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検証!人気のあるバンドにはヒゲ要員がいる。

文:田渕竜也


人は見た目が9割って言われる。

確かに考えてみれば髭面でずっと髪を切らないでボサボサ、そしてフケだらけのデブなんていくらいいやつでもそもそも誰も近づかない。
「オデ、ニンゲントナカヨクナリタイ」と心は優しいグロテスクなジャバザハットのような魔獣に言われても我々人間も一応は動物だから本能的に危険と判断して近づくのはできない。
別にこれは差別とかなんでもなく勝手に脳が判断するのだ。

清潔感。

どうにもこれが多分、見た目9割と言われる所以じゃないかと思受けど逆に考えれば話は単純である。
クロちゃん、フットボール岩尾、アンガールズがちゃんとテレビに映れるのもちゃんとスタイリストが綺麗にしているからだ。髪を切る、ヒゲを剃る、肌も綺麗にしていれば、クズでブサイクなやつでも近づきやすくなる。たったそれだけでも近づいて残り1割である「中身」を知ることができるのである。
お菓子のパッケージだって食欲を誘うパッケージじゃないと誰もその袋を開けませんからね。「食べたらうまい」って言われても袋を開けてもらわないとそんなものを知る由もない。

それにしてもヒゲ。なんであんなものって生えてくるんでしょうかね。髪だって陰毛だって脇毛だって毛って身を守るためにあるもんじゃないですか。じゃあヒゲってどこを守るんですか?鼻の下、頬、顎。
どこを守ってんだ。顔を守るなら初めから髪と同じでしっかりと生えとけよ。なんであんなに中途半端で無駄に太い毛が生えてくるんだ。
会社に務める一般社会人となればヒゲを剃る日常が生まれる。あんなに無駄な時間はないよほんとに。ヒゲ、そう成人男性の敵でもある。

しかしだ。そもそも清潔感って一体なんだ?ヒゲを生えていてもちゃんと清潔感のあるジェントルマンな雰囲気のダンディな人はいる。ココで勘違いしてはいけないのが、ちゃんと手入れしたヒゲかどうかだ。
そう手入れしていれば長い髪もヒゲも武器になる。

ちょっと考えてみよう。ヒゲのある竹野内豊とお肌パイパンの竹野内豊でどちらが竹野内豊と認識できるだろうか。答えは猿にでもわかるけど当然ながらヒゲのある竹野内豊だ。じゃあヒゲのない竹野内豊って一体なんだ?これはもう認識できない一般人と同じなのである。

だからヒゲというものはアイコンとしての機能を持つ。思い返すとKing gnuなんかもボーカルがヒゲ生やしてからようやくボーカルの顔を認識することができた。

だからヒゲって清潔感以上にキャラ付けのためのものでもある。

ある時何気なく気付いたことがあって、それは「勢いのあるバンドにはヒゲ要員」がいる。どんなキノコヘアーのバンドだろうがなんだろうが絶対にヒゲ要員がいる。これは間違いない。
ふとライブステージの目線をそらすと何故かいるんですよ。ヒゲが。ある時は帽子を被ってたり、パーマのロン毛だったり、またはヒゲを三つ編みにしてピンクに染めたり。

ここでミソなのは基本的にベーシストはやっちゃダメなんですよ。とりあえず永久脱毛でも行ってパイパンにでもしといた方が無難。ベーシストはなぜか坊主かスキンヘッドの方が多いですからね。
思い返してください。レッチリのフリー、Mudvyneのベース、神バンドのBoh然り。どうやらベーシストというものは清潔感が一番必要なのではと思う。

話は少し逸れたが、いくつかのバンドを上げてヒゲを検証してみよう。

9mm Parabellum Bullet

まずは00年代を代表するところから始めてみよう。
説明不要のライブスター。一時期はこんな感じのギター弾きまくりキッズが多く生まれその憧れだった、9mm Parabellum Bulletのギター滝善充。
最近では髪とヒゲが繋がっていたのを顎髭だけ残し揃えて、髪型も整えていておしゃれで清潔感が目立つようになってきた。
このPV時期をヒゲや滝善充だけじゃなく、モジャモジャや前髪なが男など多分、一般社会の衛生的にはアウトな見た目かもしれない。
しかしこれが9mm Parabellum Bulletっていう形が出来上がってるし、過激な音楽性と見た目もちゃんとリンクしてあってしっかりと様になっている。

