『RX-78-2 ガンダム』を解説

文:なかむら ひろし

 今回解説するMSは『RX-78-2 ガンダム』、今更解説する必要もないような超有名MSだが、本編をちゃんと観ていない方のために解説していこうと思う。

機体解説

 テレビ版および劇場版『機動戦士ガンダム』に登場する地球連邦軍の白兵戦用試作型MS。主人公であるアムロ・レイが搭乗し、鬼神の如き強さを見せた。

 連邦軍が“V作戦”によって開発した“RXシリーズ”のひとつ。前に完成した2機と同様、コア・ブロック・システムおよび教育型コンピュータを搭載、装甲素材にはルナ・チタニウム合金を使用している。

 白兵戦用として開発されたため、機動性と運動性が非常に高い。開発段階でのシミュレーションでも、その性能が高く評価され、主力量産機は本機をベースにすることが内定していた。

 頭部バルカン砲以外の固定式武装はオミットされ、手持ちの兵装を用いて戦う。白兵戦用武装として、ビーム・サーベルが開発され、以降ほとんどのMSの標準装備となる。

○ビーム・サーベル

 「エネルギーCAPに蓄積された縮退寸前のミノフスキー粒子を電磁誘導によって、刃状にしたIフィールドで覆うことでビームの刃を形成する。重装甲でも容易に溶断できるほどの破壊力を持つ。

 ビーム・サーベル同士で鍔迫り合いができるのは、Iフィールドが磁石のように反発するからである。ヒート兵器も刃先がプラズマ化することでIフィールドと反発するため、ビーム・サーベルと切り結ぶことができる。」

 本機はビーム・サーベルとビーム・ライフルを同時に運用できる出力を有するため、白兵戦から中距離戦にかけて、一撃必殺の武器を持つことになった。そこにパイロットであるアムロ・レイの技術も相まって、その反則的な強さが強調された。

 その他にも耐熱フィルム(劇場版では耐熱フィールド)やオート・パイロット・システムなどが新たに採用されており、当時の連邦軍の最先端技術がコスト度外視で詰め込まれている。

○耐熱フィルム

 「機体を特殊なフィルムで覆うことで、大気圏突入時の断熱圧縮を防ぐ。下腹部のVマークの部分に内装されている。第5話『大気圏突入』で使用された。

 劇場版では耐熱フィルムではなく、下腹部から冷却用の特殊なガスを噴出し、前方に構えたシールドに当て、その吹き返しで機体全体を冷却ガスで覆う“耐熱フィールド”に変更された。

 いずれにしても、大気圏を突破した後は、艦艇で機体を受け止めるか、コア・ブロック・システムを使って脱出する必要がある。

 そのため、耐熱フィルムおよび耐熱フィールドは、その後のMSに実装されることはなく、バリュート・システムやフライング・アーマーが開発されることになる。」

○オート・パイロット・システム

 「センサーが探知した敵機をAIが自動で攻撃するシステム。教育型コンピュータを学習させることで、自動操縦も可能となる。自動操縦はどうしても動きがパターン化してしまうため、MSN-02との最後の戦い、所謂“ラスト・シューティング”以外のシーンで使用されることはなかった。」

 RX-78シリーズ(NT-1は別系統のため含まれない)はジャブロー工廠で8機が生産され、その内の3機がテストのためにサイド7に移送される。公国軍の強襲によって、2機が破壊され、残った1機にアムロ・レイが乗り込み、一年戦争を戦い抜くことになる。

スペック
頭頂高:18.0m
本体重量:43.4t
全備重量:60.0t
ジェネレーター出力:1,380kw
スラスター推力:55,500kg
装甲素材:ルナ・チタニウム合金

 一年戦争当時のMSとしては、全てにおいて高水準ではあるが、ズバ抜けた高性能機というわけではない。本機の存在を知った公国軍は、本機を仮想敵として、新型を開発するため、後発のMSが本機以上の性能を有していても何ら不思議な話ではない。

 また、まだまだMS黎明期で、操縦系統も発展途上ということもあり、一般的なパイロットでは、性能を十分に発揮することは難しい。セイラ・マスが全く扱い切れていなかったのが良い例だろう。

 しかし、ニュータイプとして覚醒したアムロ・レイは、そんな本機の性能をも超えてしまい、機体の方が着いて来れず、遂にはオーバーヒートを起こしてしまう。そこで、モスク・ハンの開発したマグネット・コーティングを関節部に施すことで、機体の反応速度を強化し、公国軍の新型MSやMAと渡り合うことになる。

○アムロの型破りな戦闘スタイル

 「アムロは最初こそ機体の性能に助けられてはいたが、地球に降下する頃には、鬼神の如き強さを見せるようになる。実戦経験を積み、その類い希な才能を開花させていくわけだが、元々は軍人ではなく、訓練さえも受けていないが故に、型破りな戦い方をしたことも、その強さの一因と言える。

