千鳥に見るネタがうまいか、本人がおもしろいか
テレビをつけるとやれ第7世代だの鬼滅だのと繰り返し同じようなキーワードがリフレインしてますよね。それでいて伝えられるのはそれらが「ブーム」っていうこと。だけどこれらが「ブーム」だなんてあまり実感のないもので、僕自身は霜降り明星以外の第7世代はパッとしない印象と鬼滅に関してはこの国の最後の一人になったとしてもあの映画は見ないでいようと思っている次第であります。
まぁだけど結局、小市民である僕らってブームを消費することしかできないわけで、大きいメディアがボロ雑巾のようなかすみたいな記号であっても「ブームです」とメディアで伝えられれば勝手に小市民たちはそれをブームとみなすわけです。
ほら、朝の情報番組ってよくわからないことを「流行っています」なんていってるじゃないですか。これがメディアが流す情報なわけで僕らはこれを甘んじて消費するわけである。
これがこの日本社会の経済が過渡期にある実情だ。だから本当に誇張なしにブームって起きる物じゃなくて作られるものなのだ。
経済が過渡期になればブームの流れの潮流は早い。例えば冷蔵庫で言えば冷やす機能だけで十分なのによくわからない「ナノイオン」とか「なんとかクラスター」みたいな謎のキーワードを用いて毎年新しい冷蔵庫が発売されて、買い換えてもらう。これが経済過渡期にある消費行動であって、これを記号の消費という。
多分、来年の今頃はまた新しいお笑いのキーワードなんかが出てきて新世代が出てくるだろうし、それもこれもバッタの群れのように「流行っている」というキーワードを尋常じゃない早さで消費していくんだろうなと。なんかよくわからないけどだんだんと腹が立ってきた。
だから消費されることに関してお笑いっていう分野は特に消費が早い。数々のギャグ芸人たちは何処へと消え去り、あの時のエンタ芸人とか笑いの金メダル芸人たちは一体どこへいったんだ。ぱっぱんすパッパンは何処へ。
要は芸人で売れ続けているのはいまの時代はかなり無理ゲー。
考えてみれば芸人として売れるための披露できる劇場がまず少ない。だからどこかの芸能事務所に入ることしかほぼ選択肢がない上、インディーズのお笑い芸人と言ってもお笑いライブへ行くというファン文化があまりない。
だから自社劇場を多く持つ吉本興業が芸人業界で幅を聞かせるのは当たり前の話だ。
ところでいま一番勢いのあるお笑い芸人って誰だろうか。僕はやっぱり千鳥だと思うんですよ。
千鳥って不思議なんですよ。M1には決勝まで入ったけどなにかすごい爪痕を残したわけでもないし、むしろ滑った方だし、コントもすごいってわけでもない。この二人が漫才や大喜利の天才的なセンスを持ち合わせているわけでもない。
だけど火曜日にテレビをつけるとずっと千鳥が映っているのである。
思ったんですけど、お笑い芸人には二種類のタイプがいる。
まずは、単純にネタが面白い人たち。
これは名人芸のような人たちのこと。例えば、夢路いとしこいし師匠や今でいえばミルクボーイ。間の取り方やオチまでのストーリー性など技術的にうまいなーって思う人たち。
もう一つが本人たち自身が面白いという芸人のタイプだ。
これは漫才のネタ自体はそれほどだけど、本人たちのタレント力というかテレビに映ればそれだけで面白いっていうタイプ。
多分、お笑い芸人ってこの二種類に分けられると思うけど、千鳥は完全に後者。大吾自身、ノブ自身がすでに面白い。彼ら自体が面白いから少々の漫才の荒さやストーリー性がめちゃくちゃでもカバーできる。
だってタクシーのネタとかタクシー止めてるのに「ツーシーターか!」って突っ込んでるんですよ。ストーリーめちゃくちゃでしょ?
なんだったら千鳥がマイクスタンドの前に立つだけでも笑える。
これで思うんですけど、全てにおいて「テクニック」って素人からしたら結構どうでもいいんですよ。
上で出てきた夢路いとしこいし師匠なんかは漫才での間の入れ方がすごく多いしそのタイミングが抜群なんですよ。でも考えてみたらそれって面白いとは違う。結局「うまいなー」で終わってしまうわけなんですよ。
いわゆる素人ってお笑いの何をみているかといえば「笑える」「アイドル性」の二点しかない。見て笑えるかと見て知っているかていう話。
それで考えれば上手い漫才師って素人採点には不向きなわけなんですよ。だってうまいわけで笑えることとは少しズレるし、それでいてあまりテレビに出てこない人たちだったとしたら「知らんなー」で終わる。それでいてテレビの尺ってうまい漫才は見てもその面白みが全く電波を通じて伝わらないわけなんですよ。
これが素人採点の怖いところだろうと思う。まぁこんなことを言う僕自身もお笑いに関しては素人ですよ。
だから千鳥っていうコンビはテレビに最適なんだろうなと。だって素人からみればめちゃくちゃに面白い。
お笑いのうまさよりもロケ中心の本人の面白さというかなりお笑いとして考えた千鳥はパンクスタイルなんだろうと思う。
今日はこの辺で
それでは。