3.11からまったく成長してない人たち
新型コロナウイルスによるパンデミックの危機が騒がれる中、マスクの転売やトイレットペーパーなどの買い占めが騒ぎを起こしている。あなたは覚えているだろうか?東日本大震災の時にお店の棚からモノが消えたことを。乾電池が高値で転売されていたことを。本当になんにも成長してねえな。買い占めや転売をコンピュータによる高速取引が可能になったとか、メルカリやラクマなどの普及によって、個人売買が容易になったとか、テクノロジーの発展のダークサイドとして取り上げているところもあるけど、問題はそこじゃない。
最初に高値で転売することの何がヤバいかって話をしておこう。その最も大きな理由は本当に必要としている人の元へ行き渡らないことなんだけど、その企業や業界を衰退させる危険性を孕んでいるんだよね。
例えば、ゲーム機を想像してみて欲しい。ある人は定価3万円のものを転売ヤーから5万円で購入し、ゲームソフトを定価で1本購入したとしよう。この人はわざわざ転売ヤーから高値で購入するぐらいだから、きっとゲームが好きな人なんだろうと予測できる。もし、この人が定価でハードを購入できていれば、追加でゲームソフトをあと1,2本購入したかもしれないんだよね。これはゲーム会社からしたら、立派なチャンスロスを生んだと言える。
また、ある人は子供からクリスマスプレゼントにゲーム機が欲しいとねだられていたが、5万円+ゲームソフトでは予算オーバー。定価で買えるようになったら買ってあげると子供に約束をした。しかし、再生産によって、定価で買えるようになった頃には子供はゲームから興味が離れてしまい、別のモノにして欲しいと言われてしまった。これはゲーム業界からしたら、新規顧客の獲得に失敗したと言える。
こういうことから高値で転売することは企業や業界にダメージを与え得るってことだよね。まあ、企業が需要を満たすだけの供給ができず、安すぎる定価を転売ヤーが市場原理による適正価格に改めたとも言えるわけだけど、金銭で購入することができるモノやサービスすべてが富裕層から優先的に購入できるって考え方が批判されるは当然と言えば当然だ。
音楽やスポーツなどチケットの転売対策が進んでいるのはこういうところなんだろうね。発売開始からものの数分で完売するようなイベントって結構あるけど、主催者側がチケット代を吊り上げることってほとんどないでしょう?ティーンから絶大な支持を集めるアイドルのライブチケットを売れるからと言って、それまで5千円だったのを5万円とかにしちゃうと、ファンを近付けるためのライブのはずが、そんなにお金を持っていないであろうティーンたちを遠ざけ、新しいファンを開拓するのも難しくなってしまう。
次にそんな転売行為は実際儲かるの?って話だけど、私はそんなに儲からないというより、損しかないと思っている。転売で儲かる期間なんてほんの一時だけ。ある商品が不足したらメーカーは追加生産するので、いつまでも同じ商品を転売し続けることはできない。常に不足するであろう商品を見付けていく必要がある。ゲーム機やチケットなんかになると、大量に仕入れること自体が難しい。そんなことに労力を費やすくらいなら、株をやったり、新しい事業を興す、いや趣味に費やした方が有意義だと思う。そもそも物流を混乱させて、日本経済にダメージを与えている時点でその影響は自分にも返ってくるし、堂々と他人に言えない仕事をするのって、精神衛生上良くないよね。
ただ、ぶっちゃけゲーム機やチケットなんて、興味がない人からしたら、いくら高値で転売されようがどうでも良い話。それほど大きな話題にはならないわけ。転売なんて昔から行われていたことだよね。今になって殊更取り上げるようなことじゃない。じゃあ、マスクやトイレットペーパーがこんなに炎上してるのは何故なのか?って話だけど、それは生活必需品だからに尽きるよね。
食料品や医薬品、水道や電気など我々が生きていく上で必要なモノやサービスに関しては、不当に価格を吊り上げることが法律で禁じられている。社会に広く行き渡らせないといけないからだ。生活必需品を法外な価格で転売することに罰則規定を設けるなんて話があるが、これに関しては「全部転売ヤーが悪い」とは言えないわけなんだよね。まったくの無意味とは思わないけども。
次に買い占めが何故起こるのかって話をしよう。一言で言うなら、それは目の前にある漠然とした不安だろう。トイレットペーパーが品薄になるという話はどうやらデマだったらしいけど、実際にドラッグストアなどに行ってみると、品切れのお店が相当数存在している。デマが現在になったわけだ。トイレットペーパーが品薄になるかもしれないという話を聞いたら、買いだめておこうと考えるのは極めて自然かつ合理的な話だよね。
自分ひとりが余分に買わなかったところで大局に影響はないし、余分に買っても腐ったりせず長期保存できるし、必ず使うものだから、買いだめておいて損することはほとんどない。家に大量にあっても邪魔というくらいだろう。短絡的に考えると、マスクやトイレットペーパーは買いだめておく方が賢いんだよね。そんな賢い方々のことを何て呼ぶか知ってる?『自己中』って言うんだよ。自分が良ければ、それで良い。最高だね。
皆がトイレットペーパーをひとつ余分に買っただけで、お店は二倍のトイレットペーパーを仕入れないといけない、メーカーは二倍のトイレットペーパーを生産しないといけない。あんな安いのに場所を取るモノを二倍も在庫を抱えないといけなくなるお店も辛いよね。そして、騒ぎが収まると買いだめた分から消費していくから、しばらく売れなくなって在庫過多になる。不安に苛まれると、そういうことが考えられなくなるんだよね。3.11の時に買い占めは良くないって学んだはずなんだけど、お店の棚が空になった映像の方がより鮮明に記憶に残っているのだろう。
それで最も罪深いと思うのが、不安を煽るような情報を拡散するマスメディア。お店の棚が空になった映像を何度も報道して不安を煽りながら、買い占めは良くないと言う。それなのに、増税前にはアレを買いだめておいた方が良いとか言う。もう3.11どころか戦前からまったく成長してねえ。日本を破壊したいのか、単なるバカな正義感からなのか。
まあ国民はもっと冷静になれよってところかな。ひとりひとりの独善的な行動がうねりとなって、社会に大きな影響を与えるんだぞと。