君はホセ・メンドーサより矢吹丈に憧れないか?

文:なかむら ひろし

 先日、国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った「出生動向基本調査」の結果を発表したわけだが、その中で18歳~34歳の未婚者で異性の交際相手がいない男性が69.8%、女性が59.1%と、いずれも過去最高だったそう。また、異性との交際を望まないという人の割合は3割ほどだとか。

 メディアはこういうデータを否定的に捉えることが多い。それは「国家として少子化は困るんや!」って話で理解できる。だけど、気になるのが「いい年こいて恋愛しないなんておかしいんじゃねぇの?」っていう意見なんだよね。非常に個人的な意見を申し上げると、「恋愛よりも打ち込めるものがあるなら、それでいいじゃないか」に尽きる。別に恋愛自体を否定するつもりなど毛頭ないし、私だって良い相手がいれば、恋愛することだってあるかもしれない。しかし、恋愛を優先順位の一番上に持ってくることなんてできない。大体、恋愛っていうのは相手がある話で、恋愛に発展するまでの過程で年齢・職業・年収・容姿など、求められる条件が多すぎて面倒。しかも、どんな非モテであろうが、もっと条件の良い相手がいれば、そっちに乗り換える。そんな綱渡りみたいなことに全力を注げるかって言われたら、迷わず答えは「ノー」だ。そんなものは負け犬の遠吠えだと言いたければ言えばいい。俺は矢吹丈になりたいんや!

 矢吹丈とは、皆さんもご存知の漫画『あしたのジョー』の主人公である。あまりにも有名作品なので詳しい説明は避けるが、私はこの作品が漫画の中で五本の指に入るほど好きだ。中でも矢吹が最後に闘うことになるホセ・メンドーサとの対比が素晴らしい。世界チャンピオンであるホセには妻子がいて、経済的にも裕福な明るい家庭を築いている描写がある。それに対して矢吹は、紀子や葉子という美人な恋人候補はいたものの、それを振り切ってボクシングに打ち込む。経済的にも裕福ではないし、身体的にもボロボロだ。ホセは矢吹が持っていないものをすべて持っている。しかも、矢吹のアイデンティティであるボクシングでさえも上をいっている。そんなホセにすべてを捨てて挑む矢吹に憧れた心はどこにいった?お前は格下相手に恐怖し反則を犯すホセに憧れるのか?俺は矢吹丈になりたいんや!

 そもそも、恋愛し、結婚して子供を持つことばかりが国家のためではない。未婚で子供もいない偉人だってたくさんいる。いや、国家のためとかどうでもいい。個人の思うままに生きればいいんや!結婚もせず、子供を持たないヤツは非国民だというのなら国家によって「強制お見合い結婚」でもさせればいいんか!いいわけないやろ!それぞれが個人の幸せを追求するのが一番。マンモス西が一番の勝ち組だと思うなら、ボクシングは辞めて紀子と結婚すればいい。だからこそ、こうやって価値観がぶつかり合うわけだが。これが自由主義の弊害ってやつだ。それでも最後にもう一度言おう、俺は矢吹丈になりたいんや!

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