人間椅子

日本の文学が生み出した傑作にして、ヘヴィネスと音楽が進化していく革新性と文学性が混じり合ったモンスターバンド人間椅子。
おそらく今、一番世界で勢いのあるバンドだろうと思う。そんなバンドのフロントマンにしてギタリストの和嶋慎治も例にもれなくヒゲである。
白塗りの鈴木研一や田中泯の舞踏という濃すぎるぐらいに濃いMVでもそのヒゲのヴィジュアルは目立つ。
バンド自身の異端性の高さと和をコンセプトにしたヴィジュアルがなお一層、ヒゲが文豪感が強調されている。
この和嶋慎治の文豪感こそが世界的人気を集めていく一つのキーポイントなのかもしれない。ヒゲのある和嶋慎治とない方で想像してみればそれは容易に想像はつくだろう。

SiM

グルーヴィかつヘヴィなサウンドが魅力のバンドSiMにあって、コープスペイントというビジュアル面を強烈に押し出すボーカリストのMAH。
彼はめちゃくちゃヒゲというより顎髭のヒゲを整える短めである。
とにかく清潔感がある。ヘヴィなバンドのメンバーと思えないぐらいの清潔感。しかしこのバンドのボーカルにヒゲがなかったとしよう。どうですか?全然印象に残らないと思いませんか?
もちろん前提としてかっこいいバンドなんだけど、たったこの顎髭だけで全然印象が変わる。

八十八ヶ所巡礼

なんていうジャンルでいいのかよくわからないけど八十八ヶ所巡礼のベーシストにしてフロントマンのマーガレット廣井は多分だけど去年ぐらいからヒゲを生やし始めたんじゃないかと思う。
ツッコミどころに困るヴィジュアルは人間椅子に近いけど、音楽性はよりグルーヴィだ。ベーシストはパイパンにしろスキンヘッドにしろと暴言を言ったけど、訂正しておく。正しくは「ベースボーカルはヒゲを生やしてもいい」だ。
明らかに去年あたりから大衆にウケる音楽性に変わってきたけど、そのカッコ良さとメンバーそれぞれの個性の引き出し方はやっぱり唯一無二。
それと相まってマーガレット廣井がヒゲを生やし始めた。やっぱりメンバーにヒゲ要員がいるとなんていうか画面がしまる。というよりメジャー感が出るよな。

tame impala

トリップ感と浮遊感を重視するジャンルであるサイケデリックバンドにして今一番世界で売れているバンドTame Impalaの中心的人物であるケヴィン・パーカー。彼のビジュアルは上で紹介してきた人たちと違って何処と無く少しだらしなく見える。だけどこれもバンドのビジュアルとしては正解で彼らはサイケデリックをやっているから少しだらしなく見える方がジャンキーっぽいし、トリップ感も視認化しやすくなっている。
ココでもこのヒゲという役割がかなり重要になっている。
何もしないでもなんとなくこの見た目だと浮遊するでしょ?ふわふわとし感じ。つまりそういうことです。

槇原敬之

もう見たまんまのジャンキー。この見た目ならホモだろうがジャンキーだろうが別に驚かない。むしろ安心するよ。あぁやっぱりそうだったんだって。
音楽に全てを全振りした悲しきモンスター、マッキーに敬礼!!

終わりに

ヒゲ要員はまだまだ紹介仕切れないけどざっと検証してみたがいかがだっただろうか?

やっぱりヒゲって音楽性の視認化の他に、バンドが狙うファンのターゲット層に向けたヒゲもあると思うんですよ。
例えば夜中のドンキホーテにいそうな人をターゲットにするならワイルド性という観点でヒゲは大丈夫だろうけど、今回はバンドの話だ。

ティーンズを狙ったマーケティングならヒゲは即剃った方が間違いなく無難。なぜかといえば中性的な見た目の方がウケるからだ。
基本的にマーケティングの年齢が低ければ低いほどアーティスト性って要求されない。
思春期の頃のしょうもない周りの会話を思い出してほしい。「顔が可愛い」「顔がかっこいい」そんな会話が多くなかったじゃないですか?
これって思春期だから顔がかっこいいから惚れるのと同じ原理なんだろうと思うんですよ。だからかっこいいというのも見た目が自分たちの年齢に近い童顔型の中性的。これがティーン女子のカッコいいの正体ではないかと思う。

まぁ要は年齢が低いほどアイドル性が要求されるっていう話。

だけど人間は成長していくもので、やがて求めるものが変わってくる。そのマーケティングのターゲット層の年齢に合わせる必要がある。
例えば20代後半がターゲット層ならバンドの見た目がアイドル性強めではキツイものがある。だってそのターゲット層の周りにはもうその見た目の人がいない上に、見た目が幼すぎて好きに慣れないからだ。

ならどうするかといえばメンバーのだれかに髭を生やさせるのが手っ取り早い。筋肉をつけるよりも手軽だしラクだ。
そうするとグッとアー写の精神年齢が上がるかと思います。

そう、ファンの年齢層に合わせるという効果があるからヒゲを生やしたバンドの人気は安定するじゃないかと。

それでは

田渕竜也のTwitter

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