『RX-77-2 ガンキャノン』を解説

文:なかむら ひろし

 現在、先日購入したRGM-79を作っているのだが、プラモは作りたいと思ったキットを作っている時が一番楽しいと改めて感じた。まあ買う時も楽しいんだけど、自分はコレクター寄りではないってことかな。

 さて、今後の予定だが、これまでずっと連邦系MSをやってきたので、一区切りついたら、ジオン系に移ろうかと思う。そろそろジオン系が作りたくなってきたので。作りたいキットを作るっていう原点回帰だな。

 今回解説するMSは『RX-77-2 ガンキャノン』、テレビ版及び劇場版『機動戦士ガンダム』に登場し、活躍した。カイ・シデンがメイン・パイロットを務めたことで有名。

機体解説

 地球連邦軍が“V作戦”によって開発した中距離支援用試作型MS。戦闘車両を転用して作られたMS-75とは異なり、最初から二足歩行及びマニピュレーターによる火器の携行を前提として、開発が始まっている。漂流していたMS-05を回収した地球連邦軍はそれを徹底的に解析、サイド3から亡命してきた技術者たちの協力もあり、二足歩行実験機である“RXM-1”を既に完成させていた。その実験データを元に連邦軍初の二足歩行MSとして、本機は誕生することになる。

 RX-75と同じく、コア・ブロック・システムと教育型コンピュータ、装甲素材にはルナ・チタニウム合金を採用。さらにエネルギーCAPという新機軸も搭載され、それまで宇宙戦艦などの大型艦艇にしか搭載できなかったメガ粒子砲をMSでも携行可能なほどのサイズに小型化することに成功している。

○エネルギーCAP

 「CAPはCapacitor(キャパシタ)の略で、コンデンサとも呼ばれる。電気を蓄積したり、放出したりする電子部品のことで、我々が普段使っている家電にも使われている。エネルギーCAPは縮退寸前のミノフスキー粒子を蓄積し、メガ粒子として射出するための装置で、射出にはMSの電力を使用するため、高出力のジェネレーターが必須となる。」

 ビーム兵器は弾速が速く、重装甲でも容易に貫くほどの威力を持っているため、小型のビーム兵器の登場により、以後の戦術やMS開発に大きな影響を与えることになる。

 そんな強力なビーム兵器にも欠点がある。ビームには誘導機能が一切なく、チャージのためにトリガーを引いてからビームが発射されるまでにラグが生じてしまうことから、熟練パイロットであれば、比較的容易にかわすことができてしまうのである。

 また、この時期は“エネルギー・パック”という、ビーム兵器用の予備弾倉が開発されておらず、装弾数も少ないため、あっという間に弾切れを起こしてしまう。

 ちなみに連邦軍はそれらの欠点をある方法で埋めるのだが、それは別の機体解説の時に書こうと思う。

 本機はジャブロー工廠にて6機生産され、その内の3機がテストのため、サイド7に輸送される。直後に公国軍の襲撃に遭い、1機を残して破壊されてしまうが、その残った1機がホワイトベース隊で大活躍することになる。

スペック
頭頂高:17.5m
本体重量:51.0t
全備重量:70.0t
ジェネレーター出力:1,380kw
スラスター推力:51,800kg
装甲素材:ルナ・チタニウム合金

 敵の弾丸が飛び交う中距離帯での砲撃戦に主眼が置かれているため、機動性よりも耐弾性が重視されている。その装甲強度は当時のMSとしては最高クラスで、360mmジャイアント・バズの直撃にも耐えるほどだった。その分、機体重量が増えてしまったのだが、MS-06よりも軽く、推力も高いため、決して鈍重な機体ではない。

 そんな本機の欠点は近接攻撃能力の低さである。RX-75ほどではないが、敵の接近を許すと危険な状態と言える。劇中ではアムロ・レイが本機に搭乗し、MS-06Jをパンチやキックで圧倒していたが、それはあくまで乗り手の問題である。いくら重装甲とは言え、ヒート兵器で容易に溶断されるので、本来ならあのような戦い方はすべきでないと言っておこう。

○パイロットを育てる機体

 「本機最大の武器は肩部のキャノン砲でもビーム・ライフルでもなく、その装甲強度である。ニュータイプでもない民間人のカイ・シデンが一年戦争を生き抜き、後半にはエース顔負けの活躍を見せたのは、その賜物と言っても過言ではない。勿論、彼にパイロットとしての素質があったことに間違いはないが、その素質を開花させる前に散っていく者の方が圧倒的に多い。いくら才能があっても、最初は誰もが素人なのだ。

 多少被弾したところで墜ちない、その装甲強度のおかげで、何度も出撃しては生還するを繰り返すことができた。物語後半にもなると、あれだけの実戦経験を持つパイロットは数少ない。多くのエース、ベテランパイロットを失い、正に“ジオンに兵なし”状態の公国軍パイロットの多くは対MS戦など初めてなのだ。カイ・シデンが異常に強かったのは経験値の違いである。」

基本武装

240mm低反動キャノン

両肩部に装備された本機のメイン・ウェポン。炸薬を用いて実体弾を発射する。砲身に強制冷却ジャケットを装備したことで、ザク・マシンガンに匹敵する連射速度を実現した。装弾数は左右それぞれ20発。

スプレー・ミサイル・ランチャー
オプションとして、キャノン砲と換装するプランもあった。無数の小型ミサイルを射出して、弾幕を形成する。しかし、ミノフスキー粒子散布下では近接戦でしか十分な命中精度が得られなかったため、実戦では使用されなかった。

ビーム・ライフル

RX-78-2のものと比較して、取り回しは悪いが、より精密な射撃が可能。威力や射程距離は同等とされる。ボウワ社製。

60mmバルカン砲
近接防御用兵装として頭部に内蔵されている。以降、連邦系MSの標準装備となった。

対MSハンド・グレネード
両脚部のラックに1基ずつ装備。マニピュレーターを使用して投擲する。劇場版でのみ使用された。

○キャノンタイプが消えていった理由

 「RX-77は中距離支援機として評価が高く、発展機や量産機も開発されるが、キャノンタイプは姿を消していくことになる。それは何故だろうか?

 MS開発当初は近距離、中距離、遠距離という距離別のMS運用を考えていた。しかし、MSと同時に開発されたMS用兵装によって、遠距離支援はともかく、中距離支援はあまり意味を持たなくなってしまった。白兵戦用MSにライフルやバズーカを持たせることで、中距離支援もこなすことができたからだ。

 一年戦争中は一刻も早く、MSの配備を進めたいので、同一機種を大量生産した方が効率的なため、キャノンタイプの量産は少数に留まる。戦後は復興に大量の予算を投じたため、中距離支援機を量産する余裕はなかった。その後、大規模な戦争も起こらず、MSのマルチ・ロール化が進められていった結果、キャノンタイプは消えていったのである。

 しかし、キャノンタイプは中距離支援用MSから中距離支援用兵装に生まれ変わって、後年に受け継がれることになる。ジェスタ・キャノンやGキャノンなど、武装や一部パーツを換装することで、キャノンタイプの役割を果たすのである。」

なかむら ひろしのTwitter

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