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「ど〜るちぇあ〜んど、がっぱぁな〜」の瑛斗はなぜ成り上がれたのか考えます。

文:田渕竜也


どこに夢が転がっているかはわからない。今は音楽というものが特にそうだ。
一発、どんなハッタリの手を使ってでもバズらせればそれをヒットと大衆はみなす。
これは少し前のワニが死ぬ漫画の通りだ。人間、盛り上がっているところに行こうとする習性がある。

最近のどの音楽の話題も”夜”とつくグループばかりでもうウィルスミスの映画にエディーマフィーとクリス・タッカーが共演しているぐらいにさっぱり区別がつかなくなってしまった。
どれも同じような曲だし、同じような二次元的アイドル像だし、中途半端なSF的世界観だしでいつになったら”夜”は明けるんだ。そろそろ丸の内サディスティックのコード進行は国が規制すべきだ。みんなこれに依存している。

そんな夜ブームの中、どこからか不敵な笑みのツーブロックが細目で微笑んでくる。こっちみんな。
その名は瑛斗。まぁ彼ぐらい急にバズったら笑みが溢れるどころか下品な笑いしか出ないよな。
今年の春の終わりあたりから各所で火がつき、去年まで誰も知らなかったこのツーブロックが今では知名度は全盛期ビットコインぐらいの大幅に跳ね上がった。

で、多分だけど令和2年に一番話題性があって売れてることは間違いないんですけどね…。
えぇやっぱり、うちのようなアングラとかそういうの押し出している身としてはなんかこの人を素直に「良い!」とは言えないじゃないですか。
先の”夜”ブームも然りだけど。そんなブームに対してどこか脇腹を探ってボディブローをできるスキを探したいワケなんですよ。

だってこの瑛斗とかいうツーブロックがこの先、どのサラリーマンや僕なんかよりも何倍も収益を出し続けるワケじゃないですか。若い人たちが祭り上げちゃって。
それなら毎日日々サービス残業で睡眠時間4時間ぐらいのストレスフルマッハ現代人なら納得いかねぇよって人も結構いるかと思う。
このツーブロックが良い女連れて六本木で見かけたらバリカンでそのツーブロックをExileのアツシみたいにしてやろうかなんて人もいるかと思う。
まぁとにかく彼の成功について納得できないって人が多分だけど7割がたいるんじゃないかと僕個人の統計ではそうなっているんですよね。

その問題作でもある今音楽業界で話題になっているのがこの『香水』という曲。

何が問題かってGoogleで調べようとしたら「香水 曲 嫌い」って出てくるぐらいだ。

そんな『香水』がなぜ成り上がったかを今回は話して見たいかと。

まず、この曲を聴いて率直な感想を言えばドルチェ&ガッパーナの力技。歌詞の内容もなんでも香水のせいにすんな。自分でなんとかしろや。って内容でどこかケータイ小説的。あと音楽性は洋楽的。これが僕の中での感想です。

ケータイ小説的ってどういうことかと言えば、普段生きている日常において経験のない事柄を具体的な固有名詞を出して擬似的リアリティーを出しているということ。

例えば、『赤い糸』っていうケータイ小説。

あれなんかはレイプ、薬物中毒とか自殺とかそんな悲壮的固有名詞を物語上に登場させて、そのキーワードを読者が読んで受け取った結果、それを”リアリティ”に感じてしまう。

僕の学生時代にはそういう女性が結構いた。
なぜ彼女たちがこんな悲壮的な固有名詞に惹かれたかといえば、人生経験が低くかったからだ。
何も社会を知らない状態だけどバイトなんかをはじめて社会を知った気でいる状態の16から17歳。だけどこの年齢の大半が家族に守られているわけで、何かを悪さをすれば大半は誰かが尻拭いしてくれる。
だからこのマジックって平凡な人たちほど大きく効いていた。本当のリアルを知らないから、擬似的リアルをキーワードだけで消費してリアルに感じる。だから彼女たちはあの悲壮的な運命のキャラクターに憧れがあった。むしろそれになりたいとか。今でいうメンヘラみたいなもん。
多分、そんな彼女たちの『赤い糸』なんてブックオフに売られているか、ゴミとして火に投げ込まれているかのどちらかだと思うけど。

