【前提事項と権威】だから料理対決は成立しない。
唐揚げってあるじゃないですか?
あれに甘辛いタレだとかチーズをぶっかけたりだとか、パン粉をつけて揚げたりだとかそんなのって「唐揚げ」に分類されると思いますか?そんな余計なオプションを誰がつけ始めたかは知らないけど、僕個人の見解としてはそんなものは唐揚げという定義としては「なし」である。
そもそもまず前提設定として辞書で「唐揚げ」と調べてみました。
そしたらネットの辞書ではあるけどその意味合いとしては「肉などを小麦粉や片栗粉の薄い衣にまとわせて油で揚げる料理。具や衣に下味をつけることが多い。」と書いてあるじゃないですか。少なくともパン粉をつけて揚げるなんて完全に唐揚げと名乗ってはいけない紛い物であるし、おかしなタレでべっとりとした唐揚げっていうのは別物ということになるのだ。
しかし最近ではそんなもの変な装飾をした鶏肉の揚げ物も唐揚げに入るらしい。
少し前にたまたま眠れずにつけていたテレビでそんなのが出てきた。その番組では「新しい唐揚げ」なんていうテーマで料理対決をしていた。そしたらそれがベトベトだったりチーズがかかっていたりともはや「これは一体何なんだ?」というべきかそんな唐揚げが出てきて深夜の番組に驚いた次第であります。
否、待ってくれ。これではこのシェフたちが作っていたこの唐揚げというものは一体なんなんだ?
だっておかしいでしょ?唐揚げを注文したのに甘辛ダレでベトベトのものが出てきたら。僕には何度かありました。居酒屋で唐揚げを注文したら欲しくもないラー油がかかったやつとか、なぜか味噌ダレみたいなのがつけてしまったやつとか。
絶対におかしい。食べたいのはカラッとした醤油ベースの鳥の唐揚げのはずだ。こんなもん前提事項の崩壊ですよ。ましてやチーズをぶっかける乳製品の見た目というマンパワーに頼る唐揚げなんて言語道断であり料理人としては失格だ。
とまぁ今回考えたいのはそこのおかしさ。前手事項と権威の意味である。
優劣を競うことにおいては明確な前提事項が必要になってくる。
競い合うことの取り決めやそもそも何について優劣をつけるかという前提が必要になるからだ。
例えばピューリッツァー賞なんかは明確に「アメリカに対するジャーナリズム」という前提が組み込まれている。
そのため、アメリカに関わらないジャーナルや文学、音楽はノミネートはされないわけで、いくら日本国内での大事件やすごい文学もこの前提事項からは弾かれるわけである。
それゆえにピューリッツァー賞とはアメリカのジャーナリズム大賞であるということが明確に制定されている。
それと同様にグラミー賞やアカデミー賞にしても「アメリカ国内で上映されていること」が制定されているからここでもアメリカの大賞であることがしっかりと明記されている。つまりこれらはアメリカという一大大国での権威なので実は世界的な賞ではない。
そんなわけで上記のことからまず「賞というものはどこの地域の何のための権威なのか」をまずは制定するところから始まるんじゃないだろうか?
だから本屋大賞とか芥川賞とかあんなもんって何の意味もなく見えてくる。
だって何のための賞なのか全く不明なのだから。「売れている、話題になっている」そんなことで権威を与えたらそれはもはやモンドセレクションとか楽天ランキング第1位だよ。
じゃあ逆に文化において良いも悪いもないみんなそれぞれのオンリーワンだなんて頭パッパラな考え方もあるかと思う。
しかし権威というものは社会であってその時代の歴史を証明するものであって、だからこそ明確な前提事項の元、何の賞なのかどういった権威があるのかをしっかりと明記しないといけないわけである。
それじゃあ話は戻るけど「新しい唐揚げ」をテーマに料理対決における明確な前提って何だろうか?
確かにシェフの一位を決めるというところは宣言されているけど、じゃあこれは何の権威があるのかは全く不明確である。
シェフだって中華もいればフレンチもいるし、それぞれで流派が違う。その上、味覚という審査員の流派次第でははっきりと好みが別れるそんなコンテストに一体何の権威があるのだろうか?少なくとも僕が見ていたその番組では審査員がフレンチの人で完全にそば料理の人が不利な状況でしたよ。
だからこの番組のテーマ作りでの失敗は「どこの」という前提事項がないところにあるんだろうなと。
一番のシェフを決めるのはいいとしても、料理人の前提として中華や和食、フレンチなどといった様々な流派があるわけで、そこを料理人として一括りにして競い合うっていうのはそれはヘヴィー級とフェザー級のボクシング対決みたいな体格差で全くスポーツとして成立しえない。
ここをしっかりと流派の前提が必要になる。
だってフレンチ料理人が和食を評価するなんておかしなことじゃないですか。逆も同じことで結局、ここの料理人の前提が必要となってくるのである。
テレビ番組で構成の上手い賞レースはM-1なんだろうなと思う。15年以内の漫才コンビで持ちネタ4分半という単純で明確。しかも若いコンビの王者ということで権威もしっかりとある。
ここまで前提が上手く完成されているから他のR-1しかり、TheWしかりあまり権威として光らないんだろうなと。まぁキングオブコントは確かに最近では権威が強くなってきたけどやっぱりM-1ほどの権威はない。
競い合いなんて「審査なんて結局は人の好みだろ」という人もいる
だけどそんなことに優劣をつけるのが世界各地にある権威ある賞だ。そして好みがあるからこそ前提事項をしっかりとしないとわけのわからない唐揚げが出てきたり、明らかにかませ犬みたいな競い合いが発生するわけです。
まぁ結局は大きいところが審判しないと信者同士の殴り合いするだけですよ。そのために審判を制御するために前提事項をしっかりしましょうねというお話です。
それでは。