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文化的。いや。文化的って結局なんなんだ

文:田渕竜也


当サイトでは様々なバンドを取り上げたり、ライブハウスについても好き勝手に書いたりしている。
もちろんそんなライブシーンは楽しいところで、いろんな人がいて、普段見れない人や、つまらない日常を非日常に持っていくこともできて、個人的に客として行く分には好きなところだ。

そんなライブハウスが昨今のウイルス騒動で逆境にあっている。そんな話はこのネットカーストアンダーグランドであるフリーペーパーてんぷらにたどり着いたみなさんなら周知の話だろう。
ネットを開けばどこもSavingなんとかって支援のサイトが出てくる。そんなライブハウスへの支援の輪が広まっていて、みんな「文化の灯火を消すな」と口にする。

しかし待ってくれ。そもそも文化って何なんだ?確かにわかるよ。自分たちが好きな場所をなくすことは辛い。
新人バンドの発表の場が少なくなるのも悲しい。一定数、バンド音楽を生きがいにしている人たちもいてるのも事実。
僕自身も好きなライブハウスはあるし、なんとかならんもんかとも思う。

だけどこれは僕個人の考えなんだけど少なくともライブハウスって文化的施設ではないと思うんですよね。
べつに支援するなとか国に金を要望するなっていう話ではない。

なんかみんな言い合っていることに違和感がありすぎるから今回はこのややこしい話を考えてみたい。

まず、違和感があるのは「文化的施設」という位置付けだ。「そもそもこれって娯楽施設なんじゃないの?」って思うのだ。

例えばストリップ劇場。

これって文化か?と考えると多分大体の国民は「こんなもん娯楽だろ?」と言われるのではないかと思う。多分、大多数の人たちの認識は「水商売」だろう。

こういった水商売については誰も手を貸そうとしない。理由は娯楽施設だからだ。なんだったら「そんなところで働いているやつの自業自得」なんてことも言われる始末だ。
だけどここにはポールダンスの文化や前座の文化など「芸能」という文化があるわけで、これについては誰も支援しようとしないわけじゃないですか?やっぱり人の感覚が水商売という娯楽だから。
極端な話だけど実際にライブハウスとストリップ劇場の違いってないはずだ。どちらも演者が出てステージに立って観客を興奮させる。
だから水商売の刻印されているものを排除してライブハウスや演劇小屋を「文化的施設」と位置づけにするのは違和感があるのだ。
少なくとも僕はどちらも娯楽施設であると思う。

じゃあ逆に文化的って一体なんなんだろうね?文楽座が文化か?それとも大衆演劇が文化なのか?これもあやふやでわからない。

例えば日本国憲法第25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とある。
これも謎で「結局、文化的ってなによ?」って話になる。
学校・スポーツ・文化分野における専門委員調査報告書によると文化施設とは劇場、音楽堂などを指すと一発目か明記されている。では音楽堂ってなにという思われるかと思うけど、これはコンサートホールの別称。代表的なものでいえばシンフォニーホールとか渋谷公会堂など。
じゃあライブハウスってここに含まれるのかと思われるけど、それは違う。理由は飲食店の程で運営をしているからだ。ほら、入場するときの1ドリンクってあるじゃないですか?あれってコンサートホールだといろいろ法律が面倒なので飲食店として運営をすることでその面倒を回避しているだけなんですよね。パチンコ屋の三転商法みたいなもん。
だからライブハウスってこのグレーゾーンで運営しているから文化施設とは呼べないんですよ。あくまで飲食店、娯楽施設。

それとそもそもライブハウスを若者の文化というのも無理がある。あそこに行ってる人の平均年齢は多分30代半ばぐらいがせいぜいなところだろう。
これが文化だというならTick tockで踊るティーンズだって文化なわけですよ。

だからこの話は「若者文化の場所を奪うな」というより「僕らの楽しいところを救え」というなら分かりやすいのだ。

さらに問題は緊急事態宣言後のライブのキャンセル料を取るか無観客配信ライブをするかの二択だ。
確かにキャンセル続きで瀕死状態の運営で大変だろうと思うし、都会の家賃が高いところの支払いはめちゃくちゃきついと思う。
イベンターやバンドに同情的なところは折半という形でキャンセルしているところもあるけど、考えてみてくださいよ。
ただでも金もそれほど人気もない、ノルマ達成が限界のバンドに無観客ライブ配信で元が取れますか?できるわけがない。
だから無観客配信ならOKだろ?っていう意見にも今はちょっと懐疑的なんですよ。少なくとも5人以上は絶対に人と関わるから。
無観客ライブ配信といっても普通に考えて3密状態になるし、あとバンドマンにも介護福祉で働いてる人や医療従事者も結構いますからね。
少なくとも僕自身が今年とあるライブハウスでインフルエンザB型をうつされたので、もともとライブハウスという環境が持つ密室がウイルスをうつしやすい場所ではあるとは思う。

じゃあ今の状態でライブハウスは打つ手ないのかと考えると、今のところは正直言って打つ手がない。
いくら金を集めたところで焼け石に水でその支援してくれる金も永遠ではない。いつかは途切れる。だから今はマジの世紀末状態で救世主を待っている状態。それはライブハウスだけじゃなく、メイドカフェもそうだろうと思うし、居酒屋もそうだろうと思う。
そもそもこの自粛状態の問題点って9割ぐらいは資本が回らないから破綻する資本主義の経済体系に問題があるわけで、例えば稼ぎすぎている分野から資本を一時的に共産的経済システムを取り入れるかなんかしないとマジで自営業というものは潰れていく。
だからこのウイルス騒動って今の経済体系を考える分岐点になっているのではないかと。

終わりに
非常時って娯楽を糾弾する傾向にある。火垂るの墓でも西宮のおばさんが「何ですかこの戦時中に」とピアノを弾く清田さんにブチギレている。つまりは今はそれと同じ。多分、今からライブハウスを解禁しても自粛に正義を燃やす人たちからの抗議は免れない。

しかもライブハウスとなると世間のイメージは悪い。完全に分が悪い。詰んでる。

だから今の資本主義社会で今打てる策って一旦、店を閉めるための資金を集めて、騒動が落ち着いたらまた資金を募って再開させる。
多分これが一番冷酷だけど一番妥当な策かと思う。文化を守るなら一度、撤退してもう一度再起することを考えるのも一手かと。

それかホールを古着を集めてアパレルを販売するするとか。そんなもんか

それでは

田渕竜也のTwitter

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