『RX-75 ガンタンク』を解説

文:なかむら ひろし

 このコーナーでは、制作したガンプラの設定解説を行っていく。ガンダムシリーズの知識を身に付けて、アニメやガンプラ制作をより楽しんで頂きたい。ただ、ガンダムシリーズは後付け設定の塊なので、私の知識が古く、既に時代遅れになっていたり、書いた時は正しくても、後に設定変更されていることもあると思う。まぁ、そんなに構えずに緩く楽しみながら、知識をアップデートしていって欲しい。

 最初に解説するMSは『RX-75 ガンタンク』、TV版及び劇場版『機動戦士ガンダム』に登場。ハヤト・コバヤシ、リュウ・ホセイがメイン・パイロットを務めた。

機体解説

 “V作戦”によって開発された長距離支援用試作型MSで、地球連邦軍初のMSとして知られる。戦車のような下半身にヒト型の上半身を乗せたような外見が特徴。MS研究が遅れていた連邦軍は二足歩行やマニピュレーターの技術が確立しておらず、対MS戦を想定した戦闘車両“RTX-44”を改修して完成させた。そのため、下半身は履帯、腕部はミサイル・ランチャーとなった。

 複座式になっており、頭部には砲手、コア・ブロックには操縦手が搭乗する。そのため、戦車兵から乗り換えが容易であったり、キャノピーから広く視界を確保できる。ただ、人員不足も考慮して、コア・ブロックから全ての操作が可能となっている。本編ではある事情でコア・ファイターを失ってしまったため、頭部から全ての操作ができるように改修された。

 既存の技術を組み合わせて作られた本機だが、ジオン公国軍にはない、新機軸もいくつか採用されている。それでは、ひとつずつ見ていこう。

○超鋼合金ルナ・チタニウム

 「装甲素材として採用されたルナ・チタニウムは、公国軍が使用している超硬スチール合金よりも剛性、耐熱性や耐放射線などに優れていながら、軽量という特性を持つ。その耐弾性はMS-06の主武装である120mmマシンガンを弾くほどである。

 ただ、素材となる金属の一部が希少であるため、コストが高かったり、硬いが故に加工が困難で、生産に高度な技術や時間が必要なため、量産機には採用されなかった。」

○フィールド・モーター

 「関節の駆動システムにはフィールド・モーターが採用されている。従来の電動モーターの電磁石やコイルなどをIフィールドに置き換えたようなもので、公国軍の流体内パルスシステムと比較して、高出力で反応速度に優れる。電力をそのまま使用できるので、パルス・コンバーターや動力パイプが不要なため、機体に余裕ができる上に軽量である。こちらは量産機にも採用されている。」

○コア・ブロック・システム

 「腹部のコックピット・ブロックがそのまま脱出装置になっており、脱出後はコア・ファイターという戦闘機に変形することができる。当然、高コストではあるのだが、ここまで生還率に拘ったのは、高価な教育型コンピュータが内蔵されているからである。

 現在でいう、AIが搭載されており、実戦データを収集し、学習させることで、MSの動作パターンを最適化していくことができる。MS黎明期において、この戦闘データを持ち帰ることは非常に重要だったのだ。勿論、量産機には搭載されておらず、試作機ならではの装備と言える。」

スペック

全高:15.6m
本体重量:56.0t
全備重量:80.0t
ジェネレーター出力:878kw
スラスター推力:88,000kg
装甲素材:超鋼合金ルナ・チタニウム

 スペックの中で目を引くのが、RX-78-2よりも高い推力だろう。それは履帯では走破できない地形を飛び越えたり、発艦・帰艦の際に母艦をわざわざ着陸させる必要がないようにジャンプができるようにしたかったのである。脚部を持たない本機は脚部による反動を利用できないため、ジャンプをするにはすべてスラスターに頼ることになり、通常よりも高い推力が必要になるわけだ。

 また、見た目は完全に陸戦用だが、実は宇宙でも運用可能である。空間戦では高機動と呼べなくもないが、手足のない本機は姿勢制御の度にスラスターを吹かす必要があり、運動性やプロペラントの消費に難があるため、悲しいことに推力の高さを活かすことはあまりできない。

基本武装

120mm低反動砲

両肩部に装備された本機のメイン・ウェポン。MS-06なら一撃で沈めることができる火力と有効射程距離は260kmという驚異の長射程を有する。観測機と連携し、目視できないほどの遠距離から砲撃し、面制圧を行うのが基本。コア・ブロック・システムの採用により、腰部が回転しないため、本体を動かして、照準調整を行わなければならないという欠点を持つ。

40mm4連装ボップ・ミサイル・ランチャー
両腕部にマニピュレーターの替わりに装備されている。ミノフスキー粒子散布下では近接戦でなければ、命中させるのは困難な上、対MS戦においては火力不足は否めないが、近接戦を仕掛ける戦闘機への対空砲火としては有効。給弾機構が腕部に内装されているため、肘関節の可動範囲は狭いが、フレキシブル・ショルダーによって、本体を動かさなくても照準調整が可能となっている。

○タンクタイプが消えた理由

 「戦時中に量産検討モデルが少数生産されたり、後継機が開発されたりもしたが、タンクタイプは姿を消していくことになる。これはその汎用性の低さが大きな問題と言える。MSの最大の利点は汎用性の高さである。手持ち武器を変更することで、白兵戦から中距離支援までこなすことができ、戦闘以外でも作業用重機としても活躍できる。それに対して、ガンタンクの活躍の幅は非常に狭い。

 ガンタンクは目視できないような遠距離から間接射撃を浴びせるというのがコンセプトなので、対艦攻撃や要塞攻略に向いていると言える。また、本編では対空砲火として活躍している描写が多く見られた。つまり、対MS戦には向いていないのである。近接戦用の兵装を持たないガンタンクは敵MSを目視できた時点でもう危険な状態。これからのMS戦の時代には合わないのである。

 そして、悲しいことにガンタンクが得意とする領域もタンクタイプである必要性がなく、一年戦争時には既に安価な“RB-79”に取って代わられている。地上戦において、活躍の余地はあったのだが、戦後の軍縮によって、開発・生産する余裕はなく、大規模な戦争が起こらなかったこともタンクタイプが消えていく原因になった。

 ただ、このガンタンクに使われた技術が“RX-77”及び“RX-78”へと繋がっていったというのは紛れもない事実である。」

なかむら ひろしのTwitter

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