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ライブは中止にする?それとも断行する?ヒートアップする議論を少し冷静に考えてみよう

文:田渕竜也


あの頃、僕らのバンドの最低集客数はゼロだった。「Mother fucker」なんて覚えたての英語のスラングを対バンの人しかいないホールに向かって叫んでたけど、一体誰に向かって言ってたんでしょうかね。今思い出しても恥ずかしい。そんな観客がいないところでもブッキングライブというものはライブハウスの外まで声が聞こえる。
で、そんなライブでも最終的には1バンド集客がなければ2万近く支払って、その後何もない打ち上げに参加してなんだかんだ大金をドブに捨てるのである。

私は思う。バンドやったことない人って「ライブは人が集まるところ」と思っている人が多いだろうと思う。
けど基本的に8割ぐらいのバンドはゼロとまではいかなくても大体、20-30人ぐらいいれば精々だ。いやむしろ万々歳の数字である。

そんなガラガラのホールに向かって「アメ村行けるかー」って言っても虚しいだけ。何も起こらない。
やみくもにチケットを売ろうとしてもファンなんてマボロシな存在なわけで親族か友人ぐらいしか相手がいない。そんでアムウェイと同じような扱いを受けたり、初めは来てくれてもだんだんときてくれなくなったりしていく。

ライブハウスというものは平たくいうと金さえ払えば誰でもステージに立って夢追っかけてるふりができるところ。それがライブハウスのダークサイドの一面だ。

コロナウイルスの騒動以降、メディアではライブハウスのクラスター感染の報道がながれている。100人以上も入ってたイベントだったらしいけど、僕からしたらむしろすごいなって思うぐらいだ。しかも平日にこの数字。やっぱりすごいな。
報道を見ているとクラスター感染の年齢層に20代の人がいないことに安堵の気持ちと同時に「あぁ、もうライブハウスは若い人ってマイナーな存在なんだな」っていう方に強い危機感を持ってしまう。
だって感染者が30、40代以上がほとんどってもうそれパチンコ屋と同じぐらいの年齢層だ。まぁそういう中年が喜ぶイベントだったのだろうけど、近年言われているライブに行く人の高齢化をありありと感じさせられた。

ところでこの「ライブ」というものについて今、世論は中止にするべきかそのまま対策をやってやるべきかに分断されている。
まぁこういった議論の問題点ってどちらも正論で正しいから終わりが見えないのが問題だ。だからみんなマウントを取ろうとするけど、結局何も決着がつかないで終わってしまう。

今回の議論について冷静に考えてみよう。

人が集まればいくら免疫が高ければ大丈夫と言っても、そこにいる全員が健康なわけがない。だから感染するリスクは確実にある。
さらにうつされた場合、そのあとの打ち上げとか二次会なんかに行ってまたさらに撒き散らす可能性だってある。
こんな感じでウイルスをバズらせてしまった場合のことを考えれば無理に断行するよりも中止を選ぶ方が賢明な判断といえる。

これとは逆にウイルス性の感染自体はどこでもあるわけだし、ウイルスに対抗するには免疫をあげるしかない。
皆さん鳥インフルエンザって覚えてますか?2009年ぐらいに流行ったやつなんだけど、これって今でも流行っているんですよ。結局あれって何も解決せずになんとなく社会にインフルエンザとして受け入れられているんですよ。驚くでしょ?あの時ってこんなに騒いでましたか?自粛なんてしてましたか?やってなかったでしょ?
ちなみに鳥インフルエンザの日本第一号が僕の知り合いというのは別の話になるんですが。
まぁそんなウイルスがウヨウヨと蔓延っているのが僕らの地球なわけだからその上で日常生活に勤しむことがこの資本主義で回っている日本では重要。だからむしろ経済を滞らせる方がダメージがやばいからライブは決行した方がいいという意見。

正直、どちらも正論なんですよ。うつされた時、街がウイルスに汚染されたときの不安。日常にインフルエンザとか風疹とかウイルスが蔓延っているわけだから今回のコロナウイルスにだけ異常に反応するのもおかしいという考え方もどちらも間違っていない。

だけどどちらも自分は正しいと思っているからこの情報を発信している人は誰かの逆の意見は許せないという事態になる。

今回一番議論が巻き起こったのは椎名林檎のライブ決行の件だ。

椎名林檎自体、オリンピックの演出に携わっているわけで、いろんなえらい人らが集まっているからいきなり中止はやっぱり難しい。
それに椎名林檎側自体バカじゃないから国のガイドラインは知っていると思うし。
だからライブに関しては今のところ、感染のリスクはあったとしても条件さえクリアすれば決行するのは僕個人としてはありだと思うんですよ。
一回のライブを中止にするのってかなりの損害が出ますからね。保険とかあるじゃんって言うかもだけどその契約条件にもよるだろうし。そもそもで考えれば東京事変の再結成ライブなんて超がつくほどの巨大なライブを個人の一存では中止なんてできないと思うしね。

