第二回 ブックオフ280円CDレビュー
どうも第二回ブックオフ280円コーナーCDレビューです。ここでは毎回、私がブックオフへ足を運び、280円コーナーにある超重量級の名盤から一発屋、クソ盤までをジャンル問わず、レビューしていきます。
今回取り上げるのは90年代オシャレサブカルファック野郎の間で巻き起こった「渋谷系」ブームの中で現れたフレンチおシャンティ姉さんことカヒミ・カリィの『My First Karie』(95年発売)。
まず、『渋谷系』っていうやつの説明をしていくのだが、90年代前半、洋楽ばかり流していたJ-Waveが例外的に小沢健二やらコーネリアスやらカヒミ・カリィなど流すようになった。恐らく流す基準は洋楽に近いかどうかって言うところだと思うけど、そんな彼らの楽曲をオシャンティな曲として取り上げるようになったのが当時、渋谷ONE-OH-NINEに店舗があったHMV渋谷店だった。ここでプッシュされた人たちが渋谷のクアトロでライブをして渋谷スペイン坂にあるFM東京のスタジオへ出演する渋谷サイクルの中に入ることが彼らのステータスとなっていた。
その音楽性はというと多岐にわたるがUSロック色が少ない楽曲というのが大雑把な解釈でいいのだろうと思う。なんかマッスルでアイムスーパーヒーローなまるで、キャプテンアメリカみたいな感じの縦ノリのビートを基調としたやつというよりは、意識の高いもやし野郎みたいな感じ。まぁもう少し言えばヨーロッパや南米色の強い楽曲というとわかりやすいかと思う。ただブラックミュージック色の強い(マービン・ゲイみたいなモータウンみたいな曲)人もいるのでなかなか一言ではまとめられない。まぁイカ天バンドみなたいなコテコテを逆を行くポップサウンドといった感じだろうか。
まぁともあれここから先は雑誌「オリーブ」の登場があるのだが、雑誌「オリーブ」は少女向けのファッション誌でこの雑誌はフランス推しの雑誌だった。欧米のマイナーレーベルを取り上げたり、フランスのブランドとか取り上げてボーダーのバスクシャツにベレー帽とかまるでデトロイトメタルシティの根岸みたいなやつとかアメリの主人公みたいなやつを定番とかいって紹介されていた。そんなフランス被れの雑誌を呼んでいた人たちから注目を浴びたのが当時、珍しかったフランス語で歌うカヒミ・カリィだった。今回、取り上げるのはそんなカヒミ・カリィのデビュー作である。
アルバム自体は6曲しかなく、ミニアルバムといったところだが、やっぱり印象に残るのはコーネリアスこと小田山圭吾が作曲している一曲目の『Elastic Girl』。この曲フレンチというよりは北欧のカーディガンズのようなアコースティックなファンキーサウンドに何言ってるのか分からないウィスパーボイス。全体的に小難しいコード進行とか使わず、シンプルにスリーコードで全般的に構成されている。ハーモニカのソロとスライドギターのメロディは小田山圭吾のセンスが光るところ、さらに後半のベースのひきまくりのフレーズは素晴らしく、後のLOVE PSYCHEDELICOに続くような楽曲といった印象。
続いて同じく小田山圭吾作曲の『Zoom Up』はピチカートファイブにボサノバっぽくしたような楽曲。サビの部分の「Zoom Up」と歌うところのカヒミ・カリィの声の多重録音で厚みを作るところがただのボサノバ風で終わるだけじゃない小田山の曲作りの上手さが出ていて素晴らしい。
話は変わるが、よくカヒミ・カリィとコーネリアスの関係をセルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンに置き換えられるみたいだけど、今作ではあんな島耕作のようなねっとりとした官能性はなく全曲に至ってトリップポップ風からエレクトロ、ネオアコ風と楽曲のバラエティに飛んでいてすっきりと聞くことができる。もちろんガチなフレンチポップを期待すると肩を透かすことになるみたいだが、そんなやつは島耕作のようなねっとりとしたやつを聞いていれば良い。どんなにフレンチオシャレ厨がゲンズブールをオシャレ認定しようがあれはただのキチガイエロじじぃだよ。
総評としては「あれ?カヒミ・カリィってあんまりフレンチポップしてなくね?ただボサノバからエレクトロ風までバラエティに飛んでいて歌詞も何言ってるのかわからないので作業や読書に最適な作品」といったところ。
こんなことを言っているけど全曲捨て曲もなく、聞きやすいし収録時間も22分程度とちょうどいい時間なのでかなりおすすめ。