/ Column

ピエロ覆面二人組!謎のユニット・Clown coreの正体

文:田渕竜也


多分、僕は普通の人よりも100倍コーヒーを飲んでいると思う。もはや「蛇口からカフェインが湧き出てんじゃね」っていうぐらい昼夜問はず水の如きコーヒーを飲んでいる。別に依存とかじゃなくて単純にコーヒーの味が好きで飲む度に頭の中でスティービーワンダーが「ファイアー♪」とメロディが流れる。

何が言いたいかといえば「コーヒー、サイコー」っていう話がしたいのにですね、この会話をドロボーしてくるやつっているんですよ。

「俺なんか毎日酒飲んでてもはやストロング中毒。アル中だわ。つれー」

これはですね。僕は「コーヒーがうまい!」っていう話をしたいのに、何故か相手が自虐的な返答により誇大的とも言える答えで話を主導権を握られてしまうわけなんですよ。要はこれって完全に会話のクーデターなんですよ。
これをもっとわかりやすい音楽の趣味趣向話に変換すると僕は「the big moonいいぞー」って言ってるのに「俺なんかこの歳で演歌なんか聞いちゃってるよ」て答えられそっから演歌歌手の話にすりかえられてるのと同じなんですよね。

確かに自虐的に好きなものを自慢したくなるものがあるのはある程度理解できる。例えば大阪の人が上田正樹サイコーなんて最高の自虐的ではないだろうか?多分、演歌が好きなんか言ってるよりは現実味があっていい。

では僕がClown coreというユニットを「サイコー」というのはどうだろうか?もはやこれの趣向はそんな会話なんかはぶっ壊すに値する。そもそもこんな変態ユニットなんか誰もしらない。
でも知ってほしいのですよ。だから今回は趣向の会話をぶっ壊そうと思います。
Clown coreはピエロと覆面という二人組だ。彼らを例えるなら「めっちゃうまいご飯の炊き方、伝授してやるよ」みたいな素っ頓狂なことを言い出すようなやつら。
多分、彼ってめっちゃモノボケとかうまいと思います。面識はないけどなんとなくそんなやつだろうと思います。

バンドというと意外に規則的で特に売れようとするバンド音楽ならなおさらのことルールが亀甲縛りのように縛られている。ほら、思いつくだけでもバンドという形態にベース、ギター、ドラムが必須要員だし、楽曲はイントロがあってAメロがあってサビまでの盛り上がらせるBメロがあってサビどーんっていう並び方。まぁこれがJpopの基本フォーマットであるからどうしてもこと日本人ということになるとどうしてもこういう並び方になる。例外もありますよ。イントロカットしてサビから入ったりするGlayみたいな例もありますし。ただサビが歌えるというが売れるJpopの基本なのだろうかと思います。
また、見た目にしてもルールの亀甲縛りだ。覆面なんて基本的には売れないし、どんなに売れたヴィジュアル系バンドも最終的にはメイクがどんどん薄くなってくるし、それに比例して歌詞もどんどんと内容が当たり障りのない薄い内容になってくる。

これが規則だ。

Clown coreはそんなの完全に無視。そもそもドラムとシンセ兼サックスという二人組の時点でまったくの反則。その上、ハードコアとテクノとジャズを好き放題にごちゃ混ぜにして遊んでいる。こんなの絶対に売れるわけがない。
しかもこういう人たちって超絶技巧で結局「なんじゃこりゃ」で終わってしまうものが多い中、やってることは「なんじゃこりゃ」だけど内容が面白いから結局最後まで見られるんですよ。それでいてかっこいい。


内容のミソはこのどジャズなサックスのメロディだろうかと思う。多分、ジョンゾーンとかボアダムスあたりのフリージャズの影響をもろに受けているけどしっかりと綺麗なメロディを組み込むことで完全に暴力的ではなく美しい作品として完成している。


しかもこのドラムのグルーヴ感もただのウケ狙いのピエロじゃない。めっちゃ凄腕の実力者だ。しかも狭いバンの中で片手シンセベースを弾きながらでこれだ。多分この人ら天才です。

ではこの天才二人組、一体何者なのだろうか?

その正体はKnowerのサム・ゲンデルとルイス・コール。知らない人もいるかもだから普段のバンドはこんな感じのジャズでファンキーなおしゃれバンドの人たちです。

おしゃれだけどどこか間抜けで変な映像だ。そのミソはそれぞれのバカテクを前提としてめちゃくちゃにチープな映像とファミコンみたいなロゴと砂嵐とかグリッチをつかった映像演出。
たしか中心人物のルイス・コール自身がめっちゃゲーオタらしい。技術と映像が完全に反しているから妙な間抜けさが面白さに変わるわけである。そんでそこに「らしさ」につながるわけである。

多分、Clown coreでもそれを大きく演出に取り入れている。ピエロの覆面をしているのもエスティマの中で演奏したりしているのはその間抜け演出がバズることを見越した巧みな演出だ。もし僕が張本なら「あっぱれ」を貼ってあげたいほど。
それからKnowerのサックスの吹き方とClown coreでのサックスの吹き方を見比べてみればだいたいサム・ゲンデルであるかと思われる。
あとドラムも見比べればわかりやすいかと思う。やっぱりルイス・コールだ。

こうやって「間抜け」を狙ってかっこいい曲を作れるミュージシャンって結構希だ。基本的に面白いとかっこいいは音楽の中では両極端なわけなんですよ。かっこいいものを作れば面白みがなくなるし、面白みを増やせばかっこよさはなくなる。
これは一つのネタの中では両立し得ないという話で、そこにもう一つの要素を足せばそれは成立する。何が言いたいかといえば映像と音楽を融合させれば成立し得るという話だ。

Clown coreの二人は笑い飯に近い。
笑い飯の漫才って一見めちゃくちゃで間抜けに見えるけど漫才のテンポ自体はほぼ乱れていないんですよ。とくにルイス・コールはしっかりと楽曲をコントロールしつつ間抜けな演出もうまく映像で表現している。多分、彼は笑い飯の哲夫に似ているかと。
だからClown coreに大喜利にめっちゃ強そうというイメージが僕にはあるのである。

これでClown coreの正体はだいたいわかっていただいたであろうと思う。おそらくだけどルイス・コールの才能はこれからさらに爆発するかと思う。そもそもの彼の作曲能力の高さが異常でもあるし、実際にサンダーキャットと共作のアルバムもしっかりとグラミーまで行っているわけだし。

今日はこの辺で。

それでは。

田渕竜也のTwitter

ついったウィジェットエリア