 例えば、ライフルやシールドを投げ捨てて、特攻するなんてシーンがよくあるが、戦いを知る軍人はそんなことを簡単にはしない。だからこそ、公国軍パイロットは焦り、恐怖さえ覚えた。戦場での焦りは死に繋がるのである。」

基本武装

ビーム・ライフル

エネルギーCAPにより、MSでも携行できるほど小型化したメガ粒子砲。フル・チャージで約15発の発射が可能。撃ち終わったら、母艦で再チャージするか、スペアのライフルと交換する必要がある。照準器とフォアグリップを用いることで、より精密な射撃が可能。ブラッシュ社製。

380mmハイパー・バズーカ

肩掛け式の無反動砲。本来は対艦用だが、対MS戦でも使用される。装弾数は5発。MSを一撃で破壊できるほどの火力を有する。ビーム・ライフルよりも効果範囲が広いため、アムロ・レイも多用している。星一号作戦でのバズーカ2丁持ちは有名。ライフルと同じくブラッシュ社製。

ビーム・サーベル
白兵戦用兵装でバックパックに2基装備している。コンパクトで高威力と使い勝手は良好。尚、エネルギーを使い果たすと、ビーム・ライフルと同様、母艦で再チャージする必要がある。

ビーム・ジャベリン
ビーム・サーベルのリミッターを解除することで使用可能。柄の部分が伸びて、槍のような形状になる。ジャベリンとは“投げ槍”のことで、投擲武器として使用される。ビームを一点に集中させることで、深く抉ることができ、主に対艦武装として使われた。勿論、通常の長槍としても使用できる。

60mmバルカン砲
頭部に2門固定装備された近接戦用の機関砲。MS-06程度なら撃破できるが、火力はそれほど高くない。ただ、重装甲であっても、装甲を付けられない関節部やカメラ、センサー類などには効果的。トト・カニンガム社製。

ガンダム・シールド
超硬スチール合金やルナ・チタニウム合金など複数の素材を用いた多層構造を採用したことで、高い耐弾性を獲得した。アムロ・レイは投擲武器としても使用し、MS-06やマゼラ・アタックを一撃で破壊している。

ガンダム・ハンマー

鎖の先に棘の付いた鉄球が繋がった白兵戦用兵装。空間戦では一撃でMS-06を破壊できる強力な質量兵器となるが、扱いは難しい。ビーム・サーベルの開発が上手くいかなかった時の保険として開発されるが、無事に完成したこともあり、あまり使われることはなかった。一年戦争当時はMSだけでなく、兵装の開発も試行錯誤していたことが窺える。

ハイパー・ハンマー
強化版ガンダム・ハンマー。鉄球部分に推進器が取り付けられ、棘も鋭くなっており、破壊力は増しているのだが、ほとんど活躍することはなかった。MSM-03に受け止められたシーンは有名。

スーパー・ナパーム
広範囲を焼き払う強力なナパーム弾。公国軍がサイド7を強襲した際、回収し切れなかったRXシリーズのパーツを機密保持のために焼却するのに使われた。それなりに有用だと思われるが、他に使用が確認されていないのは、非人道兵器として、使用が見送られたのかもしれない。

○アムロ最大の功績

 「MSは基本的にOSを使用して操縦するため、複雑な操作を必要としない。基本的な動作は予めプログラミングされていて、それを組み合わせて様々な動きを可能とする。動きたい方向や速度をレバーやペダルを使って入力すれば、細かい動作はコンピュータが自動で行ってくれるので、使いこなせるかは別としても、動かすだけなら、そこまで難しいものではない。

 RXシリーズが優秀なのは、教育型コンピュータが内蔵されているところである。過去のデータから最適なモーション・パターンを瞬時に選択し、パイロットに提案したり、データにない動きであれば、それに近いモーション・パターンから選択し、提案してくれる。そして、実行されれば、新たなデータとして蓄積されていく。こうして、実戦を重ねれば重ねるほど、新しいデータが蓄積されていき、処理速度が向上すると共に機体反応も同時に向上していくのである。

 この教育型コンピュータを正規のテストパイロットでも及ばぬレベルまで鍛え上げたのが、アムロ・レイである。その類い希な才能でモーション・パターンを最適化していったことは勿論、全く訓練を受けていない素人の状態から最強エースになるまで乗り続けたことで、新兵からベテラン、果てはエースにも対応した高い操縦性を量産機であるRGM系にもたらすことになった。

 このアムロのOSは何度かバージョンアップが行われてはいるものの、その後、100年以上に渡って使われ続けることになる。その戦果に注目されがちだが、これこそがアムロ最大の功績と言っても過言ではない。」

なかむら ひろしのTwitter

ついったウィジェットエリア