話を戻して『香水』という曲は具体的にこの歌詞に登場する男と女がどんな別れ方とかしたのか全くわからないけどLineとかドルガバとかの固有名詞を登場することでリアリティを持たせている。
多分このマジックは十代前半から十八歳ぐらいまでの人たちなら効くと思う。それ以降になるとある程度人生経験があるからもうそのマジックが効かず、こんな曲嫌いというジャッジになるんじゃないかな。

ここで思い出すのが10年ぐらい前にJames Bluntっていう人。
あのPVで雪降る中服を脱いでいって崖から海へ飛び込む寒そうな人。

彼の一番の大ヒット曲『You’re beautiful.』っていう曲のサビでしつこいぐらいに「You’re beautiful」繰り返して極寒の吹雪の中、裸になって海に飛び込むPVで話題になって一発当てた。

なんか瑛斗のヒットとかぶるんですよね。ちなみにこの『You’re beautiful』は英語圏の中ではムカつく曲ランキングの上位に入っていてしつこくて気持ち悪いって言われているんですが、この辺りもなんか似てますよね。

瑛斗の香水もAメロ、Bメロは全然知らないけどドルチェ&ガッパーナと変なスタンドみたいなコンテンポラリーダンサーが踊り狂うPVだけがやたらと記憶に残っているんですよ。

そりゃこんな濁点だらけで文字数の多い単語が何回も出てきたら記憶に残るっての。だからしつこいうざいと思いながらも知らない間に脳みそに刷り込まれる。
多分、これを計算でやっているなら彼はかなりのやり手だけど多分偶然だと思う。そう思わせてくれ。
余談で僕個人の話になりますがここ数年よく見かけるコンテンポラリーダンサーと歌手がコラボレーションしている映像は大嫌いです。酢豚に入っているパイナップルぐらい嫌いです。多分、SiaのPVにでも憧れたのでしょう。

あとこの曲の特徴として全体の作りがかなり洋楽的だ。
コード進行なんてほぼワンパターンみたいなもんでこのコード進行もJames bluntのサビとほぼ同じ。

昨今、「もうこれしかないんじゃない」「もう、国が禁止にしろ」「安倍仕事しろ」と思うぐらいに使い倒されている丸の内サディスティック進行や無駄に経過音を使って意外性を作ろうとする進行じゃない点は唯一この曲を評価しているところではあります。はい。

それからメロディーも非常に歌いやすい。ボカロ仕込みの早口じゃなくて赤子でも歌えるぐらいにサビの一文字一文字がくっきりしている。

とにかく音楽性の全てが限りなくシンプル。無駄なのはそのツーブロックだけ。

歌メロの尺もちょうどTick Tockやインスタのストーリーズの尺にちょうど良いサイズ。
これを歌って承認欲求を満たそうとする人たちにもぴったりだ。
歌の偏差値が低い人でもメロディーが簡単だから歌いやすいしコードもシンプルで音程を取りやすい。

だから楽器とか歌うこととかができないただの欲求満たし層がこれに食らいついた。これがTik Tokとの親和性が強かったのではないかと。
要は着飾るアクセサリーとしての歌としてその機能が十分にはたらいた結果かと思う。

多分、これから先、日本の音楽ってボカロ仕込みの「歌えねぇよこんなもん」とシンプルに脳みそのシワがない状態でも歌える楽曲の二極化が進んでいくのではないかと思う。

まぁとにかく彼の音楽に関しては僕個人としてはこの『香水』あまり好きではないにしても、ここまで読めばいかにして彼が成り上がったかがわかるだろうと思う。彼はただのツーブロックではない。歌はめちゃくちゃに上手いし、シンプルに歌える曲を作っている。

それから多分、瑛斗本人が一番理解しているだろうと思うけれど、この先、彼が試されるのはこれからだ。なんかヒットしたその先の二作目三作目。まぁ本人がどう思っているかは知らんけど。


これ、一番新しい曲らしいけどこっちの方が普通にええやん。

それでは。

田渕竜也のTwitter

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