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思い出が音楽サブスクを損にさせる。

文:田渕竜也

「年齢を重ねるにつれて、聞く音楽の幅が狭くなってきたな…」と去年ぐらいから強く思うようになった。

Apple musicをいじってみればたくさんの選択肢がある。
だけど選ぶものはいつもと同じようにになってきて、そこに表示されるトレンドというものに興味を惹かれなくなってきた。
アニソンとかTikTokで流行ってるとか、そんなのもどうでもいいしくだらない。
どうにも、現在の僕は「まぁこれでいいか」ととりあえず思春期に好きだった音楽を聞いてしまう。
それはかつて好きだった音楽を聞く方が安心すると同時に選ぶという行為自体に対する邪魔臭さにも起因していのではないだろうかと思う。

思えば場末のスナックなんかを通り過ぎると、そこからは昔の歌謡曲や演歌なんかを歌っている人がいる。それはたぶん、その音楽がいい曲という自己保証に基づくものだろうなと。
だから年齢とともに新しいという自己保証のないものに対して斜めに構えてしまって、受け入れづらくなってくるのではないだろうか。
こういった新しいものに対して老化していくのは誰しものことであって皆平等だ。

僕の場合で言えば、いつまでたってもLinkin Parkは好きだし、Slipknotだっていまだに週一回は聞いている。
ベースを持てばBy the wayのベースラインを奏でたりするし、ギターを持てばGuellira radioのリフを弾いてしまう。
そう考えるとやっぱりかつての中高生時代の感性がそこで立ち止まっている。

アラサーの人たちに少し思い返してほしい。普段聞く音楽って何ですか?
推測の域だけどおそらく2004年から2008年ぐらいの音楽を思い浮かべるだろうと思う。
カラオケではEvery little thingのfragileなんか歌ってしまったり…。

この傾向ってこと音楽に限って強い。
映画や漫画、アニメなんかは次々と新しいものを出しては消費しきってしまうけど、音楽に関してはずっとその頃の自分がそこにまだ突っ立っている。
そう考えると、ある種、呪いのようなもんだなとかも思ってしまう。だから年をとってしまったら同じ音楽しか聞けなくなってくるのだ。

そんなことを思いつつまたSlipknotとかKornなどの昔の音源を聞いていたのに気がついてしまった。
それなら月額で多種多様な音楽が聴ける意味って何もない。しかもそのCD持っているし。

だから音楽のサブスクはやめてしまったのであった。

さて、いつもながらに長くなったけど今回の問題はこの音楽サブスクのコンテンツ消費システムについてである。

画面には頼みもしていないおすすめや知りたくもないランキングが表示され、消費を促される。
そこをもう少し突っ込んでいうと”聞かせて、飽きさせて、新しいものを聞かせる”この三位一体を”持続させる”ということのスクラムが出来上がっている。
このサステナブルなサイクルこそが音楽サブスクにおけるコンテンツ消費行動の基礎である。

たしかに「とりあえず生中で」みたいな感覚でとりあえずのトレンドがそこに載っているわけで、探そうとしなくても向こうから新しい音楽を提示してくれる。
それはそれで聴きたい音楽の発掘の一環としては便利だろうと思う。

しかしこの基礎を前提に考えれば同じ音楽しか聞かなくなっては損でしかない。

それはあくまでサブスクは聞く権利の貸し出しであって、音源を聴かせてもらっている状態。これは音源が手元に残る形ではないから財産ではないからだ。
毎月500円から1000円で考えればトレンドを追っかけるには安いかもしれないけど、追えなくなってしまった人にとってはただただそのシステムに入って搾取されているだけになってしまう。
それならいっそのことその音源をダウンロードで聞く権利を買った方が安かったりするわけです。まぁ金銭の損得で考えるのも俗なんだけれども。

確かにサブスク側が提示してきたバンドやいろんな音楽も好きになったのもいる。だけど、この人たちを来年も聞いているか?と問われたら正直言って難しい。
結局その多感な時期の音楽に惹かれてしまい、かつて好きだった音源を聞いてしまうから。
おそらくこれは中高生の頃の刺激って一生物であって、いくら世間が消費社会としてその音楽を消費させようとも過去が残ってしまう。
セピアカラーとなった記憶って美しく見えたりするもんだし。このハードルはおそらく超えられない。

だから今の十代の人たちにとってはサブスクはいいコンテンツなんだろうなって思う。
学生時代って暇だし、とにかくいろんな刺激がほしい。飽きてはまた別の刺激に飛びついて。
だからこのサブスク世代にとっては現在の嗜好が大人になってもずっと付き合っていくものなんだろうなって。
まぁだったらいずれはこのサブスクシステムが無駄金になってくる時期がやってくるんだろうけど。

だからここで明確にしたいのは音楽的嗜好が固まってしまった人にとってサブスクというシステムは無益なものになってくるんじゃないだろうかってこと。
まぁどっちにしたって制作物に対して金を払うっていうこと自体はいいことなんだけどね。

今日はこの辺で
それでは。

田渕竜也のTwitter

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