だけど開催するにあたってはこちらのワガママで真面目に働いてる人たちの社会を混乱に落とすわけにもいかないからさっきも言ったけど感染リスクを下げるための開催条件はあると思う。
まず、ウイルスの感染の基本が飛沫だったりするわけだから人が押し詰めにすると濃厚接触になるからモッシュと飛沫を飛ばさないための合唱、掛け声の禁止。あとは換気ができれば開催は可能だと思う。
その上で考えて見れば人の距離感、モッシュが起きるハードコア性、ホールという気密の状態からみればちゃんと入場の際に熱を測ったり体調の確認さえすれば椎名林檎の件は開催は可能だ。例えばクラシックのコンサートみたいに全員椅子に座って静かに見る感じ。これなら随分とリスクは下げられると思う。

だけどこれとは逆に狭くて汚くて暗い200人キャパの密閉空間がモッシュやダイブなんてそれはもうリスクを吐き散らかしている状態。
実際、僕の場合、この間とあるライブハウスでインフルエンザB型をうつされたので、やっぱりライブハウスという空間はウイルスを拡散させてしまうリスクはかなり強いかと思う。
だからちゃんと対策のしてないライブハウスに関しては正直言って厳しいところ。コロナウイルス以外のウイルスやばい菌はそこらじゅうにありますので。

ただこれは対策をしていない場合の話で、来場者の体調を把握して、場合によっては来場を断って、モッシュ、ダイブを禁止にして合唱禁止からのマスク、あとはホールでの人との距離を保てば開催は可能だと思う。これでダメなら満員電車はどうなるんだって話になりますので。
まぁこのライブがつまらないかどうかはおいといての話になるし、それでライブハウスの収益がちゃんと利益になるかは別の話になるけどね。

ライブハウスの経済自体が自転車操業だ。あの業界に金持ちなんかはいないかつかつの状態。別に集客がほとんど望めないブッキングライブならまだしも、人気バンドや海外のバンドを呼んでいるイベント中止は本当にキツイと思う。
もちろんライブハウスだけじゃない。イベンターだってキツイだろうし、そもそもバンドの運営もキツイかと思う。だから今の危機的状況下でも営業しないといけない実情が主だと思う。
だけどこの条件をのめないでリスクをおかして社会的危機を呼んでしまうぐらいならもうそのライブハウスは営業を中止にした方がいい。というか自分たちのためだ。
世間っていまだにライブハウスのイメージは悪いですから、だからマスメディアの取り上げ方も危機を煽るのが仕事なのでライブハウスを不必要に怖いと取り上げるのは当たり前の話。普段、ライブハウスにいかない人たちの不安心を煽って謎の怒りの矛先をライブハウスに向けることができるし、それで記事ができる。それがマスメディアの仕事ですからね。
だから仮に感染者を出した場合のリスクは営業中止に比にならんものになる。
まぁ今、営業しているライブハウスはちゃんと対策をしようとしているところがほとんどだと思いたいですけどね。
そもそも論で考えれば健康な若い人たちだけを集めればいいという話にはなりますが。

ともあれ世界では「戦争状態」と言われている今の状態でなおかつ国からの自粛要請を無視して勝手に集まって強行していることはライブハウス側も客側も自覚はしておいたほうがいいかと思います。

ちなみにライブができないなら無観客配信ライブをやればいいじゃないという声もある。まぁいい試みだとは思う。
ファンも見ることができるしその上Youtubeならファン以外も見ることができてみんなハッピーになるはず。
中止にもしない、断行するわけでもない落とし所としてはこれが適切なのかもしれない。

けど、これはあくまでも僕個人の想いの話ですよ。そんな話になるんですが、「ファンのことを考えて」て言ってもファンたちって頑張ってチケット買ったわけじゃないですか?
人気のバンドならチケット予約が通りやすいファンクラブに入ってそこで年会費を取られ、チケットを予約するために朝からずっとケータイ片手に半日ぐらい潰して。それから地方のライブならホテルとか渡航代もあるわけじゃないですか?
この苦労を考えたらYoutubeで無料配信という形で「タダで人気バンドのライブが観れる」なんて乞食根性の奴らと一緒にネットで見るなんて、やっぱり納得いかないよな。
少なくとも僕は納得いかない。なんでナンバーガールのナの文字も透明少女も知らない奴らと一緒に観なきゃならんのだ。そうなりませんか?
それなら潔く中止にした方が僕個人としてはかっこいいかと。

だからちゃんと中止、もしくはしっかりと感染リスクを理解した上で対策をしているライブハウスには拍手を。

終わりに
ある程度ウイルスの知識を持てば対策できるウイルスだとは思うけど、やっぱり普通に考えて希望よりも不安が勝つに決まっている。
だって不安になるとそのことばかり考えてしまうでしょう?例えば将来のこととか、考えれば考えるほど不安になる。

いくら政府から大丈夫と言われても不安をを煽る情報には勝てないのが実情。だから正しい情報よりもフェイクが勝ってしまうのである。
その証拠がマスクの買い漁りだったり、トイレットペーパーの買い漁りなわけで、これらの行動って別に異常なわけではない。
たまたま不安な心のまま、自分の気持ちに寄り添った情報を探ってかいつまんだ結果なんだと思う。
だから多分この人たちってめっちゃ小心者で優しい人らなんだと思う。
ライブを決行する人に対して強い発言をするのも多分、彼らは弱者で優しいから。

まぁ僕はこういう優しい人って大嫌いなんですがね…。

それでは

田渕竜也のTwitter

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