半端ない。

 一応はオーディション番組ではあるんだけどちなみに審査員は…。

 なんか目にうるせえ。かいつまんでこれについて説明をするとアパ社長、あずさ二号を作曲した人、板前、舞踊の師範、介護事業の社長など多岐に渡るどころか紐がめちゃくちゃに絡まってるよ。まともなのあずさ二号しかいない。板前が鉄人部門の審査員ってお前…。なんでもありすぎやろ。誰か鉄人部門について説明してくれ。
 一応、この板前について補足をしておくと大田忠道っていう板前で経歴も真っ当な板前。しかもあの天皇陛下から褒章を頂くほどのすごい板前。歌の実績なんか全くないけどめちゃくちゃすごい人。

 あと司会者は青芝フック。知らないだろ。めっちゃ大物ズラしてるけど私も知らん。っていうか本当にお前らが審査するの?なんか危ない自己啓発かアムウェイか何かか?

 それからこの番組のルールを一言で説明するとなんか知らないけど段位が昇格すると師範代に認定されてあずさ二号の作曲者からオリジナルソングが提供されるらしい。そのあとどうするのかはしらん。

 出てくる人達はみんな多分、場末のスナックの張り紙を見てきたであろう人ばかりだ。厚化粧の人や老人が主な素人出演者。

 アメリカンアイドルと比べるのもおこがましいどころかなんだけど本当のマジの素人しか出てこない。なんか手の震えてる老人なんかも出てくるし。ホームページにオーディションって書いて合ったけど本当に審査してんの?落ちた人達の方がというより落ちるほどの倍率があるかが気なる。

 確か僕がこの番組を初めて知ったのは学生時代、バイト先のバンドマンの人が「今度、テレビに出る」って言われ出演していたのがこの番組だった。いやおかしいだろ。スナックのママとかならまだしもバンドマンが出ても何も起きないどころか笑い話にしかできない。それにこの映像を見ても普通に「なにこれ?」ってしかならないよ。ちなみにその人はなんか演歌を歌ってました。

 この番組、別につまらないってわけじゃないけど、最後まで見続けるのは苦痛で辛い。精神がぶっ壊れてしまいそうになる。なぜだろうか?この番組と出会ってからずっと気になっていた。

「素人が度肝を抜くような人ばかりだからでしょ」

 まぁそれも一つの考え方だ。下手な演歌をずっと聞き続けるは確かに苦痛で疲れる。あとテレビ映えしない人しか映らないし。しかしもう一回見直すとよーくわかった。皆さんもちゃんとこの番組を見て欲しい。たったの30分ぐらいだ。地獄だと思っても見ろ。私はこの記事を書く為にこの番組を3週したんだぞ。

 苦痛の最大の理由はどこまでもねじ込むひどい出来のCMと告知の数々だ。多分この30分近くの約7割ぐらいがCMと告知がねじ込まれていくんですよ。少しでもスキがあればどこまでもねじ込んでいく。カラオケレインボーのかつみさゆりもキツイ。まるでバナー広告だらけのエロサイト見たいな番組。
 それにしても本当にこの告知の数々、誰が作ったんだよ。フォントのセンスもひどいし、配色センスは目に悪すぎる。この他にもパワーポイントのスライドで作ったような告知の画面が妙にレトロ感を醸し出す。

 この番組ずっとこんな感じなんですよね。とにかく製作陣が素人。それもセンスのない素人が作った番組。多分、予算云々の問題じゃないんですよ。

 こんなカオスティックローカル歌番組の話でとやかく言う筋合いはないが、本当にこの番組を一言で言ってしまうと「ど素人制作のど素人歌番組」。

 ずっとこんな感じでこの番組が悪いような文章の書方をしているが、僕個人としてはこのど素人番組嫌いではない。辛口に上から目線で審査をするアパ、意味不明なコメントをする舞踊ババア、いい肉の日と歌が上手いをうまくかけてコメントをしようにもスベる板前。このなんとも言えないヒリヒリとした素人感がむしろ謎のやみつき感があってつい見てしまうのだ。

田渕竜也のTwitter

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