『RX-78 NT-1 ガンダムNT-1』を解説
最近のガンプラ事情だが、宇宙世紀系は相変わらず品薄でなかなか買えない。ここ2カ月で買えたのはマラサイだけ。その一方、鉄血系は再販も多く、持っていなかったキットを数個買うことができた。
最近はプラモ制作に時間をかけていて、更新が滞っていたが、ガンダム関連以外の記事も含めて、もう少しコンスタントに更新していこうと思うので、今後ともよろしく頼む。
それでは本題のMS解説に移っていこう。今回解説するMSはRX-78 NT-1 ガンダムNT-1、通称“アレックス”だ。
機体解説
OVA『ポケットの中の戦争』に登場する試作型MS。北米オーガスタ基地で開発された。ガンダムタイプではあるが、他のRX-78シリーズとは別系統で、所謂“オーガスタ系”と呼ばれる機体へ発展していく。また、ニュータイプ専用機として開発されるが、その頃の地球連邦軍はニュータイプの存在自体に懐疑的な意見が多く、その研究もほとんど進んでいなかったため、ジオン公国軍のようなサイコミュは搭載されていない、単純な超高性能機となっている。
開発がスタートしてからほどなくして、まったく訓練を受けていない少年アムロ・レイがRX-78-2に搭乗し、初戦でジオン公国軍のMS-06Fを2機撃墜、その後も目覚ましい活躍を見せる。地球連邦軍は彼を唯一のニュータイプ・サンプルとして、その実戦データを本機開発へとフィードバックしている。アムロは機体の反応速度にストレスを感じていたこともあり、主に機体の追従性の向上が追求されることになる。
そこで導入されたのが“マグネット・コーティング”という、磁力を用いて、関節などの駆動部分を速く、滑らかに可動させる新技術。既にルナツーでRX-78-3、通称“G-3”がテスト・ベッドとして使用されており、そのデータを元に開発が進められた。
こうして完成した本機は北極基地からサイド6へ打ち上げ、そこで最終調整を行った後、アムロ専用機として星一号作戦へ投入される予定だった。しかし、ジオン公国軍特殊部隊“サイクロプス隊”から再三に渡る強襲を受け、機体は半壊してしまう。そして、そのまま終戦を迎えたことで、アムロの元へ届けられることはなかった。
スペック
頭頂高:18.0m
本体重量:40.0t
全備重量:72.5t
ジェネレーター出力:1,420kw
スラスター推力:174,000kg
装甲素材:ルナ・チタニウム
姿勢制御用スラスターを各部に増設したことで総推力はRX-78-2の約3倍という、とんでもない数値になった。機体の軽量化、前述したマグネット・コーティングも相まって、一年戦争時のMSとは思えないほどの機動性、運動性を誇る。しかし、その代償は大きく、過敏な操縦性に一般的なパイロットでは到底扱えるものではなく、腕のあるパイロットでさえ、まともに動かすのがやっとのことという“誰も100%の性能を発揮できない”と言っても過言ではない機体となってしまった。
推力に対して、ジェネレーター出力はそれほど向上しているわけではなく、ジオン公国軍の量産機MS-14Aよりも低い。あくまで推察ではあるが、エネルギーの変換効率が向上していると思われる。
本機にはマグネット・コーティング以外にも新技術が採用されている。それが全天周囲モニター、リニアシートである。従来のモニターではミノフスキー粒子下での有視界戦闘ではあまりにも死角が多すぎるため、コックピットの内壁がすべてモニターになっており、カメラアイやセンサーからの情報をCG処理して、モニターに映し出すことで360度の視界を確保しようというものである。視界確保のため、基本的に自機は映らないが、作業を行う時など、必要に応じて切り替えが可能。コンピュータが即座にCG処理を行う都合上、ダミー・バルーンを誤って、本物のように映し出してしまうというデメリットもある。
全天周囲モニターに合わせて、座席もリニアシートに変更されている。座席の後部にアームが繋がっていて、宙に浮いたような構造になっている。これにより、下の方の映像も見ることができるほか、衝撃や加速などの負荷からパイロットを保護し、乗り心地も改善されている。
全天周囲モニター、リニアシートの採用により、コア・ブロック・システムは廃止され、球形のコックピットに変更。脱出機能は備わっており、コックピットブロックごと射出されるイジェクションポッドが採用されている。
ちなみに本機の全天周囲モニターはまだ完成しておらず、完全な360度視界ではないが、グリプス戦役時には量産機にも完成形が標準装備されている。詳しくは映像作品を見比べて頂くと分かりやすい。
さらに本機にはフルアーマー・オペレーションの一環として、試験的にチョバム・アーマーと呼ばれるパージ可能な増加装甲も開発されている。爆発することで衝撃を吸収し、本体へのダメージを軽減する。
型式番号:RX-78 NT-1 FA
本体重量:50.0t
全備重量:95.0t
スラスター推力:216,000kg
実体弾に対してはかなりの防御力を誇るが、ビーム兵器には効果が薄い。また、機体重量が大幅に増加してしまうため、アーマー自体にスラスターが設けられており、機動性の低下を補っているものの、運動性は大幅に低下している。この技術はRGC-83に受け継がれることになる。
基本武装
60mm頭部バルカン
近接戦闘用の固定武装。連邦軍MSの標準装備。
ビーム・サーベル
白兵戦用武装。バックパックに2基装備。他のMSのものと形状や配置に差異はあるが、性能はほぼ同等。
90mmガトリング・ガン
デバイスの小型化によって、余裕ができた両腕部に収納式の武装として、試験的に装備された。威力が高く、所謂“初見殺し”として有効ではあるが、反動が大きく、関節部に負荷がかかってしまったり、装弾数が少ないという問題もあり、後のMSには採用されていない。そのため、結果的にではあるが、本機独自の武装として知られることになった。
ビーム・ライフル
出力、収束率が向上しており、抜群の貫通力を誇る。中立コロニー内で使用するわけにもいかず、本編には登場しない。
ハイパー・バズーカ
防御板にスコープが着いた特徴的な形状をしている。性能は不明で、こちらも本編未登場。
専用シールド
チョバム・アーマーの構造を流用したシールドに耐ビーム・コーティングが施されている。上部に書かれた“ALEX”の文字が印象的。こちらも本編未登場。
その性能を存分に発揮できないまま、お蔵入りとなってしまった不遇の機体ではあるが、後のMSに大きな影響を与えただけでなく、数少ない戦闘シーンはどちらも名場面として、人々の記憶に残ることになった。